「益金」は経営者や経理担当者が決算や税申告の際に間違えないために理解するべきものです。収益や収入という言葉と似ていますが、意味は同じではありません。
益金や益金算入・不算入に関して理解しておかないと、計上の金額を誤る可能性があるため理解しておく必要があります。また、益金は経営者が節税を検討する上でも欠かせないキーワードです。
そこで今回は、益金の概要や収益との違い、益金不算入制度について詳しく解説いたします。
益金とは
「益金」という概念は、法人税法で定められており、「法人税を計算する際の収益」のことを指します。一方で「法人税を計算する際の費用」を「損金」といいます。
それぞれは以下のような関係があります。
関係式を見ると収益=益金、損金=費用と捉えることができそうですが、利益と所得は会社法と税法の目的が異なるため必ずしも一致はしません。
「会社の利益」は、会社法によって計算し、株主等のステークスホルダーへ正確に報告することを目的としています。一方、「会社の所得」は税金の額を計算するもので、課税の公平が目的です。
そこで益金とは、商品や資産を売った代金だけでなく、無償で資産の受け渡しをおこなった際にも計算をする必要があるものとなるため、計上する範囲が広くなっています。
益金と収益の違い
「益金」と収益の違いや、「損金」と費用の違いはほとんどなく、益金 ≒ 収益ですし、損金 ≒ 費用という関係性となります。
しかし、厳密には用途によって微妙に意味が異なり、税務で使われるのが「益金」で、会計に用いられるのが「収益」という扱いをします。この2点の大きな違いは、同じものにかかる収支であっても扱いが変わる点が挙げられます。
例えば「税務では損金にできないが、会計では費用にできる」や「会計では収益で計上したが益金にはならない」などがあります。
損金とは?損金算入・損金不算入について
益金について考える上で重要な「損金」とは、「失った金銭」を指します。 しかし、会社が支出したすべてを損金として処理できるわけではありません。 ここでは、「損金」の概念や損金算入・不算入について見ていきます。
損金とは何か?
「損金」とは、資本等の取引以外の、法人の資産の減少の原因となる原価や費用、損失などの額のことを指します。税務で使われるのが「損金」、会計で用いられるのが「費用」です。この2点は「益金」と同じように、会計と税法による扱いの違いによるものです。
会計上の費用は簿記や企業会計原則のルールに則っていれば全額認められますが、税法上の損金は内容によっては一部または全額が認められない場合があります。
損金算入・損金不算入
企業の支出を会計で「費用」と処理することを税法では「損金経理」と呼びます。
損金経理において特殊な「減価償却費」や「引当金の繰入れ」のような費用を「損金」にするためには、損金処理が条件となることがあります。 この場合、企業が支出した全額を「損金」としては処理できず、法人税法で損金にできる項目と限度額が設定されています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
損金算入とは
「損金算入」とは、会計上「費用」としていないのに、税務上は「損金」扱いになることを指します。損金算入で代表的な例として「法人事業税」や「繰越欠損金」の控除がこれにあたります。
繰越欠損金は、費用に計上していても「損金」に計上しないと「損金」に算入することはできません。また、法人事業税は「損金」にできる税金の一つですが、「損金」とすることができる時期は税額を計算している時期ではなく、申告書を提出した時点のため注意が必要です。
損金不算入とは
「損金不算入」とは、会計上は「費用」で処理できても、税法では「損金」とされないものを指しています。 損金が多ければ多いほど、会社が払う税金は少なくなります。
そのため会社が不正を働かないよう、公平な課税を行うために損金に入らない「損金不算入」という項目を設けています。
損金不算入になる項目は、全部で6項目あります。具体的に見ていきましょう。
1. 役員報酬
役員報酬などは、原則として「損金不算入」です。
一般的な従業員の給与と同様に、一般経費扱いにはなりません。 役員報酬を経費にしない理由は、意図的に報酬を増やして、所得を抑えることを防止するためです。
2. 寄付金
寄付金に関しても、利益操作によって税金の支払いを減らせる可能性があるので、「損金算入」ができる額の上限が定められています。 寄付金の損金算入可能な上限額を求める計算式は以下の通りです。
ただし、国や地方公共団体への寄付金は全額の算入が可能です。
3. 交際費
交際費の「損金算入・不算入」は税務調査でも指摘事項が多い勘定科目です。 原則は「損金不算入」ですが、条件を満たせば損金に算入できます。
交際費は税務の面からは以下の3つに分けられます。
・社外飲食接待費:800万円まで全額または50%損金算入可能
・その他交際費:損金算入不可(社内飲食費など)
・会議費:全額損金算入
会議に使用する茶菓子や1人あたり5,000円以内なら「会議費」として全額損金算入可能です。しかし、社内の一部の人が飲み会などに使用された交際費は「その他交際費」となり全額損金算入が不可です。
紛らわしいのが「社外飲食接待費」です。 取引先の接待のために使った飲食費ですが、会社の規模によって損金算入の方法が変わってきます。
