東京都大田区に本社を構え、積極的なM&Aを実行して事業を拡大してきたのは、株式会社城南村田の代表取締役社長 青沼 隆宏様と、その奥様の純子様。元は紙問屋だったという「株式会社城南村田」が、どのようにして現在の企業へと転身したのか。そして、今回のM&Aで抜型製造企業を引き継ぎしようと思った理由は何だったのか。社長の隆宏様に詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 有限会社大樹 |
業種 | 製造業 |
拠点 | 埼玉県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社城南村田 |
業種 | 製造業 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 技術力・開発ノウハウの強化 |
「3年残ってほしい」二度のM&Aを経験して気づいた目に見えない効果
もとは城南用紙店という名前の紙問屋だったという、株式会社城南村田の三代目を務める青沼様が現在のポジションに就かれたのは32歳の頃。世の中でインターネットが急速に普及し始めたころ、環境問題に対する意識の高まりと相まって、社会における紙というものの位置付けが大きく変わったと感じた青沼様は、すぐさま会社の主戦場を変えるべく行動に移されたそうです。
「世の中から紙がなくなるとは思いませんでしたし、全ての紙問屋がなくなるとも思っていません。ただし、業界再編が起こることは明確でしたし、そうなれば自分達の事業規模では最後まで生き残ることは難しいだろうと感じていました。
であれば、早めに舵を切り直して従業員にも取引先にも迷惑がかからないようにしたいと考えたんです。そんな形で時代の流れを受け、初めてのM&Aを経験したのが今から15年くらい前でした」と、当時のことを振り返る青沼様。
「一方で、10年以上前から事業の多角化には挑戦していて、ソフトビニール関連と金型関連、そして真空成型品関連という全部で3つの柱となる事業を立ち上げました。ちなみに、今回の案件は3番目にあたる真空成型の事業におけるシナジー効果を期待して買収したものでした」とも。
そんな青沼様が今回引き継ぎされたのが、有限会社大樹。埼玉県に居を構える、精密抜型の製造企業でした。過去に複数のM&Aをご経験されていらっしゃるという青沼様に、買収時のポイントについてお伺いすると
「これといった条件は決めていないのですが、売り手の社長に対して譲渡後も3年は残ってほしいとお願いしています。というのも、M&Aには目に見えてわかる資産や効果に加えて、目には見えない資産や効果というものが存在していると思っており、それらは得てして譲渡後に出てくるケースが多いからです。
例えば、過去に買収した某企業では、先代の築いてきた人間関係の広がりから新規開拓が進んだこともありました」とのこと。
「売り手にとっても、これまで大切に育ててきた自分の会社を簡単な引き継ぎのみで手放すのは寂しいでしょうから、お互いにとって良い方法だと思っています」とも。
幾度かの買収経験があってこそ見えてくる、「目に見えない価値」のお話には非常に説得力がありました。
決め手は「誠実さ」決算書から滲み出ていた誠意は、経営者の人柄そのもの
そんなM&Aのベテランである青沼様ですが、実はバトンズのようなプラットフォームを利用したのは初めてのご経験だったということで、利用しようと思ったきっかけをお伺いすると
「M&Aの案件探しは私の妻が担当しているのですが、彼女がバトンズのサイトを頻繁に見ていて、面白そうな案件があるということで持ち込んできたのがきっかけです。
実際に使ってみると、アドバイザーも非常にしっかりしていましたし、サイトに載っている情報の量も質も全てが高いレベルにあると感じました」とのこと。
そうしてバトンズから奥様が見つけ出した「面白そうな案件」こそ、今回ご成約した「有限会社大樹」でした。M&Aを実施する条件は特に決めてないとおっしゃる青沼様に、今回の決め手となったのは何だったのかお伺いすると
「私は会計事務所出身なので数字を読むのは得意なんですが、大樹さんの決算書からは誠意が滲み出ていたというか、社長の志田さんの誠実なお人柄が伝わってくる内容になっていました。
また、決算の内容自体は微妙に赤字だったのですが、この範疇であれば私たちが介在することで業績を好転させることができそうだという算段もありました」とのこと。
「本音を言えば、大樹さんとのシナジーが期待できる真空成型の領域は1年くらい前から縮小していたので、もっと早いタイミングで出会えていたら良かったのにとは思いました。
ただ、実際に志田さんにお会いするために大樹まで足を運んだときには、建物に入った瞬間に『この企業は大丈夫だ、買う価値がある』と突き動かされるような感情が湧き上がりました。
なぜなら、工場がとても綺麗で整理整頓されており、決算書から感じた誠実できちんとしている社長のお人柄が滲み出ているというか、期待を裏切らない現場だったんです」とも。
こうして、少し遅かったかもしれないという気持ちがありながらも、確固たる自信を持って有限会社大樹の事業を継承しようと決めた青沼様はアドバイザーである株式会社経営承継支援の中島 瑠哉様と連携を取りながら、スピード感を持って交渉を進めていかれたのだそうです。
信頼のおける部下を社長に抜擢任用!自身は会長として先行きを見守ることに
「無事に調印までもっていくコツは、自分の会社のことを正直話すこと」だと語る青沼様は、その言葉通りに裏表なく誠意を持って情報を開示したことで、結果的に数ある候補者の中から成約締結へと進まれました。そんな青沼様に、今後の展望についてお伺いすると
「自分は大樹に会長として就任し、これまで一緒にやってきた人間に社長を任せようと思っています。また、先代には顧問という立ち位置で6ヶ月間サポートしてもらうことになっており、そこから先は都度相談しながら進めていく形にしています。
雇われ社長とは言え、社長になると見えてくる風景は一変するので、新社長がどんな風景を見るのか、そこから本人がどう成長していくのかが楽しみです。
株式会社城南村田としての展望でいうと、鉄鋼関係のM&Aに興味があるのと、1番目の事業にあたるソフトビニール関連の案件探しも進めています。ですが、ソフトビニール領域に関わる会社は本当に数が少なくて、ようやく1社見つけたという状態なので、もう少し時間がかかりそうです」とのこと。
「あと、個人的な話になりますが人生の最後は牧場で過ごしたいと思っているので、いつか牧場を買おうと考えています。その中に施設を作って、65歳で定年を迎えた人が仕事をしながら老後を迎えられるような場所にしたいと思っています。
都内で孤独な定年生活を過ごすよりも、動物に囲まれ、仲間と協力しながら、社会に向けて何かを生み出している方が健全だと思いますから。それが、高齢化社会の課題解決にも繋がるのではないかと考えています」とも。
これまでも数多くのM&Aを通じて紙問屋から転身し、ビジネスの多角化によって会社を成長させてきた青沼様。さすがと言えるアイデアフルな視点から、さまざまな未来を語ってくださり、そのひとつひとつに夢があって、聞いているだけでワクワクしてくる、そんな素敵なインタビューでした。
青沼様と株式会社城南村田の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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