「楽しく踊って『なりたい自分』になる 大人初心者のためのアットホームなダンススクール」というコンセプトを掲げ、東京を中心に約1500名のダンス初心者の挑戦を後押ししてきた、大人初心者のためのアットホームなダンススクールを運営する「株式会社カーネリアン」は、バトンズを通じて新たな経営者へ会社譲渡を実現されました。
カーネリアンの創業者である齊藤あや香様は、事業のスタートから10年近くが経ち、自分自身のやりたいことやカーネリアンの未来を考える中で、同じ想いを持った人に事業を譲ろうと決意したといいます。齊藤様がカーネリアンを創業された経緯から、事業を成長させてきた過程、そしてM&Aを選択するまでの道のりについて、お話を伺いました。
譲渡側 | |
---|---|
社名 | 株式会社カーネリアン |
業種 | ダンススクール |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 事業スケールのため |
譲受側 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | 経営コンサルティングなど |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 起業 |
一度は離れたダンスの世界。子育て中のリフレッシュが起業のきっかけに
高校生からダンスを始めた齊藤様は、高校生時代にはすでにプロのバックダンサーを務め、テレビ等のメディア出演をするなど、プロダンサーとしての道を歩んでこられました。
しかし、「うまく踊る」ことが絶対正義とされるダンス業界の風潮に疑問をもった齊藤様は、大学進学から徐々にダンスから離れていき、就職を機に完全にダンスから退きます。
「ダンスが好きではない、辛いと自覚しはじめてからは、特に何かに打ち込むこともなく大学生活を過ごし、普通に会社員として就職しました。働くことはとても楽しかったのですが、入社1年目で妊娠をし、産休に入ったまま会社からフェードアウトすることになったんです。」
出産後、体調が優れずに外へも出られない日々が続くようになったという齊藤様。そんな中で、たまたま参加したのが初心者ママさん向けのダンスワークショップでした。
「プロとしてダンスを経験していたので、正直なところ最初は『初心者向けレッスンなんて』という気持ちがあったと思います。でもいざ参加してみたら、ダンスの概念が覆るくらい、目から鱗のいろんな発見がありました。」
10代の頃からプロの世界で活動していた齊藤様の中には、「ダンスレッスン=うまくなるための修行」というようなイメージが根強くありました。しかし、初心者向けのワークショップを通じて感じたのは、ダンスが友達を作るためのツールになることや、自分がリフレッシュできる手段になるということでした。
「出産後、ずっと具合が悪くてママ友が全然できなくて、話し相手が息子しかいないような生活が2年ほど続いていたんです。ダンスワークショップに参加することで新しい出会いが生まれましたし、何より楽しく踊ることで自分自身のリフレッシュになりました。」
ダンスに対する新たな価値に気付いた齊藤様。当時感じていたダンス業界に対する違和感を、自分がダンスに関わることで変えていけるのではないかと感じ、ダンス初心者が楽しく踊れるスクールづくりへの挑戦を決心します。
現役時代に抱いたダンス業界の違和感。その反骨心から、ダンススクールをスタート
まずは、都内のさまざまなダンススクールの体験レッスンに参加。初心者の参加者に「どうしてダンスを始めたいんですか?」「今日のレッスンはどうでしたか?」と現場のヒアリングを重ね、ダンス初心者の声や希望を集めていきました。
約半年間に渡るヒアリングにより、「初心者向けのダンススクールは需要がある」と確信した齊藤様は起業へと踏み切り、カーネリアンを設立します。齊藤様は当時25歳。資本金50万円からのスタートでした。齊藤様は、「今思えば、若くて何も知らなかったからこそ、勇気一つで出来た部分がたくさんありました。」と当時を振り返ります。
カーネリアン創設当時から齊藤様が徹底していたのが、『大人初心者のためのアットホームなダンススクール』であること。入会の窓口となるホームページは、初心者の方に寄り添うように、講師のプロフィールは親しみやすい爽やかなものを、レッスンの様子は笑顔の写真を使うなど、スクールのアットホーム感を視覚的にアプローチしていきました。また、ダンスのクラス分けについても、独自の工夫があると言います。
「ダンスの種目別にレッスンを提供することが主流な中、カーネリアンでは、ミュージカルクラス、アニソンクラス、クラブデビュークラス、K−POPクラスなど『なりたいイメージ』別にクラスを設定しました。ダンスの知識がない初心者の方が、レッスン内容とミスマッチが起きないよう工夫をしています。」
さらに、齊藤様が事業を成長させていく上でとくに重要視していたのは、講師の採用。「ダンス」と一口に言っても、バレエやジャズ、HIPHOPなどジャンルは多岐に渡り、それぞれの考え方や世界観があります。講師のオリジナリティや個性を活かしつつ、スクールの方針とすり合わせていく方法を模索し続けました。
