神奈川県茅ヶ崎市で豆腐の製造・販売を営む「有限会社大豆屋」はこの度、ペット事業や飲食事業を中心に事業再生、事業継承サポートを手掛ける「株式会社テイクオーバー」に株式譲渡を実現されました。
1986年の創業以来、湘南エリアを中心に約40年に渡り愛され続けてきた大豆屋の味。国産大豆100%にこだわり、安心・安全かつ美味しい豆腐を提供してきた大豆屋は、M&Aによって次世代へと受け継がれました。今回、創業社長として大豆屋を一代で育てた蓮見哲夫様に、大豆屋の特徴、M&Aを考え始めた理由、成約に至るまでの経緯などについて伺いました。
譲渡企業 | |
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社名 | 有限会社大豆屋 |
業種 | 飲食・食品 (豆腐の製造・販売) |
拠点 | 神奈川県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
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社名 | 株式会社テイクオーバー |
業種 | 法人向けサービス (事業継承サポート事業)など |
拠点 | 静岡県 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
原材料と製造過程の両面から、「安心美味」を追求し続ける
もともと会社勤めをしていた蓮見様は、脱サラ後に豆腐屋で約3年間の経験を積み、独立開業。「衰退している伝統的な産業を盛り上げたい」という気持ちから、豆腐屋に興味を持たれたと言います。
「創業当初は、茅ヶ崎市内の別の地で店舗を借りて豆腐屋を営んでいました。しかし、創業から2年くらいが経った頃、金融機関が足繁く訪問するようになって『店舗用地を紹介するので、融資を受けてください』と言われまして。根負けして購入した土地が、現在店舗と製造所がある茅ヶ崎市出口町です。」
大豆屋の店舗入口に掲げられた看板には、「安心美味豆腐 大豆屋」とあり、その看板に偽りのない、国産大豆100%にこだわった美味しく安心・安全な豆腐作りを続けてこられました。
使用する大豆は、国産大豆の中でも「除草剤末使用」「有機JAS認定」「農薬化学肥料不使用」などの素材を厳選。それ以外の原材料も、がんもどきに使用する野菜には生産履歴の分かる国産野菜を使ったり、揚げ物に用いる油には国産の菜種油のみを使用したりと、素材にこだわり抜いた徹底ぶり。
「大豆屋では、自社店舗での対面販売に加えて、他の企業や店舗への卸しも行っています。ただ、卸し先はスーパーや百貨店といった一般的な流通ではなく、無添加の食品や有機農法などの農産物を扱っている生協、問屋、自然食料品店などになります。
こういった食品や農産物を扱う卸し会社や店舗から、今度は我々が仕入れをしたり、彼らと情報交換をするなどして、持ちつ持たれつの関係で今まで歩んできました。」
製造過程では、一般的な豆腐で使われている石油由来の消泡剤や、化学的に合成された凝固剤などは無使用。消泡剤を使わないことで、職人の手で泡を丁寧に取り除いたり、伊豆大島の希少な「海精にがり」を用いるなどの企業努力が必要になりますが、大豆屋では創業以来、お客様の安心にこだわった豆腐作りを続けています。
適任の後継者が見つからず、廃業も視野に入れ事業承継を検討
安心して食せる豆腐を、個人商店でなく一定の従業員を抱えた企業として長年続けてきたことも、大豆屋について特筆すべきことでしょう。そんな大豆屋の事業承継を考え始めるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
「私には一男三女の子どもがいますが、誰も大豆屋を継がないとのことでした。となると、次に事業承継の候補者になるのは社員ですが、『この人は適任だな』と感じるような優秀な人材に限って独立志向が強いんですね。なかなか後継者を見つけることができず、本当に困ったな…と感じ出したのが約10年前です。
そんな中、店舗用地を購入するために組んだローンの返済の目処がつき、約3年前に完済しました。これをきっかけに、豆腐屋という商売を畳むことも考えるようになりました。ちょうどその頃、世の中で中小企業のM&Aが注目され始めたんですね。」
蓮見様のもとにM&A仲介会社からDM等でメッセージが届くようになり、興味を持った蓮見様はそのうちの数社と面談。さらにそのうち1社とは、M&Aアドバイザリー契約を締結する前段階まで進んだと言います。それでも、蓮見様にはどうしても契約に踏み切れない懸念点がありました。
「そのM&A仲介業者に支払う手数料が、二千万円という設定だったんですね。私たちの事業規模に対する手数料としては高額過ぎると感じました。また、その会社の評価によると、個人所有の不動産と会社譲渡、そして手数料支払い含めるとほぼゼロになると言うんですね。これにも納得できませんでした。
