株式投資の世界ではよく知られている株主総会ですが、実際に参加したことがある方や、仕組みを詳しく知っているという方は多くはないでしょう。
株主総会は株主が主体となってその会社の意思決定を行う重要な場であり、法律によってルールが決められています。
今回は株主総会をテーマに、株主総会の基本的な概要、議決事項、株主総会の流れなどについて解説します。これから株式投資を始めたい方、株主総会の仕組みについて知りたい方にとって有益な内容となっているので、参考にしてみてください。
株主総会とは?取締役会との違い
ここでは株主総会の基本的な目的や内容、取締役会との違いについて解説します。
株主総会とは
株主総会とは、会社の経営に関する重要事項について意思決定を行うために株主を集めて開かれる検討及び決議の場です。
会社に関する様々なルールがまとめられた会社法の第295条第1項にて、株式会社に関する一切の事項について決議できると規定されています。
会社には役員、従業員、取引先、株主といった様々なステークホルダーがいるため、利害関係が複雑になります。そこで株主総会を開くことで重要事項の意思決定をスムーズに行うことが目的とされています。
取締役会との違い
会社の中で重要な意思決定の場として取締役会があり、こちらも重要な意思決定を行う場という意味では株主総会と共通点があります。
しかし、株主総会が株主で構成されているのに対し、取締役会に参加するのは株主ではなく取締役なのが大きな違いです。また、取締役会には各事業の責任者である役員も参加するため、事業運営に関する意思決定がなされるのに対し、株主総会では会社全体の経営に関わる事項が議論されることも違いです。
株主総会の種類
株主総会にもいくつか種類があります。ここでは、定時株主総会と臨時株主総会について解説します。
定時株主総会
定時株主総会は、会社法296条1項の定めによると、毎事業年度が終了した後の一定の時期に招集することを義務付けられた株主総会です。一定の期間については、会社ごとに定款の中で「毎事業年度終了後〇ヵ月以内に定時株主総会を招集する」といった形で決めることができます。
上場企業の場合は毎年3月を決算期とすることが多いため、定時株主総会の開催日は6月前後に集中する傾向があります。
臨時株主総会
臨時株主総会が招集されるのは、会社に関する重要な意思決定を緊急で実施する必要がある場合です。
具体的には、欠員が出た場合の補充となる取締役の選任、配当に関する決議、定款の変更などといった定時株主総会を待たずに決議する事項が挙げられます。
株主総会で決定すべき3つの事項
ここまで株主総会の基礎について紹介してきました。ここでは、株主総会で決定すべき事項について、代表的な3つについて解説します。
会社の経営に関わる重要な事項
会社の経営に関わる重要事項については、株主総会での承認が必要です。具体的には、定款の変更、新株発行、会社の解散、会社の吸収合併、株式交換など、会社の資本や組織全体に関わる重大な事項が対象となります。
役員に関する決定
会社の幹部である役員の去就についても株式総会での承認が必要となります。
また、役員の選任や解任に加えて、役員の責任分担を一部免除するなどの変更についても同様に株主総会の場において、株主からの承認を得る必要があります。
株主の利害に関する事項
配当金や自己株式の取得といった株主の利害にかかわる事項についても株式総会での承認が必要です。
配当金に関する議論は株主が株式を保有するモチベーションとなるという点で重要なテーマといえます。また、自己株式の取得も株主が保有する株式の価格変動につながるため同様に重要です。
株主総会ではどのように議決されるのか
株主総会では実際にどのような形で意思決定が進むのでしょうか。ここでは、株主総会における決議の種類について解説します。
議決権について
株主総会では株主に対して議決権が与えられ、基本的には多数決で決定されます。議決権は1株に対して1つの議決権であることが一般的です。
しかし、議決権を行使するための単元株が100株と定められている場合は、1株しか持たない株主に議決権は与えられません。
また、議決権制限種類株式を発行することによって、ある事項についてのみ議決権を与える対象外とするなどの制限をかけることができます。議決権制限種類株式は、定款に制限したい内容を明記することで発行することが可能です。
議決権の仕組みを踏まえて、次からは株主総会で実施される決議の種類について見ていきましょう。
普通決議
普通決議とは、会社法第309条において定められた行使可能な議決権の過半数を有する株主が出席し(出席要件)、かつ出席した株主の過半数(決議要件)によってなされる決議です。
