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株式移転とは?株式交換との違いや手続きについて解説

2023年02月01日

「株式移転」とは新規に会社を設立し、その会社にすべての株式を取得させることで、自社を新設会社の完全子会社にすることです。資金を用いずに株式の移動だけで組織再編やホールディングス化ができるのが大きなメリットです。

今回は株式移転の基本から実践までの情報や具体的な手続きの流れ、株式移転に際して発生するメリット・デメリットを整理していきます。また、税制上のメリットを得られる「適格要件」についても、詳しく解説していきます。
株式移転に興味のある方、組織再編・経営統合などを視野に入れて会社を運営している方は参考にしてみてください。

 

株式移転とは

株式移転とは、子会社となる既存企業が発行している株式のすべてを新規に設立する会社に取得させる手法です。株式を動かすことで既存企業は完全子会社に、新規で設立された会社はその子会社の完全親会社となります。

この際に、親会社になった会社を「株式移転完全設立親会社」子会社になった会社を「株式移転完全子会社」と呼びます。完全子会社は、1社の場合も複数社の場合もあります。

 

株式移転と株式交換の違い

株式移転と混同されやすい言葉のひとつに「株式交換」というものがあります。

「株式交換」は、子会社になる企業が既存の会社にすべての株式を渡し、対価を得るという手法です。この際に得られる対価は基本的に株式です。株式を動かすことで既存の会社を完全親会社とし、自社を完全子会社にすることができます。仕組みとしては似ているものの、既存の会社を親会社とする点が株式移転とは大きく異なります

株式交換は、契約上の処理などの手続きが比較的少ないので、経営統合をスムーズに進めることができるでしょう。また、既存の企業同士で行う動きなので、親会社となる企業が他社を買収する目的で行うケースもあります。

 

株式移転の目的

株式移転の主な目的として挙げられるのは「経営統合」「ホールディングス化」の2つです。

まずは経営統合についてです。
異なる企業同士が手を組んで株式移転に取り組み、すべての株式を共同で新設会社に取得させれば経営統合が可能です。この場合、経営統合をしても既存の会社は変わらず存続することになるため、特徴として通常の経営統合よりも社内の抵抗が少ない傾向にあります。

続いて、ホールディングス化についてです。
1社だけで株式移転を行うケースでは、新設した会社は持株会社となります。持株会社を作ることで、株主と経営陣を分けることができ、企業を健全に動かせるようになります。株式移転は組織の再編にも役に立つのです。

 

株式移転のメリット

ここからは、株式移転の具体的なメリットについて見ていきましょう。株式移転という手法は企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

 

既存の会社の独立性を維持できる

既存企業が株式移転を行い完全子会社になった場合、組織自体は独立した状態で存続します。会社の法人格がそのまま残るのは、企業にとって大きなメリットでしょう。

通常の合併を行って経営統合した場合は、それぞれの会社の慣例や社風が異なっていても1つの株式会社となります。買収・合併後は、PMIと呼ばれる経営統合作業が必要になるのです。統合の際に、社内で利用するシステムが変わったり、評価制度が変わったりして、居心地が悪く感じる従業員もいるでしょう。

その点、株式移転では、無理に文化やシステムを統合する必要がありません。変化によるストレスから、従業員を守ることができます。このPMI負担を最小限に抑え、本来の業務にリソースを投下できるのは、事業の運営上もプラスになるはずです

 

社員のモチベーション低下が起きにくい

株式移転は会社は存続し独立性が維持されるため、社風やシステムなどの変化を最小限に留めることができます。つまり、環境の変化によって起こりうる従業員のモチベーション低下を未然に防ぎやすくなるメリットがあります。

いずれはグループとして内部統合を目指すという場合には、従業員にかかるストレスにも考慮して経営統合を行うことが必要でしょう。

 

少数株主の排除が可能

株式移転では、売り手企業の株式のすべてを新たに設立した親会社が取得することになります。そのため株主の3分の2以上の賛成が得られれば、親会社以外の株主、つまり少数株主を排除することが可能です。

企業によっては、少数株主が経営に反論し、経営を進めていくうえでの障壁となるケースがあります。そのような企業において少数株主を排除できることは、メリットとなるでしょう。

 

実行するための資金が必要ない

株式移転をする際に必要な対価は、基本的には株式です。通常、他の企業を買収・合併しようとする場合、その企業の株を買うための資金を用意することになります。企業によっては、高額な費用が必要になるでしょう。

しかし株式移転という方法を選べば、新株を発行するだけで経営統合が可能になります。株式を対価にすることで、コストを抑えて組織を再編できるというメリットがあります。

 

適格要件を満たせば税制優遇がある

株式移転を行う際は、税務処理上の知識を持っておくことが大切です。

株式移転は、処理上の分類で「適格株式移転」「非適格株式移転」の2種類に分けることができます。適格株式移転と判断されることで、株式移転の際に本来発生する課税が免除されるというメリットを享受できます。

満たすべき要件は、対価として支払ったのは株式のみであることや、株式移転を終えたあとに会社同士の主従関係が続くことなどが挙げられます。適格要件は、株式移転を行う会社間の関係によって変化します。