「まったくの初心者でも、最初からコツを掴んで見よう見まねで踊れる器用な人もいれば、ダンスを始めて3年以上経ってもまだ踊ることが苦手という人もいます。ダンスの何に楽しさを見出すかは人それぞれ。例えば音楽を聞くだけ楽しいとか、レッスンに来て友達と喋る時間が楽しいとか。そういった1人1人の楽しさのポイントを見つけられる洞察力があり、楽しい気持ちに共感できる講師の方を採用することを大切にしてきました。」
初めて「死」を意識したことで、会社の未来を考えM&Aを決意
これまでにないコンセプトと、齊藤様の初心者に寄り添う徹底した姿勢により、カーネリアンは着実に生徒数を増やし、大きく成長してきました。そんな中、なぜ齊藤様はM&Aを決意されたのはなぜでしょうか。
「一番最初に譲渡を考え始めたのは、2020年ごろです。がん検診を受けた際に、高度異形成というがんの一歩手前の結果が出たんです。これまでずっと元気にやってきましたが、自分の死に対して初めて意識したんですね。自分の事業に愛着があったからこそ、『今のままでは、自分がいなくなったらカーネリアンはなくなってしまう』と感じて。」
齊藤様は、そこから「生きること、死ぬこと」に興味を持つようになり、東京大学の死生学研究室に入学。学びを深めるうちに、もっと研究に取り組みたいという意欲が高まり、本格的に学ぶ時間を確保するためにカーネリアンを人に託すことを考え始めます。
「これまで私はカーネリアンの土台を築いてきました。ですが、この先さらにスクールを成長させ、長く続けていくには、もっとビジネスの知識や経験がある方に託した方が、今後のカーネリアンのためになるんじゃないかなと。」
初めは人伝てに譲渡先を検討していた齊藤様でしたが、なかなか理想の相手が現れず、M&A仲介を通じて会社を引き継いでくれる人を探そうと行動し始めました。M&A仲介業者を探す中で出会ったのが、株式会社ファルコン・キャピタルの立野様。M&A初心者の齊藤様に合わせた言葉を使い、丁寧に説明する立野様の姿勢に「この人なら信頼できる」と感じ、M&Aに向けて動き出します。
ビジョンとコンセプトに共感する人を探し、「この人なら」と感じられる人と出会う
「譲渡先に求める一番の条件は、生徒やスタッフの人たちにとってより良いサービスを提供できる人であることでした。法人個人のこだわりは特に無く、とにかくカーネリアンのビジョンに共感してくれる方を探しました。」
最初に譲渡を検討してから約数十人の候補者と交渉を行ってきたという齊藤様。譲渡を決めた古川様とは、最初に会った時点で「この人だ」と直感的に感じたといいます。古川様は、ダンススクールの経営は未経験なれど、ご自身がダンスを好きなことから、しっかり気持ちの乗った姿勢でM&Aに取り組もうとしていたことが決め手となりました。
写真)左:古川様、右:齊藤様
「それまで数十人の方とお話させていただいた中には、『経営やダンスは未経験ですが勉強させてほしいです』という方や、『自分が利益を得られれば、それでいい』というような雰囲気の方もいらっしゃって。その点古川さんは、ご自身の経営のことも、スクールの今後のことも真剣に考えていらっしゃるのが伝わってきました。この方におまかせすれば、私も自分の人生に向き合うことが出来て、三方よしだなと。」
M&Aは、育てた娘を送り出すような気持ち。これからは新たな道に挑戦
M&Aアドバイザーである立野様のサポートもあり、その後の交渉や手続きはスムーズだったと振り返る齊藤様。一方で、自分の気持ちに整理をつけることは大変だったと振り返ります。
「カーネリアンは、自分が育てた娘みたいな感覚で、講師の方々や生徒さん、関わっている人たちも全員自分の子供みたいに感じているんです。ですから、そんな思い入れのある会社を人に渡すことを、どうやって決意したらいいんだろうと半年間はずっと悩んでいました。頭ではわかっていても、気持ちを着地させるのは大変でしたね。」
立野様のサポートと、交渉中にスクールの交流会に通うなどして信頼関係を築いてきた古川様との話し合いもあり、無事譲渡が成立。現在は、古川様へ徐々に経営を譲り、システムのDX化の促進や、新規の生徒募集に向けた戦略を進めています。
齊藤様ご自身は、アカデミックな分野で活躍できる人材になるために、次のステップへと進もうとしています。そんな齊藤様に、最後に事業譲渡を検討している方に向けて応援のメッセージをいただきました。
「今回M&Aをして感じたのは、自分1人で困っているよりも、いろんな人に助けてもらったほうが、できることの可能性が広がるということです。自分の事業について困っていることがあったら、M&Aを通じて、手助けしてくれる人を増やすというのはすごくいい手段なんじゃないかなと思います。これからカーネリアンがどうなっていくのか、私自身とてもわくわくしています!」
齊藤様と株式会社カーネリアンの今後の成長を、バトンズ一同心より応援しています!
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