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あなたのあとつぎ計画にも影響?相続法の改正で遺産分割の対象等を見直し

2018年12月30日

2018年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立しました。これは昭和55年以来およそ40年ぶりとなる相続法の大幅な見直しと言われています。見直しの内容は、配偶者を保護するための権利の創設から遺言に関する要件の緩和まで幅広い範囲にわたっています。今回は、7月の相続法の改正で、どのような点が変わるのかについて解説します。

配偶者が自宅に住み続けるための権利

夫が亡くなったことを機に、それまで夫が所有する家に一緒に住んでいた妻が、その家をすぐに出なければならないとしたら酷な話でしょう。しかし、現行の制度ではそのような事態も起こり得ます。例えば、夫が自身の逝去後、妻が家に住み続けることに反対の意思を示していたり、または家を他人に遺贈したりするようなケースです。

今回の法改正では、仮にそのような事態が生じた場合でも、配偶者は一定の期間、家に住み続けられる「配偶者短期居住権」という権利が創設されました。これにより、例えば、配偶者が無償でその家に住んでいた場合、相続開始より、最低6ヵ月間は引き続き無償でその家に住み続けることができます。

また、「配偶者居住権」と呼ばれる権利も新設されています。これは遺産分割などにおける一つの選択肢として、一生涯あるいは一定の期間にわたり建物を使用する権利が法定されたものです。これにより、単純に建物を配偶者に相続させるという選択肢だけでなく、配偶者には「配偶者居住権」を、子供には(配偶者居住権という負担付の)建物所有権を相続させるといったことも可能となります。

遺産分割における不具合を解消する制度

被相続人が長年連れ添った配偶者に居住用の不動産を贈与した場合、特別受益、つまり遺産の先渡しがあったものとされます。現行の制度では、配偶者を含む複数の相続人の間で、改めて被相続人の遺産分割が行われる際に、その特別受益(生前に贈与されていた居住用の不動産)が相続財産として持戻しされてしまうため、配偶者へ分割される遺産の相続価額は、特別受益を差し引いた額になってしまうのです。これは複数いる相続人に対して、公平性を担保するための措置でした。

しかし、今回の改正では婚姻期間が20年以上の配偶者に対して居住用の不動産を贈与した場合などにおいては、原則として、特別受益として取り扱わなくてよいものとされました。この改正によって、生前に贈与された住居用不動産が上記の条件に当てはまる場合は財産分割の対象にされなくなるため、配偶者は生活の基盤を守ることができ、さらに、相続価額も結果的に増える形になったと言えるでしょう。

また、遺産分割に関連する別の改正としては、「預貯金債権の仮払い制度」の創設というものもあります。従来は、遺産分割が終了するまでの間は被相続人の預金の払い戻しができないのが原則でした。しかし、これでは生活費や葬儀費の支払、相続した借金の返済などができないといった弊害も大きいです。そこで、改正法では家庭裁判所の仮処分の要件を緩和したり、一定の場合には家庭裁判所の判断を経ずに預貯金で払い戻したりできるようにしました。これにより、遺産分割前の資金需要にも柔軟に対応できることが期待されます。

遺留分に関する権利関係がシンプルに

一般に、法定相続人には最低限この割合だけは相続できるという遺留分が認められています。仮にこの遺留分が侵害された場合、他の相続人に対して遺留分減殺請求ができることになっています。ところが、この遺留分減殺請求がモノに対する権利である「物権」であるがゆえに、弊害が生じる場合があります。例えば、不動産が遺留分減殺請求の対象となっている場合、相続人の間で不動産が共有状態となり、権利関係や処分手続が複雑になってしまいます。そこで、今回の改正では遺留分減殺請求によって生じるのは金銭債権であることが明確にされました。これなら、不動産の所有権は他の相続人が引き継いだとしても、その者に対して金銭の支払を請求することで公平な解決を図ることができます。

事業承継では後継者以外の権利にも配慮を

以上で紹介したような改正点は、今回の相続法見直しの一部に過ぎません。これらの広い範囲にわたる改正法は2019年7月1日から順次施行される予定です。

なお、これらの改正は、今後、事業承継を考えている人にとっても無縁ではありません。事業承継を円滑に進めるためには、後継者に会社の支配権を移譲するとともに、他の相続人の権利にも配慮する必要があるからです。今回の改正では遺産分割、遺言、遺留分などの各制度で、要件の緩和や手続きの簡素化も見られます。

新たな制度をうまく活用して、すべての関係者が納得いくバランスの良い承継計画を策定していくのがポイントとなるでしょう。

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