そこから、セカンドオピニオンとして他のM&A仲介会社をネットで探してみてたどり着いたのが、事業承継通信社さんの公式サイトでした。内容を見て誠実さを感じたので、同社に連絡して代表取締役の若村様と面談することになりました。」
信頼できそうな仲介会社に変更。バトンズも連携
蓮見様は、面談を通して若村様への信頼感を持たれたとのこと。同時期に、神奈川県事業承継・引継ぎ支援センターの担当者と話す機会があり、その際に事業承継通信社の若村様と面談したことを話すと、支援センターの担当者も同企業のことをご存じとのことでした。
そして、支援センターからM&Aプラットフォームとしてバトンズを紹介され、神奈川事業承継・引継ぎ支援センター、事業承継通信社、バトンズの3者が連携してサポートする体制が構築されました。その時のことについて、蓮見様は以下のように振り返ります。
「最初に話を進めていたM&A仲介会社と、若村様から共有いただいた最終的な手残り額の算定にかなりの差があることに驚きました。不動産売却のポータルサイトなどでは、基本情報を登録すると複数の業者から査定が届きますよね。そしてこの査定額を見比べることで、保有する不動産の客観的な価値を把握しやすくなります。
イメージ的には、これに近い仕組みがM&Aにもあるといいですが、事業承継はセンシティブな内容を含みますので不動産のように分かりやすく数値化が難しいものかもしれません。私はたまたま若村さんと出会い素晴らしいご縁に恵まれることができたので、今の相談相手に疑念がある方は別の会社にも掛け合ってみる、というのも良いと思います。」
M&Aアドバイザーが変わると、進捗状況も変わる
なかなか進捗がなかった事業承継も、若村様がM&Aアドバイザーとしてサポートしたことで、一気に実現化に向けて進み始めました。
「若村さんが担当者になってからは、M&A関連のストレスを感じることがなくなりましたね。最終的な手残り額の算定では、私が当初考えていたものに近い金額を提示していただきました。また、素晴らしい買い手様との調整も上手くまとめていただき、報告もこまめにしていただけたのでとにかく安心でした。
若村さんと私がM&Aアドバイザリー契約を締結したのは、2023年の7月半ばです。そして、数カ月後には買い手様との譲渡契約を締結していました。あまりにもスムーズに決まったため、良い意味で事業を譲った実感が湧きませんよ。」
担当するM&Aアドバイザーが変わると、事業承継の進捗状況が大きく変わってくる。このことを経験された蓮見様は今、以下のような感慨を抱かれているそうです。
「私は、たまたま若村さんのような優秀なM&Aアドバイザーと出会えたので、最終的に素晴らしいお相手との成約に辿り着くことができました。しかし、中小企業の中には、M&A仲介会社に依頼をしたことで、頓挫したり不利益をこうむったりしているケースもあると思います。
こういった状況を変えるには、自治体による啓蒙やサポートが不可欠だと思いますし、またバトンズのようなM&Aプラットフォームが、後世に残すべき事業を掘り起こしてM&Aに結びつけていくことも重要ではないでしょうか。」
優秀な若い世代に大豆屋を引き継げたことに、大きな期待感と喜び
大豆屋を譲り受けた株式会社テイクオーバーは、ペット事業・飲食事業を中心に、M&Aの知見を活かした事業再生・事業継承サポートを行っている会社です。
代表取締役を務める山崎様は、これまで複数のM&Aを手掛けている若手経営者であり、蓮見様は若い世代に大豆屋を譲渡できたことに大きな期待感を持たれています。
「代表取締役の山崎様は、世代が30代前半と伺いました。このような若い方々が豆腐屋のような斜陽産業といわれる業界に参入してきて、常識を打ち破っていくことは非常にいいことだと思います。
全国の豆腐屋は年々数が減り続け、衰退の一途をたどっています。しかし、新しい発想で時代に合った商品を作っていただければ、まだまだ可能性はあるはずです。今回のM&A成約において、若くて優秀な会社に引き継げたということは本当に嬉しいですね。」
蓮見様は、M&Aのご成約から1年間は引継ぎ期間として業務をサポートされるとのこと。新体制で一緒に経営改善に取り組みながら、今後採用されるであろう現場責任者候補の方にこれまで培った豆腐づくりのノウハウを十分な期間をかけて、しっかり伝えていきたいと話します。
大豆屋は、Googleマップの口コミ評価で最高得点の5または4が大半を占め、「豆の味と香りが濃厚」「美味しいのでいつも買いすぎてしまう」などのコメントが並びます。湘南の財産ともいえる大豆屋の味がM&Aによって受け継がれ、今後の更なる発展に期待が膨らみます。
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