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藁をも掴む思いで挑戦したM&A。大手企業と直取引を行う「無形資産」に価値を見出され、約一ヶ月のスピード成約を実現

2023年12月27日

埼玉県で金属加工業を営む石田インダストリ有限会社はこの度、東京都で超精密機械部品の開発、設計、製造を行うグリッターテクノ株式会社に会社譲渡されました。輸出業から始まり、特許商品の開発・販売、金属加工、タオルを中心とした生活用品の輸入など、メーカーでありながら商社的な立ち位置で事業を展開してきた石田インダストリ。家族経営で事業を支えてきましたが、時代の流れによって少しずつ経営が厳しくなる中で、商工会議所に相談を行い、M&Aのご成約に至りました。

今回、M&Aに取り組まれた石田様に、バトンズをご利用された経緯やM&A交渉時のお話について、詳しくお話を伺いました。


 

譲渡企業
社名 石田インダストリ有限会社
業種 製造業(金属・プラスチック)
拠点 埼玉県
譲渡理由 後継者不在

 

 

譲受企業
社名 グリッターテクノ株式会社
業種 製造業(機械・電機・電子部品)
拠点 東京都
譲受理由 取引先拡大、技術力・開発ノウハウの強化

 


創業から60年以上。特許製品の販売を軸に事業を推進

1957年創業の石田インダストリは、石田様のお爺様により創業されました。その後、お父様が2代目として会社を継ぎ、経営を助けるために石田様が専務として入られたのが、2022年のこと。

「創業時は、バーベキューコンロなどの金属製品の輸出産業で事業を興したと聞いています。しかし、輸出だけでは会社の経営が安定しなかったことから、国内に取引先を持つために営業活動を始めました。

うちの祖父は発明が好きな人でして、電動の胡椒挽きや歯磨き教育用の『リンリン歯ブラシ』など、アイディア商品を発明しては特許を取得していました。その中で生まれたのが、エスカレータの手すりを清掃するアタッチメント『ベルクロス』で、現在主力となっている商品です。」

特許製品である「ベルクロス」を大手百貨店や商業施設に販売するために、営業活動を始めた石田インダストリ。メーカーから承認を得るために、大手エスカレーターメーカーに通い詰め、次第にエスカレーターやエレベーターを設置する際に必要な工具や治具の製造を受け持つようになりました。

また、石田様のお父様は留学経験があり、英語が堪能だったことから、海外向けの輸入業にも挑戦。ベルギーのタオルメーカーの総代理店として、タオルを中心とした日用雑貨の輸入卸も行うようになりました。

一縷の望みをかけて、商工会議所に事業承継の相談

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「エスカレーターがどんどんリニューアルされるたびに、ベルクロスが設置しづらくなってしまい、少しずつ売上が落ちていきました。また、輸入業に関しても、タオルを供給してくれていたベルギーの会社が廃業してしまい、仕入れ自体ができなくなってしまったんです。

私は父を助けるために勤めていた会社を辞め、昨年から石田インダストリに入ったのですが、大手エレベーターメーカーの治具工具の製造販売と、ベルクロスの販売を細々とやっているような状態でした。」

会社に参画したものの、事業成長に欠かせない「ヒト・モノ・カネ」がどれも足りていないという現状に直面した石田様。中でも、1番のネックは『キャッシュ不足による事業存続の危機』でした。

事業を継続させるために、過去には土地や家屋を担保に入れて金融機関に借り入れを行なってきた石田インダストリ。ここ数年は、できる限り金融機関からお金を借りずに自己資本で賄ってきたとのこと。

しかし、コロナ禍で需要の落ち込みがあり、自己資本の投下にも限界を感じていました。廃業するにも一定の費用がかかる。そんな状況で、石田様が一縷の望みをかけたのがM&Aによる会社売却でした。

「5月の時点ですでにキャッシュが足りておらず、自己資本を投入してなんとか食いつないでいる状態でした。会社自体も債務超過となっており、会社を閉める方向で考えてはいたものの、既存のお客様には迷惑をかけたくなかった。どうしたものかと考える中で、『どこかにうちを買ってくれる会社さんはいないか』と思い至って、藁をも掴む思いで商工会議所に相談に行きました。

スピード重視でバトンズに登録。掲載翌日から問い合わせが

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会社の状況を踏まえて、石田様はとにかくスピード感を持って譲渡先を選定したいと考えていました。事業承継・引継ぎ支援センターで一度無料相談を行なったところ、「スピード重視であれば、提携先の民間企業であるバトンズを使ったらどうか」と紹介された石田様は、早速売り手としてバトンズにご登録。譲渡先を探し始めました。

「初回の時点でいろいろと細かくヒアリングをしていただいて、とてもわかりやすいノンネームシートを作成いただきました。スピード感を感じましたね。早速その月のうちにサイトに掲載したところ、翌日にはすぐに買い手希望の方から一件連絡がきたんです。

