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劣後ローンとは? 活用するメリット・デメリットまで詳しく解説

2023年06月12日

劣後ローン」はネガティブな言葉を含むため、あまり利用しないほうがよいと感じるかもしれませんが、メリットを活かすことで事業を有利に展開できます。実際に、劣後ローンを資金調達に活用している企業も珍しくありません。

今回は劣後ローンの概要をはじめ、メリット・デメリット、申請に必要な書類などについて解説します。

 

 

 

劣後ローンとは?

早速、劣後ローンの概要から解説します。どういった債権が劣後ローンとみなされるのか確認しましょう。

 

劣後ローンの概要

劣後ローンとは、ほかの債権よりも支払順位が劣るローンのことです。
一般的に会社が倒産したとき、残った資産の返済には優先順位があります。たとえば、従業員に対する給料の支払いが優先されやすいです。その場合、給料の支払いよりも後回しにされる債権は、劣後ローンとみなされます。

劣後ローンは、企業が債務超過である場合に返済される可能性が低いことから、株式と類似する性格を持ちます。帳簿上では債務に分類されますが、金融機関では自己資本とみなされるため、「資本性劣後ローン」や「資本性ローン」と呼ばれることもあります。

 

 

劣後ローンの優先順位

劣後ローンは、ほかの債権よりも後回しにされることがわかりましたが、ほかの債権との具体的な順位関係が気になった方もいるでしょう。

ほかの債権と劣後ローンの優先順位は以下の表にまとめました。

優先順位 債権の種類 債権の概要 債権の例
1 優先的破産債権 ほかの破産債権よりも優先して配当を受けられる破産債権 税金や社会保険料、社員の給料など
2 一般の破産債権 ほかの破産債権に該当しない破産債権 金融機関による借入金や買掛金、売掛金など
3 劣後的破産債権 優先的破産債権と一般の破産債権が配当されたあとに余剰があれば配当を受けられる破産債権 破産手続き開始後の利息や損害金など
4 約定劣後的破産債権 配当の優先順位が最下位の破産債権 劣後ローン

 

劣後ローンは最も優先順位が低い債権であるとわかります。

 

劣後ローンの種類と対象者

劣後ローンには、目的に応じて利用できるさまざまな種類が存在しており、利用対象や返済期間、利率、貸付条件などが異なっています。主な劣後ローンとして、新型コロナ対策資本性劣後ローンと、挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)についてご紹介します。

 

新型コロナ対策資本性劣後ローン

新型コロナ対策資本性劣後ローンは、コロナ禍の影響を受けているスタートアップや事業再生に取り組む方などを対象とする資本性劣後ローンです。

融資限度額 7,200万円
返済期間 5年1か月、7年、10年、15年、20年のいずれか
利率 0.5%~2.95%
貸付条件 ・毎期の経営状況を報告

・新型コロナ対策資本性劣後ローン専用の事業計画書を提出

 

研究開発コラボレーションプラットホームを運営する株式会社Co-LABO MAKERが、新型コロナ対策資本性劣後ローンを利用しました。取引システムの半自動化による成約率の向上や、提携研究機関とのネットワーク強化を目的としています。

 

 

 

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

挑戦支援資本強化特別貸付は、新規事業や経営改善、企業再建などに挑む中小企業を対象とした劣後ローンです。地域経済の活性化に一定の雇用効果が認められる事業や、技術力の高い事業に取り組むことなどが条件とされています。

融資限度額 1社あたり10億円
返済期間 5年1か月あるいは6年から20年までの各年
利率 0.5%~4.65%
貸付条件 ・四半期ごとに経営状況を報告

・公庫が適切と認める事業計画書を提出

 

具体的な活用事例に関する情報は特に公開されていません。詳細については支店の窓口に問い合わせてみてください。

 

 

 

劣後ローンを用いるメリット

劣後ローンで資金調達する企業の事例をお伝えしたとおり、劣後ローンは企業に有効活用されています。そこでここからは、劣後ローンを用いるメリットについて詳しく確認してみましょう。

 

融資が受けやすくなる

資本性劣後ローンとして融資を受けた場合は、貸借対照表において、借りた金額が自己資本とみなされます。資産のうち資本の割合が増えるため、自己資本比率は悪化せず、反対に向上します。

自己資本比率とは、総資本のうち純資産の占める割合をさす指標です。数値が高いと、負債が少なく、健全性が高いと判断できます。

金融機関は、負債の割合が多い企業に貸し付けるのを避ける傾向があります。つまり、資本性劣後ローンによって自己資本比率を向上させれば、ほかの金融機関から融資を受けやすくなる可能性が高くなるということです。

 

 

担保・保証人が不要なケースがある

担保とは、融資を受けるにあたって返済を保証するために、債務者が差し出す対象をさします。具体的な対象は不動産や有価証券などです。
保証人とは、主債務者が支払いできなくなったとき、主債務者の代わりに支払いをする人です。会社が融資を受けるときは基本的に、会社の代表者が保証人になるように求められます。