本記事の終盤に適格要件についての細かい基準事項を記載しているので、適格株式移転として扱われるかどうか確認してみてください。

 

株式移転のデメリット

ここまで株式移転のメリットについて解説しましたが、株式移転にはデメリットもあります。メリットと照らし合わせた上で判断することが大切です。

 

手続きが煩雑

株式移転を行うためには、煩雑な手続きが必要となります。

まず、株式移転に関する案を計画していき、書類としてまとめたうえで株主総会で承認を受けます。この際に株式移転に反対する株主がいた場合、その株主が株式買取請求を行使することがあります。そのような場合、企業は買い取りへの対応に追われるでしょう。

その後、株式の移転や、新設する親会社の登記、事後開示書類の備置などが必要です。着手してから完了するまでに1カ月以上の期間を要するため、緻密な計画を練って着実に進めていくことが大切です。

 

反対する株主の請求に応じなければならない

前述したように、株主総会の前、また株主総会の場において反対の意思を示す株主がいた場合、企業は対応に追われることになります。反対株主は株式買取請求権を行使できるので、企業は株主の所有する株式を買い取ることになります。

株式買取請求が行われた際の買い取り価格は、上場企業であれば市場価格をもとに算出されます。一方、非上場企業の場合は、総資産や類似業種非準などの方法をとって、適正な価格での買い取りを行います。

最終的に、反対の意思を持つ株主と会社側で協議して、価格を決定します。

 

株主構成が変わる場合がある

単独ではなく2社以上で株式移転を行う場合には、株主構成に変動が生じるため注意が必要です。株主構成の変動は議決権に関わるので、経営上の意思決定に影響を与える可能性があります。将来的な事業に生じる影響を、先んじて考慮しておく必要があります。

 

公正取引委員会への届出や報告が必要になることがある

2社以上で株式移転を行う場合、対象となるいずれか1社の国内売上高合計額が200億円を上回る、かつほかの1社の国内売上高合計額が50億円を超えている場合、公正取引委員会に事前に合併届出を行う必要があります。

また、毎事業年度終了後に事業に関する報告書を提出しなくてはらないケースもあります。このように届出や報告に手間がかかるケースがあるので、該当していないか留意する必要があります。

 

株式移転の手続き

株式移転には会社法で定められた手続きを行う必要があります。

以下の表では、株式移転で必要になる手続きを流れに沿ってまとめています。いずれも会社法にて定められているステップなので、株式移転の計画前にチェックしておきましょう。

株式移転計画を用意 会社法772条、773条 まず会社は、専門家と一緒に「株式移転計画」という書面を作成します。共同株式移転を行う場合には、該当する会社同士でさまざまな事項についてすり合わせる必要があるでしょう。

株式移転計画には、親会社の商号や事業目的、住所や役員構成、また資本金・準備金や、株式移転による対価を明記します。

なお、取締役会がある場合には、取締役会での承認を得てから株主総会に進む必要があります。

株式移転計画をはじめとする事前開示書類の備置 会社法803条 株式移転により子会社となる会社は、株式移転計画などの事前開示書類を、株主や債権者に開示する必要があります。

株主総会より2週間前、債権者への公告・通知日、反対株主への公告・通知日、新株予約権に関する公告・通知の日、これらのうちのもっとも早い日に、閲覧できる状態にしておく必要があります。

また、事前開示書類は、株式移転の成立後6ヶ月が経過するまで、本店に備え置かなくてはなりません。

株主総会 会社法309条2項12号、804条 原則として、株主総会で特別決議を行い、計画の承認を受ける必要があります。

決議には、議決権を持つ株主が半数以上参加すること、かつ3分の2以上の賛成を得ることが求められます。

反対株主からの株主買取請求に対応 会社法806条 株主の中に、株式移転に反対を表明する人がいた場合、買取請求が行使されるケースがあります。

株主総会が開催される前に株式移転に対して反対する意思を示し、その上で株主総会で反対すると、株式買取請求を行う権利が生じます。権利を行使された際は、会社は、適正な価格での株式の買い取りに対応する必要があります。

株式移転を行う 会社法219条1項8号 完全子会社となる会社は、株式を移転する準備をします。

まずは、株主に対して効力発生日までに株券を提出するよう求める公告を実行します。

この公告は効力発生の1ヶ月前までに行う必要があります。もし期日までに株券が提出されなかった場合は、対価の交付を断る権利が生じます。

なお、株式移転を行う前に、公正取引委員会に届け出が必要なケースがあるのであらかじめ留意してください。市場に悪影響が及ぶほどの大きな経営再編になる場合には、チェックが入ります。

前述のデメリットの項目を参考にしつつ該当するかどうか、株式移転を具体的に進める前に確認しておきましょう。

登記申請を行う 会社法915条、会社法925条 効力発生日には、完全親会社となる会社の設立登記を行います。登記によって、親会社は子会社の株式のすべてを取得し、初めて株式移転が成立します。

