債権回収会社(サービサー)とは、会社が保有する債権が回収できなくなった際に、債権者である会社に代わって債権を回収する事業者のことをいいます。
従来は弁護士が債権回収を行っていましたが、法改正によって弁護士法の特例として法務大臣の許可を受けた事業者であれば債権の回収を代行できるようになりました。近年では、M&Aにおいても、サービサーの役割が重要となってきています。
そこでこの記事では、M&Aにおけるサービサーの役割について詳しく解説していきます。
債権回収会社(サービサー)とは?
まずは、サービサーの概要と役割について詳しく説明していきます。
債権回収会社の概要と役割
サービサーとは、個人または企業が負っている未払い債務の回収を専門に行う会社です。
これらの機関は、通常、未払い債務を回復するために、銀行、クレジットカード会社、または他の金融機関などの債権者に代わって債権の回収を行います。
債務者が長期にわたって債務の支払いを怠った場合、債権者は未払い金を回収するために債権の回収業務をサービサーに委託する場合があります。サービサーは、債務者に対して手紙を送ったり、電話をかけたり、支払いの取り決めを交渉したりと、様々な方法で債務の回収を試みます。
債務者が支払いを拒否し続けて合意に達することができない場合は、サービサーは、訴訟を提起したり、債務者に対して法的措置を取ったりする場合もあります。
サービサーに支払う金額は、サービサー、債務の種類、およびサービサーとの契約内容などによって異なります。以下では、「定額料金」「成功報酬」型の料金形態について確認します。
定額料金
定額料金は、債務の大きさやそれが正常に収集されたかどうかに関係なく、定額で利用料金を請求されます。このタイプの料金体系はあまり一般的ではなく、少額の債務や初期段階の延滞に利用される場合が多いです。
成功報酬
成功報酬は、回収に成功した債務の一定割合を支払うものです。サービサーの最も一般的な料金形態です。
この割合は、債権の回収期間、回収額の大きさ、債権回収の複雑さなどの要因によって変化します。回収に成功した債務の一定割合は10%から50%以上の範囲になることが多いです。
成功報酬は事前に取り決めを行い、債権の回収に成功した場合にのみ報酬を得ます。
そのため、サービサーと契約する前に、サービサーと契約条件を確認し、交渉することが重要です。
料金体系や、法的措置などにかかる費用などの追加料金についても必ず話し合い、回収業者と仕事をする上で必要な費用を確実に把握しましょう。
「弁護士会社」「ファクタリング会社」とのちがい
債権を回収してくれる事業者には、サービサーの他にも、弁護士法人やファクタリング会社があります。以下では、それらとサービサーの違いを解説します。
債権回収会社と弁護士法人との違いは?
債権回収会社(サービサー)と弁護士法人との違いは、回収できる債権の範囲が異なることです。
サービサーが回収可能な債権は、原則として特定の債権に限られています。たとえば、クレジット債権、金融機関などによる融資債権がその代表的なものです。
それに対し、弁護士法人は、法律の専門家である弁護士が業務を行うことを目的としているため、法人・個人を問わずに様々な債権を回収することが可能です。
債権回収会社とファクタリング会社の違いは?
債権回収会社(サービサー)は、債権者が債権の回収を期日までにできなかった場合に、債権者に代わって債権を回収します。
一方、ファクタリング会社は、債権者に代わって債権を回収しますが、その債権は期日までに回収できなかった債権ではありません。つまり、サービサーは債権者に代わって回収困難な債権の回収を行い、ファクタリング会社は回収可能な債権を回収しています。
ファクタリング会社では、債権者から債権を譲り受ける際に、手数料を差し引いたうえでその対価として現金を支払います。ファクタリング会社に支払う手数料は、債権の早期回収分となるため、その期間の金利分となるのが一般的です。
したがって、ファクタリング会社を利用した場合、サービサーを利用するよりも料金は安くなるでしょう。
民間の債権回収会社(サービサー)で安心な取り引きは可能?
