秋田県横手市を拠点に、お客様のさまざまなお困りごと解決を行う「便利屋」として活動する「ハートライン株式会社」は、この度バトンズを通じて「ビジネス旅館ますだ」を譲り受けされました。
地域密着型で事業展開を行いながらも、サービス提供エリアは日本全国。年間1,000件以上の対応実績をもつハートラインは、「依頼を断らない」ことをモットーに24時間・365日さまざまなご依頼に対応しています。そんなお客様ファーストで事業を行っている代表の加藤 智久様は、どのような経緯で同企業を立ち上げ、今回のM&Aに取り組まれたのか。今後の事業ビジョンと併せて詳しくお伺いしました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | ビジネス旅館ますだ |
業種 | 旅行業・宿泊施設 |
拠点 | 秋田県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | ハートライン株式会社 |
業種 | サービス業 |
拠点 | 秋田県 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
度重なる転職経験を経て、経営者としての挑戦をスタート
現在は多くのお客様が利用するサービスの経営者である加藤様ですが、社会に出た当初は上司や先輩との意見の食い違いなどが度々あり、何度も転職を繰り返すというバックグラウンドがありました。そのような経験から、自分でルールを決められる経営者の道を目指し始めたといいます。
「最初は普通に就職したのですが、上司や先輩と意見が衝突して辞めたり、なかなか1つの会社で続けられずに転々としていました。日本だと、いわゆる社会不適合者って言われる部類ですよね。
ただ、このまま年をとっていったらダメだなと思ったんです。それなら、自分で起業して自分で生計を立てられたらいいんじゃないか。そう思って事業を立ち上げたんですが、初めは月の売上が6〜7万くらいにしかならず、非常に苦労しました。」
脱サラしてからは、農家で作業をする近隣の方のお手伝いや、食材のネット通販などに取り組まれた加藤様でしたが、なかなか収益が出せずに試行錯誤していたとのこと。他にもさまざまな事業に手を出してみても鳴かず飛ばずといった状況で、気がつけば起業してから1年半が経過していたそうです。
そんな折、結婚してお子様が生まれた加藤様は、そのことを契機にこれまで断っていた依頼や遠方からの依頼も受けるようになりました。他ジャンルの案件依頼を受けるようになった中で、これまでの度重なる転職で積み上げてきた多業種・多岐にわたる知見が活きていることに気づいたといいます。
「これまで、なかなかひとつの企業で勤め上げることができなかったのですが、その中で浅くても広い知識が身についていたんです。依頼を受ける中で『あれ、これ知ってるぞ』とか『これやったことあるぞ』と感じることが多々あって、さまざまな依頼に対応できるようになっていました。」
受諾業務は引越しや除雪、農作物の配送から配管作業まで、まさに「便利屋」の名にふさわしい多様性をもって事業を発展・拡大してきたハートライン。月数万円の利益だったところから事業成長させてきた加藤様は、経営者として拘っていたポイントを以下のように話しています。
「便利屋という名前を掲げている以上、便利でなければならないと思っています。そのため、利益が出ないようなことは別として、24時間365日・年中無休の体制で、お客様に迷惑がかかるようなこと以外は基本的には断らない、というスタンスでやってきました。そこから、リピートしてもらったり信頼してもらって、徐々に仕事が増えていきました。」
事業シナジーを見込んで参入した旅館業は、同地域のビジネス旅館
写真:譲り受けた「ビジネス旅館ますだ」
徐々に利用顧客を増やしていった加藤様が次の成長戦略として選んだのは「M&A」による事業拡大。また、税金対策としてもM&Aはひとつの手段になり得るという判断もありました。
「事業が軌道に乗ってからはずっと黒字でやってきたのですが、そうなると税金対策は意識するようになります。もちろん、そのために新しい法人を興すという方法もありますが、私は小さくて伸び代のある会社を買って、業績拡大に力を注いだほうが効率が良いのではないかと考えました。
