神奈川県で「フィットネス関連商品の企画・販売」「パーソナルジムの運営」を主軸に事業を展開する株式会社108&Co. はこの度、エネルギー事業など複数の事業を多角的に展開する株式会社ヤマウチにフィットネス関連商品のEC事業を譲渡されました。
立ち上げから約5年で売上とファンを順調に増やしてきた同事業。「さらなる成長のために他企業に託したい」との想いからM&Aの成約に至りました。ビジネスパートナーと共に同事業を育てられ、 M&Aに取り組まれてきた代表取締役の山田明日香様に、事業の立ち上げや成長の背景、M&Aの舞台裏などについてのお話を伺いました。
譲渡企業 | |
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社名 | 株式会社108&Co. |
業種 | EC事業(フィットネス関連商品)・ジム運営 |
拠点 | 神奈川県 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
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社名 | 株式会社ヤマウチ |
業種 | エネルギー事業など |
拠点 | 香川県 |
譲受理由 | 既存商品・サービスの強化 |
インストラクターの実体験からヨガブランド108.Tokyoを設立
108&Co.が創業されたのは2019年。もともとヨガやピラティスのインストラクターをされていた山田様は、今回譲渡されたフィットネス関連商品のブランドである「108.Tokyo」とパーソナルジムを同時期に立ち上げられました。
会社を立ち上げる際、20代の若さで親友と二人で行うことに周囲からの反対があったものの、ブランドの可能性を信じて独立された山田様。108.Tokyo が生まれた背景には、山田様ご自身のインストラクターとしての実体験がありました。
「私は体を動かすことが好きだったので、起業前にヨガやピラティスのインストラクターを育成する学校で、主宰者のアシスタントをしていました。ただ、その後のキャリアを考えると、この業界でインストラクターを目指す人は多いのですが、その後の働き口は少なく、若手で実績も少ない人がお金を稼げるようになるのはかなり難しいのが現状でした。
また、私自身色んなことに興味を持つ性格で、ヨガやピラティスの世界は修行のような側面があるので、どこかで飽きがきてしまいそうと感じるようになりました。そして、『そう考えるのは自分だけではないはず』と思ったのが、事業を立ち上げたきっかけです。」
視点を変えると、ヨガやピラティスが長続きしにくいというのは山田様ご自身だけでなく、大勢の人が抱える共通課題だということに気付き、この課題を解決する具体策として108.Tokyoというブランドが誕生しました。
「自分の感性に合うヨガウェアやヨガマットがあれば続けやすいのでは?と考えました。例えば、ゴルフで考えても新しいクラブやウェアを買うといつもよりも頑張れたりしますよね。それと同じで、大好きなアイテムに囲まれていればヨガへのモチベーションが上がりると思い、事業を立ち上げました。」
画期的なコンセプトで後発ブランドでも急成長を実現
とはいえ、山田様がブランドを立ち上げた2019年時点で、ヨガやピラティスをする人向けの海外ブランドやECサイトは多数ありました。108.Tokyoが後発ブランドでもファンを開拓できた理由には、デザイン性の追求にあると山田様は話します。
108.Tokyoが登場する以前、ヨガやピラティスのときに使うウェアやマットなどはシンプルなデザインが主流でした。これに対して、108.Tokyoではアート性やインテリア性、かわいいデザインなどを追求しているのが特徴的です。
この108.Tokyoのブランド・アイデンティティは、山田様ご自身が「自分が本当に欲しいか、心からワクワクするか」を追求したことで生まれました。その際、大衆向けかどうかという点はあまり気にしなかったとのこと。
108.Tokyoのデザインへのこだわりを象徴するのが、自社開発のオリジナルマット。インテリア性の高い図柄を取り入れたり、アーティストとコラボレーションしたりするなど、業界で画期的なコンセプトを打ち出しました。これにより、ヨガマットをトレーニングが終わったら「収納」するものから「部屋に飾る」ものへと消費者の意識を変えていきました。
ヨガマットが飾られていると、ヨガやピラティスをする機会が自然に増えやすいというメリットもあり、その結果「私のような飽き性タイプの人でもヨガやピラティスを続けやすくなる」と山田様は言います。
ブランド支持者の口コミにより、商品価値を感じるファンが徐々に増加
108.Tokyo は、ヨガブランドとしてわずか5年で一定のファン層を獲得しました。この結果だけを見ると、大きな問題もなくビジネスを成功させた事例に感じられますが、山田様は創業当初、事業運営の難しさを感じていました。
「私は美容師の学校を卒業後、ブライダルのヘアメイクのお仕事をしていました。その後、ヨガの学校のアシスタントをしていたので、経営どころかビジネスの常識さえあまり知らなかったんですね。ビジネスメールの形式やパソコンの基本操作さえ分からない状態でした。」
ビジネスのイロハを一から学ばれた山田様は、商品開発や販売、ECサイト運営などのノウハウも、ビジネスパートナーと共に独学で身に付けたそうです。その分野に詳しい先輩にレクチャーしてもらったり、ネットで情報収集をしたりして学びながら、108.Tokyo を育てていきました。
