自分の会社の価値を知ろう!プレミアムやディスカウントの考え方
2019年01月08日
2019年01月08日
▼M&Aの取引条件のなかで譲渡価格はもっとも重要な交渉材料のひとつですが、譲渡価格を決めるにあたっては専門家による株式評価を参考にするのが一般的です。ただし、株式評価にはさまざまな方法があるため、唯一の評価額が存在しないのも事実です。今回は、プレミアムやディスカウントといった株式評価を調整するための要素をもとに、株式評価方法の根底にある3つの基本的な評価アプローチを紹介します。
小規模な取引では対象会社の純資産に営業利益の1倍~5倍を加えたものを、譲渡価格の目安にするケースがよく見られます。
ただ、数億円以上といった規模の取引では、公認会計士などの専門家に企業価値評価あるいは株式評価を依頼することが望ましいため、その際には、いくつかのアプローチ方法のなかから適切な評価方法を選択し、取引の状況に応じた調整を加えて株式の評価額を算定することが多いです。
この評価額を算定する際、よく活用されるアプローチ方法のひとつに「コントロール・プレミアム」というものがあります。コントロール・プレミアムとは、会社に対する支配権を取得する場合に、上乗せされる調整額のことを指します。これは上場会社の株価を考えてみるとわかりやすいでしょう。
証券取引所の相場で株式を購入するのは、あくまで一般の少数株主が株式を購入することを前提としています。もし、その上場会社の議決権の過半数にあたるような株式を取得する場合、1株当たり同じ株価で購入することが妥当であるとはいえません。
株式を過半数取得する者には、少数株主にはない支配権が存在するのです。つまり、その支配権(=コントロール)の分だけ株式が高く評価されるということになり、株式評価のこの差額が、コントロール・プレミアムとなるのです。
コントロール・プレミアムと表裏の関係にあるものとして「マイノリティ・ディスカウント」というものがあります。これは、支配権の存在を前提とした株式評価から、何%を割り引くと支配権のない株価になるかを調整することを意味します。
また、これとは別に、「非流動性ディスカウント」と呼ばれる調整が行われることもあります。非流動性というのは、株式をすぐには売却できないことを意味しています。つまり、上場会社の株式であれば、取引所を通じてすぐに売却することができるのに対して、非上場会社の株式であれば、一般的に売却することが難しいのです。
そのため、仮に1株当たりの純資産額や収益力が同等であったとしても、流動性のない株式は評価額が低くなることが考えられます。その差額が非流動性ディスカウントとなるのです。
株式の評価方法はさまざまありますが、その基礎となる企業評価のアプローチ方法は、3つに大別されます。1つ目は会社の純資産などに着目するコスト・アプローチ、2つ目は将来の収入などに着目するインカム・アプローチ、3つ目は市場での取引価格に着目するマーケット・アプローチです。
まず、これらのアプローチと上述のプレミアムやディスカウントとの関係には注意すべきです。例えば、コスト・アプローチの基本的な考え方は、会社を清算するような支配権の存在を前提としています。そのため、コスト・アプローチをもとにした株式評価にはすでにコントロール・プレミアムが含まれていると考えるべきなのです。
逆に、インカム・アプローチは一般の投資家がアクセスできるような証券取引所の相場をもとにしています。そのため、新たに支配権を取得するような取引の場合にはコントロール・プレミアムを加算して株式の評価を行います。その一方で、マーケット・アプローチは流動性があることを前提としているので、類似業種の上場会社の株価を参考に非上場会社の株式を評価するような場合には、非流動性ディスカウントを考慮する必要があります。
以上のように、株式評価を行う際、どのような場合にどの程度のプレミアムやディスカウントを行えばよいのか慎重に検討を重ねて評価額が算定されています。ただし、実際の売買価格においては、「買主がいくら出せるのか」といった主観的な事情も絡んでくるものです。買主の出てこない価格は、どんなに理論上正しくてもあまり意味はありません。株価評価は、その点にも留意しながら慎重に査定を行っているのです。
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