対象 | 損金参入額 |
---|---|
資本金1億円以下の中小企業・自営業 | 800万円まで損金算入可能 |
資本金1億円超の大企業 | 社外接待飲食費の半額が損金算入可能 |
4.減価償却超過額
「損金」とした減価償却資産の償却額が限度額を超過するときに「損金不算入」になります。
資産の耐用年数は国税庁の「耐用年数表」で調べられます。
5.同族会社と経営者の取引
社長の親族が経営している会社に向けての支払いを大きく見せて損金の額を多くすることを防ぐために、同族会社と経営者の取引は「損金不算入」となります。
例えば、社長の土地を会社が相場と比較し、不当に高い値段で借りて、「賃借料」として損金処理をするのを防止するためです。 これを「同族会社の行為計算否認」と呼びます。
6.税金
法人税や地方法人税、延滞税などは、もともとが「益金」から損金を控除した所得該当金に対して課税されるものです。そのため、損金として計上される余地はなく「損金不算入」です。
一方で、事業税は1年間の損益を前提として計算され、決算後に納税処理となります。損益計算書ではその期に対応する事業税を計上するので、支払いの前に損益計算書には計上されます。
益金算入とは?算入できる具体的な収益
損金と同じように益金にも算入・不算入があります。ここでは、益金算入の概要や具体的な収益について解説します。
益金算入の概要
「益金参入」とは、会計上の利益の計算に含めなかったものを、税務上では「益金」として計上するものです。
この益金は、必ず対象の取引時に参入されるわけではありません。取引が行われても、即益金に参入されるとは限らず、取引の種類により益金に参入する時期が決められています。
法人税法22条の2の1項に「資産の販売では物品の引き渡しが行われた日」「役務の提供では役務の提供が行われた日」と定められています。
具体的な5つの収益
ここからは法人税法22条の2の2項で規定されている5つの項目について紹介します。
項目 | 詳細 |
---|---|
資産の販売による収益 | 自社の製品やサービスの販売。提供による収益 |
有償または無償による資産の譲渡の収益 | ・固定資産(土地・建物・機械など)の譲渡税
・有価証券の譲渡税 |
有償または無償による役務の提供の収益 | ・請負仕事(建設業やソフト制作業など)の報酬
・金銭や不動産の貸付による利子 ・その他の収益 |
無償による資産の譲受けの収益 | 償で受け取った製品やサービスで得た収益 |
その他の取引で資本などの取引以外のものによる収益 | 上記4つ以外の取引から生じる収益 |
益金に関して注意するべきケース
ここからは、実務上で益金に関して注意するべき事例について見ていきます。
売上の計上漏れは益金算入で処理する場合がある
本来、企業が計上するべき売上が計算書に計上されていない場合は、法人税の計算で益金参入で加算処理する場合があります。これについては「単純に決算書を修正すればいいのでは?」という意見もあります。
しかし、非上場企業においては、決算書を外部に対して公開する義務はありませんので、決算書上の利益を少なく見せたいようなときに、「決算書上は売上を非計上とし、法人税の計算上は売上を計上する」という処理を行う場合があります。
もちろん、金融機関に対してはマイナス評価となる一方、法人税を適切に納税していますので問題はありません。しかし、余程の理由がない限り事実に基づいた会計処理を行うのが原則です。
税金の還付金がある場合
以前に納めた税金が何らかの理由によって還付された場合には、会計上は会社の収益として処理しなければなりません。
しかし、法人税の計算上は益金として処理する必要はありませんので、決算上で収入として処理した還付金を益金不算入の処理することが認められています。
益金不算入とは?制度の概要と最新の動向
ここまでは益金参入に関して解説しましたが、ここからは益金に入らない益金不算入に関して解説します。
益金不算入とは
益金不算入とは、会計上収益計上されるが法人税の課税所得の計算上、益金にならないものや二重課税を防ぐためなどの、益金の条件に当てはまるがそのまま益金にすると不合理が起こるため益金にならないものなどがあります。
具体的に益金不算入に該当するのは以下のようなものです。
・資産の評価益
・株式などの配当金
・法人税や住民税の還付金
平成27年度(2015年度)の受取配当等の益金不算入制度の改正について
平成27年税制改正では、受取配当等の益金不算入制度が見直されました。
具体的には、持株比率が高い株式への投資については、経営形態の選択等に税制が影響しないように100%益金不算入としつつ、持株比率の基準が引き上げられました。
また、持株比率が低い株式等への投資は他の投資機会との選択を歪めないように益金不算入割合が引き下げられる変更となりました。
まとめ
益金とは、法人税を計算するときの収益で、二重課税を防いだり、益金にしたりすると不合理が発生してしまうために益金の不算入があります。
何を算入して何を不算入とするのかについては、細かい規定があります。また範囲などについて改正されることもあるため、担当者は最新の情報を常に確認しておくようにしましょう。
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