どんな事業をやるのかというのは特段こだわりはなかったのですが、今後の事業成長を考えると、今やっている事業とシナジーが見込める事業がいいと考えていました。」
検討初期段階では、業種・業界・地域等にこだわりはなかったという加藤様が選んだのは、同じ秋田県横手市にあるビジネス旅館ますだでした。新規参入となる旅館業を選んだ背景について、加藤様は以下のように話しています。
「既にリフォームや買い取りサービスを展開しているので、定期的な修繕や消耗品の多い旅館業は、既存事業とのシナジーを生み出せるだろうと考えました。また、オーナーである鈴木さんから『広告費は月間5,000円程度しか投下していない』と伺い、まだまだ集客の余地があるだろうとも思いました。加えて、従業員を一定数配置しておけば、それなりに自走できる事業内容であったという点も魅力的でした。」
初のM&Aで感じた不安。M&Aは面白いと感じる反面、一定のリスクも
鈴木オーナーと初回面談を実施した際、早期に事業譲渡をしたい旨を全面に感じ、少し疑念を感じたという加藤様でしたが、やり取りをしていく中で、実は体調面で不安を抱えていらっしゃるということを知り、腑に落ちたと話しています。
また、譲渡実行後に保健所や消防へ届出をする際や、営業先へご挨拶に伺う際など、全て鈴木オーナーに同行してもらい、とても綺麗に引き継いでくださったことに感謝していますともおっしゃっておられました。
こうして、異業種である「旅館業」へとドメインを広げ、経営の多角化に向けて一歩を踏み出された加藤様ですが、初めてとなるM&Aは不安も大きかったといいます。
「M&A自体が初めての経験だったので、何も分からない中で交渉を進めるのは非常に怖かったです。売り手との信頼関係は徐々に積み上がっていくものだと思うので。例えば、自分が相手にお金を振り込み、相手が譲渡実行を済ませるというプロセスを踏むのも、初期の段階では非常に不安でした。
また、今回M&Aを経験してみて、無知な人がM&Aをやるとトラブルになるケースもあるだろうと感じました。例えば私の場合、交渉の際に口頭で伺っていた土地建物の価値と、登記後に判定してもらった価値に乖離がありました。
旅館を運営して収益を上げていけばよいと考えていたので、そこは大きな問題にはしませんでしたが、人によってはクレームを入れたり売買の破棄を要求したりすることもあるんじゃないでしょうか。M&Aは面白いと感じる反面、トラブルを引き起こす可能性も随所にあると感じたので、しっかりと調査した上で行うことが重要だと思いました。」
「今後もM&Aに取り組んでいきたい」便利屋は地域の社会インフラになりうる
今回のM&A経験を通じて、M&Aのメリットやリスクを体感された加藤様。今後も売り手側・買い手側双方の立場で積極的に検討されていくとのことで、最後に今後の事業展望について伺いました。
「目指しているのは、便利屋という仕事を世の中のインフラにすることです。例えば、現在従業員に対して住居、車、水道光熱費、ジム会員費などを提供しているのですが、これらをまとめてサブスクにして事業化できないかと考えています。
私の算段ですと、30名くらいの会員がいれば自走できるビジネスになるはずで、他の既存サービスとのシナジーを生み出すことも可能です。そんな形で生活の中に溶け込んでいって、便利屋になんでも相談すれば対応してもらえるという世界観を作りたいと思っているんです。
誰もが大谷翔平やイチローのようなプロ野球選手にはなれないと思うのですが、誰でも頑張って経験を積んでいけば、プロ経営者にはなれるんじゃないかと考えています。私も、M&Aを経験してコツを掴みながらハートラインを大きくしていき、プロ経営者になりたいと考えています。」
全国全地域に根付く社会インフラとして便利屋業を見据えている加藤様。今後、M&Aでどのような事業展開を行っていくのか、今後の方向性に目が離せません。
ハートライン株式会社と加藤様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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