2019年10月からの消費税率引き上げを控え、消費税の話題が取り上げられることが多くなりました。特に、飲食料品などに対する軽減税率への関心は高いといえます。同じ商品でも店内で食べれば10%、持ち帰りにすれば8%となったため、消費者の関心も高まっています。
一方で、下請けの製造業者にとっては、消費税率がアップした際、相対的に弱い立場になりやすいため、増税分を得意先に請求できないというケースがあり得るかもしれません。もちろん、そうしたことが起こらないよう、2018年12月現在でも、公正取引委員会や中小企業庁などを中心に、消費税転嫁対策特別措置法をはじめとする諸々の具体的な取組が行われています。そこで今回は、消費税転嫁対策の中心となる「消費税転嫁対策特別措置法」によって下請事業者がどのように守られているのか、公正取引委員会などの処分実績も含めて紹介していきます。
「増税分は値引きでよろしく」は違法
消費税転嫁対策特別措置法は2013年10月1日から施行されています。規制の対象となるものには二種類あり、1つ目は、大規模小売店(買い手)と納入業者(売り手)との取引で、もうひとつが、個人事業主や資本金3億円以下の事業者(売り手)と継続的に取引をしている法人事業者(買い手)との取引です。
これらの要件において、買い手が一方的な減額や買い叩きなどの行為をすることは法律で禁じられています。例えば、消費税アップ分を売値に反映できないというのは、本体価格が減額されることと同じであるため違法行為となります。また、買い手が本体価格では交渉に応じないで、税込価格でのみ交渉に応じるというのも御法度です。
また、上記のような直接的な減額だけでなく、消費税率アップ分を上乗せすることを受け入れる代わりに取引業者に講演チケットを購入させるなどの行為も禁止されています。
消費税転嫁Gメンも活躍
こうした法整備に加えて違反行為を防止・是正するため、公正取引委員会、主務大臣、中小企業庁が必要な指導や助言を行うことになっています。
もし違反行為を発見した場合は、公正取引委員会が勧告を行い、その旨を公表することもあります。また、消費税転嫁拒否を監視する転嫁対策調査官(転嫁Gメン)という役職が設けられており、現在、中小企業庁には400人超、公正取引委員会には100人超の転嫁Gメンが配置されているということです。2019年4月には約70人の増員が予定されていることが報道されています。
なお、消費税の転嫁拒否をされた事業者が公正取引委員会などに知らせたことを理由に、買い手が取引を停止したり、取引量を減らしたりすることも「報復措置」として禁止されています。
実際の違反事例は?
2018年10月19日に公正取引委員会が発表した「平成30年度上半期における消費税転嫁対策の取組状況及び今後の取組について」によると、相談件数自体は2013年以降、減少傾向が続いています。
それでも、平成30年度上半期において、公正取引委員会で3件の勧告、公正取引委員会および中小企業庁で312件の指導が行われています。過去からの勧告内容を見ると「買い叩き」の事例が圧倒的に多いことが分かります。
特に、大手企業が個人事業主に業務委託で仕事をさせている場合、消費税の増税後も業務委託料を据え置いているケースが典型例です。また、大手企業が事務所や店舗、駐車場施設の賃料を据え置いているケースが多いのも特徴です。
賃料据え置きなどは、うっかりオーナーに対して要求してしまうと、課税取引となる事業用の物件では消費税転嫁対策特別措置法の適用対象となるため、法令違反とならないよう十分に注意する必要があります。
元請け業者は税率変更時における取引内容のチェックを
2019年10月の消費税率8%から10%への引き上げを控えた今、軽減税率や区分記載請求書等方式、適格請求書等方式の議論と合わせ、あらためて消費税転嫁対策特別措置法への対応について確認しておくことをおすすめします。
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