西暦1960年、オリジナル写真調合薬の製造・販売からスタートした森本化成株式会社は、国内初となる組み立て式暗室の発明、某・大手通信学習の付録教材として36年間採用され続けていた個人向け写真薬品など、多くの素晴らしい実績を持った老舗企業です。
そんな大御所企業の3代目を務められたのが、柔和な笑顔が印象的な川田 幸子様。専業主婦歴20年を超えたタイミングで本企業の経営に参画されたという川田様に、なぜ創業60年という歴史ある企業の経営に携わることになったのか、会社譲渡を決断された背景と併せて、詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 森本化成株式会社 |
業種 | 専門商品の卸売業・取付工事業 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受側 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | 経営企画・商品開発など |
拠点 | 埼玉県 |
譲受理由 | 起業 |
「やってみるか」という夫の言葉に押されて継承した、創業60年の老舗企業
森本化成の創業者は薬学に精通した起業家で、2代目の経営権は世襲で継承されたそうなのですが、3代目で後継者不在となったため、都内のコンサルティング会社が代わりに継承先を探していた当時、その商談は最後の最後で破談になってしまったのだそうです。
そのコンサルティング会社というのが、川田様の旦那様が携わっていらっしゃった関係で、「おまえ、代わりにやってみるか」と声をかけられた川田様は、思わず「はい」と答えてしまったのだとか。
若い頃には建築事務所で総務の仕事をしていたり、結婚退職後も会計事務所でパートとして働いていたりと、それなりに経理業務の経験は積んでいたものの、20〜40代を基本「専業主婦」として過ごされてきたという川田様が、突然、創業60年の老舗企業の経営者となったのは、今から7年前のことでした。
「何もわからない人間が、歴史も実績もある会社に溶け込むのは本当に大変でした。特に初めの1〜2年は、元からいる従業員を尊重し、彼らの仕事の邪魔にならないように努めながら、自分の役割を果たすのに苦労しました。
夫からは、まずは3年保たせるように頑張れと言われていたので、とにかく事業を継続させることに徹しました。自分自身は、特別な能力を持っているわけではなかったので、経理全般や通販関係の業務を中心に行い、それ以外のところは従業員に任せ切るということで進めてきました。結果、商品力の強さや顧客との関係性が良好だったことも手伝って、業績は順調に推移していきました」とのこと。
「それから無事に3年が過ぎて、気がつけば会社を継いでから7年が経ちました。そろそろ自分の能力的にも身体的にも限界を感じ始めたこともあって、次の継承先を探し始めたんです」と話す川田様。こうして、川田様のM&Aがスタートしたのでした。
問い合わせ件数18件超え。きっかけは日本M&Aセンターからの1本の電話
そんな川田様に、どうやってバトンズのことをお知りになったのかお伺いすると
「ある日、日本M&Aセンターという会社から1本の電話がかかってきまして。担当の方が何度か足を運んでくださったので、いろいろと相談するようになりました。そして、私たちの会社の規模を考えると、小規模のM&Aを取り扱っているバトンズという会社の方が良さそうだという話になり、紹介していただいたのがきかっけです。
バトンズの担当者である高村さんも、いろんな質問に丁寧に答えてくださり、買い手と売り手の間に立ってスムーズに取り次いでくださったので、本当に助かりました」とのこと。
「M&Aという響きからとても難しく考えていたのですが、高村さんのような専門家の方々が細やかにアドバイスしてくださって、何件も来る問い合わせの中から私たちと相性が良さそうな候補者を選んだ上で繋いでくださったので、私自身は最後の決断をするだけでよいという感じでした。必要書類の作成は結構大変だったのですが、苦労したのはそれくらいで思っていたよりもスムーズに事が運びました。恐れずにチャレンジしてみて本当によかったと思っています」とも。
譲れなかった譲渡条件は「従業員の雇用継続」と「会社全体の若返り」
バトンズに登録してから受けた問い合わせ件数は、18件。打ち止めをした後も問い合わせが続いたという人気案件の森本化成が最終的に継承先として選んだのは、個人事業主であられる住吉様(仮称)でした。
川田様ご自身も個人事業主として森本化成を継がれたことから、対象区分にこだわりはあったのか尋ねてみると
「継承先選びに際し、特に“法人・個人”という区別はしていなかったのですが、絶対に譲れない条件として“従業員の雇用継続”というのがありました。また、今の私では事業を拡大できないけれど、この会社自体は大きな可能性を秘めていると確信していたので、業績を伸ばす能力がある人に譲りたいと考えていました。
その点、住吉さんは本当に理想的な買い手さんでした。今の森本化成は10名程度の小さな会社で、従業員の平均年齢が50歳を超えている状態なのですが、彼は雇用の継続だけでなく退職金に関しても真剣に考えてくださり、好条件を提示してくださいました。そんな姿勢を見て、彼であれば従業員たちを大切にしてくれるだろうと思いました。
また、住吉さんは商品企画や営業など、会社を伸ばすために必要なスキルや経験をお持ちだと思いましたし、若くて情熱的だったところにも惹かれました。彼に経営権を譲ることで若返りを果たして、もう一度会社として大きく飛躍するところが見たいと思いましたし、彼なら何か面白いことを成し遂げてくれるだろうと感じました。
実はもう一社お話が進んだところがあって、住吉さんより高い買い取り価格を提示してくださっていたのですが、最後は住吉さんの情熱に賭けてみたいと思って決めたんです」とのこと。
無事に、理想的ともいえる継承先が見つかり、安堵の笑みを浮かべながら穏やかに佇む川田様に、最後に今後の展望をお伺いしたところ「来年の1月までは、顧問として諸々の引き継ぎを行いますが、その後は一足早く定年退職という形で、老後の生活を楽しみたいと思っています。
少しずつなのですが家庭菜園を始めていて、野菜作りの奥の深さを感じながら、日々変化するものを見る楽しさを味わっているところです」と、イキイキとした表情で教えてくださいました。
専業主婦から一転、旦那様の一言から老舗企業の経営者となり、人生の大きな変化を体験された川田様。引退された後も次の楽しみを早々に見つけてエネルギーに満ちた川田様は、チャレンジ精神を持った素敵な経営者でいらっしゃいました。
川田様と森本化成株式会社の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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