従来は、債権を回収できたのは、弁護士のような法律の専門家だけでした。
しかし、近年では、回収が難しい債権(不良債権)の回収は、民間のサービサーが行うことが一般的になっています。
以下では、なぜ民間のサービサーが債権の回収をするケースが増えているのか解説していきます。
債権会社の運営には法務大臣の許可が必要なため安心の経営体制
1999年2月1日に『債権管理回収業に関する特別措置法』が施行されたことによって、法務大臣の許可を受けた民間のサービサーであれば、債権の回収業務を行えるようになりました。
従来は、債権の回収といえば、顧問弁護士や弁護士法人に依頼するのが一般的でしたが、この法律が整備されたことによって、金融業を営む企業が、サービサーを設立し、債権の回収を行うようになっています。
このようにサービサーは、法務大臣による許可が必要で、許認可の条件も細かく法令で定められていることから、異業種からの参入は少ない傾向にあります。また、債権回収にノウハウを持っており、安心して債権の回収を任せられる企業が多いです。
法務省のホームページには、「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」が公表されているため、許可を受けているサービサーを確認することも可能です。
取締役の1名以上に弁護士が含まれる
法務大臣は、債権管理回収業を営むための許可申請があった場合は、以下に掲げる基準に該当する場合を除いて、債権管理回収業を営むことを許可しなければならないものとされています。
イ 資本金の額が5億円に満たない株式会社
ロ 常務に従事する取締役のうちにその職務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有する弁護士がいない株式会社
ハ 暴力団員等がその事業活動を支配し、あるいは、暴力団員等を業務に従事させる等のおそれのある株式会社
ニ 取締役等の中に、成年被後見人・被保佐人、破産者、一定の前科保有者、暴力団員等、又は債権管理回収業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがある者等が含まれている株式会社
(出典: 債権管理回収業に関する特別措置法 第5条)
上記のとおり、債権管理回収業を営む場合には、常務に従事する取締役のうち1人は弁護士であることが求めれていますし、暴力団関係者がいないことも基準となっていることから、民間のサービサーでも安心して利用することが可能です。
債権回収とM&A
M&Aにおいても、サービサーが重要な役割を担うケースがあります。
M&Aを利用して債権の回収に当てることができる
M&A(合併・買収)の文脈において、サービサーが直接的な役割を果たすことはありません。しかし、特定の状況においては、債権の回収業者がM&Aにおいて間接的な役割を果たす場合があります。
買収対象企業の信用力を評価するケース
買収対象企業に未払い債務の履歴がある場合、回収業者がそれらの債務の回収に関与している可能性があります。
この場合、買収企業とそのアドバイザーは、ターゲット企業の信用度と財務の安定性を評価するために、回収業者から情報を得ることがあります。
買収後の未払い債務に対応するケース
買収後、買収企業は対象企業の未払い債務を引き継ぐ可能性があります。
買収企業は、これらの債務を回収し、合併後の企業の財務状況を改善するために、サービサーに依頼することがあります。
不良資産の売却
M&Aに参加する企業が財政難で未払い金がある場合、買収企業は非中核資産の一部を回収業者に売却することを決定する場合があります。これにより、合併企業は債務負担を軽減し、中核的な事業運営に集中することができます。
まとめると、回収業者はM&A取引に直接関与することはありませんが、未払い債務や関与する企業の財務的安定性に関連する特定の状況において、間接的な役割を果たすことがあります。
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まとめ
M&Aを行う場合、サービサーが重要となるケースがあります。
そのため、M&Aを行うことを考えているのであれば、サービサーがどのようなサービスを提供している事業者であるのかを理解しておかなければなりません。
M&Aにおいてサービサーは、買収対象企業の信用力を評価する際や買収後の未払い債務に対応する際に間接的に重要な役割を担っています。
バトンズのような経験豊富なM&Aマッチングサービスを提供する事業者を活用してM&Aを行えば、サービサーの上手な活用方法についてもアドバイスしてもらえるため便利です。
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