なお、完全子会社となる企業については、株式の保有者が変わるだけなので、登記は原則不要です。ただし、新株予約権を新設した完全親会社に渡したい場合には、変更登記を行う必要がありますので、忘れないようにしましょう。

親会社の登記と同じタイミングで、子会社の変更登記も行わなくてはなりません。

事後開示書類の備置・開示 811条、815条3項3号 株式移転の内容をまとめた事後開示書類を作成します。

完全親会社が設立されてから6ヶ月までの間は、事後開示書類を備置し、いつでも確認できる状態にしておく必要があります。

 

このように株式移転は、煩雑な手続きを順序立てて行う必要があります。会社法に則って丁寧に進めていきましょう。状況によっては想定以上にスケジュールが伸びることがあるので、余裕を持って動くことが大切です。

慣れない担当者が自力でこなそうとすると、思わぬ漏れが発生する可能性があります。不安が大きい場合は専門家のサポートを受けて、着実にステップを踏んでいくのがおすすめです。

株式移転の仕訳

株式移転を行う場合に併せてチェックしておきたいのが、株式移転後の仕訳の方法です。会社の立場によって必要な会計処理が異なりますので、立場ごとに内容をチェックしていきましょう。

 

完全親会社

株式移転によって新設される完全親会社の資本金や株式評価は、子会社の金額をもとに行います。この際、適格要件を満たしていれば、非課税として扱うことが可能です。

なお、子会社が「取得企業」「被取得企業」かによって、評価方法がさらに異なります。企業結合の場合は、取得企業と被取得企業という判別をすることになりますが、株式移転のケースでは、新設される親会社は取得企業にはなりません。子会社の中で、取得企業と被取得企業を判別するかたちになります。

具体的には、株主比率や議決権比率、取締役会の構成比率などが基準になります。

 

完全子会社

株式移転は、株主と新設される親会社との間で行われます。そのため原則として、完全子会社では取得企業・被取得企業を問わず、会計処理は不要です。

 

共通支配下の取引

例外的な処理として、すでに親子関係にある会社同士の取引やそれぞれの会社のトップの株主が同じである場合の取引は「共通支配下の取引」と扱います。その場合は、以下のような方法をとります。

 

元親会社株式の取得の仕訳

株式移転前に親会社であった企業の場合は、会計上記録されている資産や負債の適正な評価額にて会計処理を行います。

 

元子会社株式の取得の仕訳

もともと子会社だったという場合は、同様に会計上記録されている資産や負債の適正な評価額にて処理します。ただし、100%の完全子会社ではないというケースでは、会計上記録されている資産や負債の適正な評価額に、元親会社の持ち分比率をかけて、元親会社の保有分を決めます。

 

株式移転の税務

「適格株式移転」に認定されるのか、もしくは「非適格株式移転」という扱いになるのかで税務処理が異なってきます。適格要件を満たせば課税を繰り延べすることができたり、課税そのものが免除されたりします。

以下では、株式移転の適格要件について詳しく見ていきます。どのような要件を満たせば税制上のメリットを享受できるのでしょうか。

 

株式移転の適格要件

適格要件は、株式移転を行う会社間の関係によって変化します。

会社間の関係は、以下の3種類に分類され、求められる要件が異なります。それぞれの適格要件について詳しく整理していきましょう。

・完全支配関係(株式移転を行う企業が、株式を100%保有している場合)
・支配関係(株式移転を行う企業が、株式を50%超100%未満保有している場合)
・共同事業(株式移転を行う企業が、株式50%以下保有している場合)

 

まず、完全支配関係の場合は、親会社の株式のみを交付していること、そして株式移転後も完全支配関係が継続されることが要件となります。

続いて、支配関係の場合は、親会社の株式のみを交付していること、そして株式移転後も支配関係が継続されること、株式移転前にいた従業員のうち8割以上が引き続き在籍、もしくは完全親会社に在籍し続けること、株式移転前の事業を続けることが要件として挙げられます。

そして、共同事業の場合は、支配関係の要件に加え、さらに満たすべき要件が増えます。完全子会社の株式を2割以上を保有する株主は、新設された完全親会社から株式を受け取ることになりますが、売却することなく、そのまま所有し続けることが必要となります。

そのほかに、完全子会社同士の主たる事業が関連性を持っていること、さらに、完全子会社同士の売上もしくは従業員数に5倍以上の差がなく、規模が同等であること、もしくは株式移転前の完全子会社で経営に直接関わっていた役員が1人以上は残ることが要件となります。

これらの要件を満たせば、適格株式移転として扱われることになります。

 

まとめ

株式移転は、子会社となる既存企業が、株式のすべてを新規で設立する会社に取得させることで成り立ち、既存企業は完全子会社に、新規で設立された会社はその子会社の完全親会社となります。資金を用いず、株式の移動だけで組織の再編やホールディングス化ができる手法です。子会社同士の法人格が維持され、社風や制度を存続させたまま統合できるので、従業員のモチベーションを維持することもできるでしょう。

ただし、実行する際には会社法に従ってステップを踏む必要があり、税制上有利になる適格要件も複雑です。
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