後述する特別決議、特殊決議に該当しない決議は基本的に普通決議に分類されると考えてよいでしょう。具体的には、剰余金の処分、役員の選任といったテーマは普通決議となる場合が多いです。
特別決議
特別決議は、行使可能議決権の過半数を有する株主の出席とその3分の2以上の賛成によってなされる決議です。株主の利害に深く関係する事項については特別決議が必要となります。
具体的には以下の事項があげられます。株式の価値が変動する、もしくは会社の組織体制が大きく変わる可能性があるものがの対象になると覚えておくとよいでしょう。
<特別決議の対象となる事項>
・特定の株主による自己株式の取得
・新株予約権付社債の発行
・事業譲渡の承認
・定款変更
・会社の解散
・会社の吸収合併
特殊決議
特別決議よりも重要な事項について適用されるのが特殊決議です。
会社法第309条第3項の定めによると以下の事項については特殊決議の対象となります。
<特殊決議の対象となる事項>
・株式に譲渡制限を設ける場合
・合併消滅会社等の株主が、元々譲渡制限株式でなかったが、(新設)合併存続会社等から交付される株式が譲渡制限株式であった場合
特に株式に譲渡制限を設けると、本来自由に売買できる株式の流動性を失われることとなり、株主にとっては大きな制約となります。そのため、最も要件が重い特殊決議の対象となっているのです。
株主総会の流れ
ここからは株主総会の流れについて実際にどのように行うのか順を追って説明します。
事前準備
まず株主総会で株主に報告する内容と決議したい事項について決めます。一般的な株主総会では事業ごとの売上、経営計画に対する進捗状況、今後の見通しなどが主な報告事項となります。
また、先述の通り決議事項は役員の選任、定款の変更といった内容になることが一般的です。議題を踏まえて、株主総会では考えられうる質問の回答を事前に準備されており、スムーズに進行ができるようになっています。
会社法第438条では、株主総会で開示が求められる「監査を受けた計算書類及び事業報告」の規定があるため、これらについても事前に作成する必要があります。
招集事項の決定
株主総会を招集する際には以下の事項を決めておく必要があります。近年はオンラインで株主総会が開かれるケースもあるため、オンラインで出席した株主からの質問にどう答えるかなど新たな課題も出てきています。
<株主総会の招集事項>
・株主総会の日時・場所
・目的事項
・議決権行使についての取り決め
議事進行と採決
株主総会の当日は会社法第315条の規定に沿って、議長が議事進行を行います。議長は株主総会の秩序を維持し、議事を整理する役割があり、秩序を乱す出席者を退場させる権限を持っています。
一般的に株主総会の議長は代表取締役社長が務めますが、定款によって自由に定めることができます。
議事録の作成
株主総会が終了した後は議事録を作成しなければならないと会社法第318条において定められています。
作成された議事録は株主総会の日から10年間保管しなければなりません。株主と債権者は会社の営業時間内はいつでも保管されている議事録の閲覧を要求することができます。
そのため、株主総会の議事録はいつ閲覧を要求されても問題のない形で保管する必要があります。
株主総会を行わないことのリスク
先述の通り株主総会は様々な準備が必要であり、多大な労力を要するイベントです。もし、株主総会を開催せずに会社として重要な事項を進めてしまうとどのようなリスクがあるのでしょうか。
会社法830条1項には株主総会決議不存在確認の訴えに関する規定があります。これは、株主などのステークホルダーよって株主総会が開催されていないことや、決議がなされていないことに対して提起される訴えで、訴えの期限はありません。
もし株主総会で合意されていない事項を勝手に進めた結果、株主に損害が生じた場合はこの法的措置によって会社側はかなり不利な立場に置かれるため、株主総会を行わずに重要事項を進めていくことは大きなリスクがあるといえます。
まとめ
株主総会はよく聞く言葉でありながら、法的な定めや詳細な内容などまで詳しく知っている人は多くはないでしょう。
株主総会は会社の重要事項を決定する上で欠かせない会議であり、決議される事項も多岐に渡ります。特にM&Aなどに関わる方であれば、株主総会はM&Aの成否を決める上で重要となるため、正しい知識を持つことが求められます。
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