手探りの状態でビジネスを展開したため、創業1年目は失敗もあったとのこと。
「私もビジネスパートナーの親友もポジティブな性格ですので、仕入れたり作ったりしたアイテムが沢山売れるだろうというイメージを描いていました。実際には反響はそれほどではなく、販売数をはるかに上回る数のヨガマットを発注してしまった、というような失敗もありました。そんなとき、勢いだけでは難しい世界に来たんだなと感じましたね。」
最初はビジネスの壁に立ち塞がれた山田様でしたが、そういった数々の問題も親友と仕事ができる楽しさがあったからこそ乗り越えられたのだと話します。その後、徐々にコアなファン層を獲得していった108.Tokyoは、口コミやインスタグラムのシェアなどを通して、ヨガやピラティス好きな人同士で噂が広がり、デザイン性の高いヨガブランドとして支持を集めていきました。
事業の更なる飛躍を目指し、他企業への事業譲渡を決断
創業当初に壁はあったものの、108.Tokyoを育ててきた日々は本当に楽しかったと5年間を振り替える山田様。M&Aを考え始めたきっかけは、ブランドを共に育ててきたビジネスパートナーであるご友人が事業から離れることでした。
「108.Tokyo は、親友である彼女とまさに二人三脚で育ててきたブランドです。その親友が家族の介護をすることになり、事業から抜けることになりました。この時点でブランドの売上は過去最高で、娘のように大事にしてきたブランドでしたが、手元に置いておくより旅立たせて飛躍させたいという気持ちになったんですね。」
ビジネスパートナーが事業を離れるタイミングで、過去最高の売上を達成していた事業を手放す決断をした山田様。複数のM&A プラットフォームに登録をし、15〜20社の候補企業と面談を行い、最終的にバトンズを介して株式会社ヤマウチへ譲渡されました。
ブランドに対して深い愛情を持つ山田様がM&Aでとくにこだわったのが、自分たちの想いを理解してくれる会社に引き継ぐということ。そして、買い手様選びで基準にしていたのは「打ち合わせが楽しみになる方」というものでした。
「ヤマウチ様は最初のZoomミーティングのとき、 M&A ご担当の金子様をはじめ、ECご担当者様や社長様など、計5名で参加してくださいました。多くの場合、最初の面談では売上など数字の話が中心になりやすいのですが、ヤマウチ様とは私たちのブランドへの想いやブランドの未来についてのお話ができました。ご質問も事業のあら探しではなく、前向きな内容だったのが印象的です。本当に素敵な会社だなと感じました。」
今回の体験をもとに、M&Aに興味のある女性をサポートしていきたい
安心できる譲受企業に108.Tokyoを引き継ぎ、今回の譲渡に満足されていると話す山田様。一方で、プラットフォームの登録からM&Aが成約するまでの約8カ月、待ち続ける辛さもあったと言います。とくに、事業譲渡を検討している期間に入る新たなイベントや取引など、108.Tokyo の営業面のスケジュールを立てづらいというのは大きな悩みでした。
「例えば、半年後に開催されるイベントに参加したくても、もし開催前にM&Aが成約したらどうしようと考えてしまうわけです。だからといって、ブランドの活動をしなければ直近の売上が落ちてしまいます。スケジュールが立てづらい中、8カ月待ち続けるのはしんどかったですね。」
そんな状況下で、無事成約まで進んだ本案件。バトンズでM&Aを進めるにあたり、バトンズの成約サポーターである坂本がサポートに入りました。担当が同世代の女性であったことは、初歩的なことでも相談しやすく助かったと話す山田様ですが、一方で初めてのM&Aで戸惑った面もあったと言います。
「バトンズさんが、裁判でいうところの弁護士のような立ち位置だと勘違いしていました。つまり、完全に売り手側について調整してくれる人だと思っていた。でも、途中から成約サポーターは売り手と買い手の間で中立的な存在だと気づきました。そのため、具体的な価格調整などの部分については、自分たちで行う必要があるということは理解しておくとよいかと思います。」
今回初のM&Aを経験した山田様は、パーソナルジムの運営と共に、これから「事業を譲渡したい」と考える女性や若い世代などに対して、情報発信やサポートもしていきたいと話します。
「私は27歳で事業をスタートさせ、32歳で事業譲渡をしました。この世代の女性でM&Aを経験しているのはそう多くないと思います。若い世代のなかには、事業譲渡は難しそうとか、億円単位の事業でなければM&Aはできないと思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。事実、私でもM&Aをすることができたので、迷われている方は選択肢として検討してみることをお勧めします。」
今後も社員や外注スタッフと共にパーソナルジムの運営に携わっていく山田様。108.Tokyoをゼロから育てた実績、そしてM&Aの実体験をもとに若い女性に支持される新たなビジネスを展開されることでしょう。
株式会社108&Co.の今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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