申請時に担保や保証人を用意するのが難しく、融資を申請できない方もいるでしょう。劣後ローンであれば、申請の際に担保や保証人が不要とされるケースがあります。ほかの融資と比べて申請の難易度が低いため、資金調達に困ったときに重宝する可能性が高いです。

 

 

業績によって金利負担が抑えられる

劣後ローンは、業績に応じて利率が調整されるため、赤字になったときは金利が低く適用されます。たとえば、一定年数が経過して黒字になったときは金利が高くなりますが、赤字の場合は金利が借入時のまま変わらないことがあります。

業績が悪化しても返済の負担が減るため、事業の動向が不安定な企業でも融資を受けやすいでしょう。

参考:危機対応融資(経済産業省)

 

 

劣後ローンを用いるデメリット

これまで劣後ローンを利用することのメリットを紹介してきましたが、もちろんデメリットも存在します。ここからは劣後ローンを用いることのデメリットについて解説します。

 

 

金利が比較的高く設定されている

劣後ローンは、返済されない可能性も想定して融資されるため、通常のローンよりも金利が高く設定されています。具体的には、利益率が「5%超」の場合、「0%以上5%以下」の場合、「0%未満」の場合などに分けて、支払利息の利率が設定されます。

利益率が高いほど支払利息の利率が高くなる仕組みです。業績が赤字だと金利は低下しますが、黒字の場合は利益が高いほど金利が高まります。

 

 

期日前返済や分割払いができない

劣後ローンは、期限一括弁済であることから、期日前返済ができません。業績が向上して金利が上がってしまったとき、すぐに返済をすることができないため、結果として多くのお金を支払うことになります。黒字化の可能性がある状況なら、深く考えずに返済期限の長いローンを組まないように注意しましょう。

毎月返済すべき元本を徐々に減らす分割払いもできません。返済期限に向けてまとまった金額を用意する必要もあります。返済時に多額のキャッシュが流出してしまうため、資金繰りを悪化させないように気をつけなければなりません。

 

 

 

劣後ローンと通常融資の違い

劣後ローンの概要やメリット・デメリットがわかり、通常の融資と何が異なるのか、おおよそ理解していただけたでしょうか。あらためて、ここまでお伝えした内容をふまえ、劣後ローンと通常の融資の違いを表にまとめてみます。

劣後ローン

通常の融資

対象者 災害の被害に遭った企業や新規事業に取り組む企業など 特に制限なし(事業内容や目的等によって異なる)
返済方法 期限一括返済 毎月返済
担保・保証人 無担保・無保証人 担保あるいは保証人の設定が必要
借入金の性質 自己資本とみなされる 自己資本とみなされない
融資 自己資本比率が高まるため融資を受けやすくなる 負債の割合が多くなると融資を受けづらくなる

 

お金を借りるという点は共通していますが、融資の受けやすさや融資後の影響が異なるとわかります。違いを理解したうえで、活用し分けることが重要です。

 

 

劣後ローンの申請に必要な書類

劣後ローンの申請をするときには、さまざまな書類の提出が求められます。劣後ローンの申請に必要な書類は主に下記の通りです。

必要な書類 補足
借入申込書 インターネット申し込みの場合は記入が不要
確定申告書・決算書のコピー 勘定科目明細書を含む
最近の試算表のコピー
事業計画書 すでに民間金融機関や投資ファンドなどに提出している事業計画書も提出
資金繰り表 黒字化するまでの期間を作成
税務申告書
納税証明書
設備投資の見積書 設備投資を実行する場合
法人の履歴事項全部証明書あるいは登記簿謄本 現在取り引きがない場合
企業概要書あるいは創業計画書 現在取り引きがない場合
許認可証のコピー ・現在取り引きがない場合

・許可が必要な事業を営んでいる場合

 

提出書類は、取り引きがある場合・ない場合などによって変わるため、会社の状況と照らし合わせて確認してみてください。

参考:「新型コロナ対策資本性劣後ローン」のお申込時にご提出いただく書類(日本政策金融公庫)

 

まとめ

今回は、劣後ローンの概要をはじめ、メリット・デメリットを中心にお伝えしました。

劣後ローンは、ほかの債権よりも支払順位が劣るローンのことです。債務超過の場合に返済される可能性が低いことから、株式と類似する性格を持ちます。

融資を受ける場合に自己資本とみなされるため、自己資本比率が増加して融資が受けやすくなります。ただし、分割して返済できないことから、返済期限までにまとまった金額を用意しなければなりません。

メリット・デメリットを理解したうえで劣後ローンの利用を検討し、しっかりと提出書類を確認して上手に活用できるようにしましょう。

 

 

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