
開業届といえば「会社を設立する人が提出するもの」と考えていませんか?実は、クラウドワークス・ランサーズといったフリーランスや自営業も出したほうがお得です。開業届を出さなくても違法ではないため、ベテランの個人事業主でも開業届を出していない人もいるでしょう。
ここでは、開業届の出し方と、出さなかった際の3つのリスクを紹介します。
開業届って何だろう
開業届とは、ビジネスを始めたことを税務署に知らせる書類です。国税庁のホームページにアクセスすると、印刷ができます。メール・ファックスからの提出はできないため、最寄りの税務署に郵送または持込をしましょう。
開業届の書き方を知ろう!
ステップ1 あなたが「税金を納めている場所」を書く
開業届では、税金を納めている場所を書きます。ここには、住んでいる場所やオフィスの住所と電話番号(自宅または会社)も忘れないでください。
また、税金を支払っている場所以外に自宅やオフィスがある人は、しっかりと記入しましょう。
ステップ2 あなたの「名前」と「生年月日」を入れる
開業届であなたの名前とフリガナを入れましょう。印鑑を押すスペースもあるため、忘れないでください。
ステップ3 マイナンバーの番号を入れよう
開業届では、マイナンバー(12ケタ)の番号を入力します。これは、銀行や証券会社の口座開設と同じです。
そのため、通知カード(紙のカード)またはマイナンバーカード(プラスチック製のカード)に書かれた数字を記入してください。
ステップ4 あなたの「仕事」を記入
ここでは、あなたが収入を得ている仕事を書きます。しかし、職業によっては個人事業税(3~5%の税金)を支払います。
例えば、今皆さんがご覧になっている記事を書いたりするライターは、事業税がかかりません。しかし、ホームページを作るデザイナーになると、5%の税金が請求されるでしょう。
ただし、290万円以上の所得(収入から仕事に関わる支払いを引いたもの)がなければ税金がかかりません。理由は、控除(税金を安くできるもの)が290万円だからです。
ステップ5 あなたの「屋号」を決める
開業届には「屋号(会社の名前)」が決められます。あなたのお店をしていれば、店名でも良いでしょう。
ある方が開業届を出したときは「会社名占い」で屋号を選んだとのことでした。(トヨタやサントリーと同じ画数)屋号についてのルールはありません。しかし、名刺を使う人は「覚えてもらえる名前」にしてください。
ステップ6 「開業届の種類」を伝える
開業届では、どのような書類を出すのか税務署に伝えましょう。ビジネスを始める人は「開業」と書かれたところに〇を付けてください。
親のビジネスを継ぐときは、あなたの住所と名前も入れましょう。
ステップ7 「所得の種類」を書く
開業届には、以下のような形で所得の種類を記入します。
【開業届における所得の種類】
- 不動産所得
アパートやマンションの持っているオーナー
- 山林所得
木を切って生活している人(林業)
- 事業所得
パン・ケーキ・お花屋さんなどの店舗のある人。
ライター・デザイナー・プログラマーなどインターネット収入のある人。
ステップ7「開業した日」を決める
あなたがビジネスを始めた日を記入してください。会計ソフトの年度が切り替わる1月1日にするのもよいかもしれません。もちろん、あなたの好きな開業日を書いても大丈夫です。
ステップ8 同時に提出する書類にチェック
開業届の青色申告書と消費税に関わる書類(1000万円の売り上げがある人は必要)の欄には、「アリ」にチェックを入れましょう。
小さなビジネスをしている人は、青色申告申請書が「アリ」。消費税にかかわる事業者届出書(1000万円の売り上げがある人は必要)は「ナシ」です。
ステップ9 あなたのビジネスを紹介しよう
開業届の最後には、あなたのビジネスの内容を書きます。例えばこの記事を書くライターだとしたら「ウェブサイト用のライティング」と書くとよいでしょう。
開業届には「詳しく書いてください」とありますが、簡単にまとめても大丈夫です。
ステップ10:税務署へ「郵送」または「持込」
開業届を書いたら、近くの税務署に提出をしましょう。郵送のときは、開業届の控えを入れる「返信用の封筒」も入れてください。
持込であれば、税務署が開いている時間に行きましょう。封筒に入れて税務署に送っても大丈夫です。
税務署の印鑑が付いた「開業届の控え」が届きます。これは、法人の口座開設をするときに使うため注意しましょう。
「開業届」を出さない「3つのリスク」
開業届を出さないと損すると思いますか?インターネットでは「開業届を提出すると、税務署に隠している所得が見られる」などと書かれています。
開業届で損するのは「控除(税金を安くできる)」ができません。それ以外のリスクについても解説します。
リスクその1 青色申告の「特典」が使えない
開業届を出さないと、青色申告(税金がお得になる)が使えません。なぜなら、青色申告をするための書類(青色申告書)は、ビジネスを始めて「2カ月以内」と決められています。
リスクその2「税金」が高くなる
「開業届を出さないと、青色申告ができない」と話しました。このような話をすると「自分は白色申告(税金を安くできない制度)にする」を選びますよね?
しかし、控除により所得を下げられると、節税につながります。その理由は、税金は「収入」ではなく「所得(仕事にかかる費用を引いたもの)」にかかるためです。
所得を安くすれば、節税につながるでしょう。例えば、年収500万円のAさんだと、白色申告と青色申告では所得が変わります。
【年収500万円のAさん(基礎控除と青色申告特別控除だけで比較)】
- 白色申告の場合
500万円(収入)-基礎控除(38万円)=462万円(所得)
- 青色申告の場合
500万円(収入)-基礎控除(38万円)ー青色申告特別控除(65万円)=397万円(所得)
白色申告(税金が安くならない)よりも青色申告(税金がお得になる)のほうが「65万円」も所得が下がります。
※本当の確定申告では、医療費控除(病院で年10万円を使った人/年収200万円以下は5%の医療費)・住宅ローン控除(一戸建てを分割で買った人)・扶養控除(奥さんを養っている人)もあります。
リスクその3「損益通算」ができない
開業届を出さないと、損益通算(3年間だけ損失を繰り越しできる)ができません。その理由は、青色申告(税金がお得になる)だけのおトクな特典です。
損益通算(3年間だけ損失を繰り越しできる)ができれば、FX(例:ドルと円を交換する)や株(例:トヨタ株)でマイナスとなっても、次の年から利益があれば差し引けます。
2017年にFXと株でマイナス30万円になっても、2018年に40万円の利益があれば、10万円に対して「20.315%の税金」がかかります。
例えば、FXで約10万円の損を出したとしても、損益通算(3年間だけ損失を繰り越しできる)の手続きをすれば翌年以降の利益からその10万円を差し引けるのです。赤字を繰り越したい人は、税務署へ「開業届」と「青色申告書」を出しましょう。
開業届を出したほうが「損」をしない
開業届を出さないと「青色申告(税金がお得になる)」「青色申告者だけでの特典(青色申告特別控除)」「損益通算(3年間だけ損失を繰り越しできる)」が使えなません。
ただし、開業届を出したら「雇用保険を支払った人へのごほうび(失業保険)」が使えません。収入がないのに会社を辞めた人は、開業届を出さないでください。
しかし、生活できるだけの所得のあるフリーランスは、開業届を出した方がよいでしょうね。
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