超精密機械部品の開発、設計、製造を営むグリッターテクノ株式会社は、この度金属加工メーカーの石田インダストリ有限会社を譲り受けられました。グリッターテクノの代表を務める山下様は、「ものづくり産業で起業したい」という思いから、2022年にもグリッターテクノ株式会社を個人で事業承継されています。個人でのM&Aを経験後、今回が法人として初のM&Aとなります。
個人と法人というそれぞれ異なる立場でのM&Aを経験された山下様に、新たにM&Aに取り組まれた経緯や、事業拡大のビジョンについてお話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 石田インダストリ有限会社 |
業種 | 製造業(金属・プラスチック) |
拠点 | 埼玉県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | グリッターテクノ株式会社 |
業種 | 製造業(機械・電機・電子部品) |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 取引先拡大、技術力・開発ノウハウの強化 |
個人でM&Aを成約後、事業拡大のためにM&Aを再検討
山下様がグリッターテクノ社を承継されてから、約一年半が経過しました。承継後は社内のDX化に積極的に取り組み、業務効率化に邁進されています。クラウド導入による業務・品質管理を徹底し、工程やコスト改善を実現されましたが、いつ頃からさらなる事業拡大に向けたM&Aを検討し始められたのでしょうか。
「当初から比べると、グリッターテクノではDX化がかなり進んだため、マンパワーに余裕が出てくるようになりました。新たにM&Aの検討を始めたのは、引き継いで一年が経った頃からになります。基本的には、自社と親和性のある金属加工をベースとしたものづくりの事業、かつマネジメントしやすい関東エリアに絞って探していました。」
前回のM&A同様、複数のM&Aプラットフォームから金属加工業のM&A案件を探されていた山下様に、改めてM&Aプラットフォームを使ってみた感想を伺いました。
「金属加工業などのものづくりに関わる企業の譲渡案件は、どのプラットフォームでもそれほど多くはありません。そのため、良い案件が出たタイミングを逃さないよう、逐一チェックしていかざるを得ないのが現状です。その中でもバトンズは、我々のターゲットであるスモールなものづくり系の案件を含め、案件掲載数が比較的多いプラットフォームだと感じています。
日本の多くの中小企業は後継者不足や経営難に直面しつつも、M&Aという選択肢を知らないまま廃業を選んでいるケースがまだまだ多いと思います。社会の中で取りこぼされてしまうそういった会社とM&Aでどんどんつながっていければ、日本の産業はもっと強くなれますし、私どものような小規模な会社ももっと活性化できると思います。」
事業の強みを掛け合わせ、シナジー効果を見込んだ相手先
今回譲り受けた石田インダストリは、エレベーター・エスカレーターの設置工事を行うための治工具を製造しており、グリッターテクノと親和性がある金属加工を行う会社でした。また、エスカレーターの手すりを自動で清掃できるアタッチメント「ベルクロス」の製造販売も行なっており、大手メーカーや百貨店との繋がりもありました。
「金属加工業という共通点はもちろん、会社を引き継ぐことでこれまでグリッターテクノでは接点がなかったお客様とお付き合いできることが魅力でした。自社の事業と掛け合わせることで、それぞれの顧客に新たなアプローチができると考えました。」
石田インダストリは経営の悪化からM&Aを検討されていました。債務超過、売上の減少といった課題はあったものの、中小企業でありながら大手メーカーや百貨店と直接繋がりがあるという『無形資産』に、山下様は事業の将来性を感じたと言います。
「経営状態の再構築に向けて石田インダストリ様が今後伸ばしていくべきポイントは、『バックオフィスの効率化』と『営業の強化』だと感じました。バックオフィスの効率化は、グリッターテクノでDX化を進めた実績とノウハウがありますし、営業に関しては、私自身の得意分野でした。会社員時代から営業職の経験は豊富で、現在も個人事業として営業代行事業を継続しています。
それぞれの事業を掛け算することで、アップサイドが見込めるのではないかと感じたことが、引継ぎの決め手となりました。交渉にあたっても、今後事業を伸ばすために我々ができることの提案を最大限させていただきました。」
お互いの価値を認め合い、win-winでフェアな交渉を心がける
グリッターテクノを譲り受けた時とは異なり、今回は法人としてM&Aの交渉に取り組まれた山下様ですが、M&Aの交渉において個人と法人という立場による違いはあったのでしょうか。