こんなにすぐ連絡がくるものかとびっくりしましたよ。その後も2〜3件ポンポンと連絡が来て、正直うちみたいな会社を買ってくれる人なんているのかと思っていたので、食いつきの良さを感じて驚きました。」

掲載後、真っ先に石田様に連絡されたのが、今回の譲渡先であるグリッターテクノの山下様でした。山下様は、産業機械の技術営業職として勤務後、バトンズを通じてグリッターテクノを買収。事業承継から約一年が経過し、事業拡大のために同業である金属加工メーカーを探していたのです。

「我々は、売り上げも落ちていましたし、経営のバランスシートはきれいなものではありませんが、一方で『無形資産』と言えるような価値を持っているという自負もありました。それは、大手企業さんと直接取引を行っていることです。

また、大手の百貨店との取引と信頼もあります。債務超過であるとはいえ、金融機関からの借り入れはほぼ100万円を切ってたので、そんなに大きい負担にはならないだろうなと感じていました。ですから、無形資産の価値を感じ、シナジーを見出してくれる企業は絶対いるだろうなと思っていました。

信頼できる買い手と出会い、M&A交渉はスムーズに進んでいった

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石田様が譲渡先に求めていたのが、スピード感のほかに、無形資産の価値を理解してくれること。また、既存の取引先をきちんと引き継ぎ、会社の哲学や想いまで引き継いでくれる人でした。

山下様の他にも、交渉まで進んだ買い手希望者はいましたが、法人ではなく個人であったことや、業種もアパレルと異業種であったことから、石田様は山下様との交渉に進んでいきます。

「山下様と最初に面談したときに『できる経営者』だという第一印象を持ちました。人当たりはソフトですが、眼差しが冷静で。数字も見れるし、頭の切れる人だなという印象でしたね。

また、弊社の持つ価値も十分に理解してくださり、非常にいい条件を掲示してくださいました。金属加工の事業をされているので、シナジーも見込めそうだという点や、譲渡後もしっかり事業を運営してくれそうな責任感も感じたので、山下さんにお願いしたいという意思が固まりました。」

譲渡先はスムーズに決められたそうですが、初めてのM&Aに取り組まれた石田様にとって、M&Aのステップ一つひとつが戸惑いの連続だったと言います。

「なにぶん、会社を売る経験は初めてやることですから、勝手が全然わからずひとつのステップを進めることに戸惑いました。バトンズさんにしても、登録さえすればマッチング支援をしてもらえるんだろうと想像していたんです。

実際は『自分が考えて動かないと進まない』というギャップがありました。掲載した途端に問い合わせがバッときたのはうれしい悲鳴でしたが、初めてお会いする方々とどんな話をしたらいいのかという戸惑いもありましたね。」

M&Aのステップに戸惑われた石田様でしたが、買い手の山下様はM&Aの経験者であったことから、交渉はスムーズに進みました。交渉の段取りを素早く進められる山下様に、改めて「この人になら安心して会社を任せられる」と石田様は感じたそうです。

M&Aの交渉で自分が一番最初に感じたのは、『捨てる神あれば拾う神あり』という言葉ですね。山下さんと初めてお会いしたのが9月4日で、約一ヶ月半が経った今、引継ぎをしながら一緒に働いているのが本当に不思議です。」

どんな会社でも、必ず強みがある。廃業の選択肢をとる前にM&Aを検討してほしい

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無事にM&Aを終え、現在事業の引継ぎを行っている石田様。譲渡後は、石田インタストリに参画する前に勤めていた業界に戻られるそうです。

「私も父も、会社には残らないことに決めました。父は、80歳になるまで約60年間一生懸命頑張ってきてくれましたから、引継ぎが終わったら引退となります。私は、もともと父を助けるために長年勤めていた自動車部品メーカーを辞めたのですが、もう一度そこに戻りたいなと考えています。

石田インダストリは、資材仕入れから経理、営業も全部やらなきゃいけない。一方で、私は外に出て拡販をするっていうのが、正直苦手で。どちらかというとデスクワークの方が性に合っていて。この会社を売ると決めた時、最初に思い浮かんだのが、『前の会社に戻りたい』だったんです。ありがたいことに、前の職場も前向きに検討いただいているので、自分の気持ちに素直に従って、会社と相談を進めています。」

安堵した表情で、ご自身の今後について語られた石田様に、最後にこれからM&Aを検討している方に向けたメッセージをいただきました。

「どんな会社でも、何かしら良いところは必ずあると思うんです。それを理解してくださる買い手さんが見つかれば、すごくスムーズに交渉が進むと思いますし、金銭的にも心情的にも良いM&Aが達成されると思います。

我々も正直、M&Aを考え始めた当初は自信がありませんでした。しかし、一歩踏み出してみれば廃業以外の選択肢が見えてきました。譲渡を検討している方には、困ったり悩んだりしているのであれば、一歩踏み出していただきたいです。」

石田様と石田インダストリ有限会社の今後のますますのご活躍とご発展を、バトンズ一同心より応援しております!

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