「まず法人でのM&Aのほうが、契約面等が圧倒的に楽でした。M&Aのスキームは、会社が会社を買う前提で整えられているので、そのスキームに乗ることができ、契約締結までが非常にスムーズでした。それから、前回のM&Aによって、経営の経験や業界の肌感を掴んでいたので、経営の数字を見るにしても前回より非常にリアリティがありました。
おかげさまで、石田様とお会いしてから約一ヶ月というスピード感で事業承継に至ることができました。石田インダストリはご家族で経営されている会社なのですが、本当に良い方々で、第一印象から交渉時、引継ぎ中の現在まで、その印象はずっと変わっていません。この方々と長いお付き合いをできたらいいなと感じたのも、決め手の一つです。」
山下様は、M&Aの交渉時に『お互いにとって納得感のあるフェアな交渉を行うこと』を大切にされており、その意識も石田様の安心感に繋がったのかもしれません。
「がめつく交渉するのではなく、双方がwin-winであり、納得できる結果に落とし込むことを常に心がけています。価値のある部分はしっかり認めて、ふさわしい金額を提示するのが私のポリシーです。また、M&Aに造詣の深い会計士などの専門家に、根拠のある金額を算定してもらったうえで、具体的な金額交渉を進めていくことも大切かと思います。買い手である私としても、提示金額を公平に見ていただくことができて交渉が進めやすかったです。」
今回、承継前のデューデリジェンス(DD)には、山下様はバトンズと提携している株式会社M&A会計ファイナンスの加藤様にご依頼をされました。加藤様は、これまで100件を超えるDD実施経験があります。また、M&A仲介や買い手としてもバトンズの利用経験があり、スムーズなM&Aを実現するためのDDを実現されています。DDに関して、加藤様は以下のように話しています。
「石田インダストリ様は本当に誠実な会社だったので、スムーズに進めることができました。石田様からは、こちらが依頼する資料をすぐにいただけて大変助かりました。
私がDDを実施する際に気をつけていることは、DDはM&Aの最終フェーズであり、成約に向けて具体的に進んでいる中で行われるものであるという意識です。買収判断に関わるような不備や不正が発覚するならまだしも、M&Aの意思決定にあまり関係のないことを、税理士・会計士が鬼の首を取ったかのようにアピールするのは適切ではないでしょう。
もちろん、調査して検出された事項は適切に報告をしますが、買う買わないの判断、買うならいくらで買うのかを判断してもらうためのDDなので、重要度や必要性を吟味して、強弱をつけて報告する、ということを常に意識して取り組んでいます。」
これまでさまざまな規模・業種のDDに取り組まれてきたことで、『買収判断に必要な情報とは何か?』を経験の中で蓄積された加藤様。こうした専門人材をうまくご活用いただくことで、一層のスピード感を持って交渉を進められたのではないかと思います。
実績や過去を引き継いだ上で、自分のやりたいことに挑戦できるのがM&Aの魅力
石田インダストリは、生産拠点を自社で持たないファブレス企業であるため、埼玉から東京へ事務所を移していくことを検討中です。今後それぞれの事業で、統合によるコストカットや売り上げ拡大のポテンシャルは非常に高いと見込まれています。
「数年後を目処に、2社を統合する方針です。石田インダストリは、小規模な企業でありながら大手企業との繋がりがあります。経営者としては、しっかりとこの強みを活かさなければなりません。
グリッターテクノと石田インダストリ、それぞれの事業はまだまだスモールですが、できるところから改善していけば、これから十分期待が持てると考えています。」
初のM&Aから1年半。個人としても法人としてもM&A交渉をご経験された山下様に、最後にM&Aの魅力について伺いました。
「M&Aは、既存事業を引き継ぐことによって、すでに出来上がってる状態から商売を始められるというメリットがあります。今までその企業が蓄積したものを継いで、それをもとに自分のやりたいことをやっていけるというのは、起業を検討している方にとっては非常に魅力的でしょう。
M&Aは大変なことも沢山ありますし、自分で決断しなければならない場面の連続ですが、それを楽しいと感じられる方はぜひチャレンジしてみてください。今後、日本ではさらに事業を譲りたいという経営者が増えていくと思うので、一つのチャレンジの方向性として、選択肢に加えてみていただければと思います。」
山下様率いる、グリッターテクノ株式会社と石田インダストリ有限会社のご活躍を、バトンズ一同心より応援しています!
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