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コーポレートガバナンス(企業統治)とは?目的や強化方法、注意点について解説

2022年11月04日

「コーポレートガバナンス」は企業統治とも呼ばれており、会社側が業務の適正化を図る監視体制の仕組み作りのことです。近年は企業の不正や隠蔽による不祥事が数多く取り沙汰され、その度に企業のコーポレートガバナンスがビジネスシーンにおいて大きな注目を集め、経営陣だけでなく企業の関係者は知っておきたい言葉の1つとなっています。

2021年6月からは多様性やESG(環境・社会・ガバナンス)などの改訂も実施され、今後ますます重要になっていくでしょう。

そこで本記事では、コーポレートガバナンスの意味や目的を知らない方のために、詳しく解説していきます。

 

コーポレートガバナンス(企業統治)の意味

会社側と株主の関係や、会社の監視体制が整っていることを「ガバナンスが効いている」や「コーポレートガバナンスが保たれている」と表現します。その反対の「ガバナンスが効いていない」とは、内部統制が管理できておらず統制が取れていないことを表しています。

コーポレートガバナンスとは、企業を適切な状態に統治・支配・管理することを意味する言葉です。コーポレートガバナンスの具体的な目的には、以下の3つがあげられます。

  • 健全な経営で、利益の最大化
  • 不正防止のための社外取締役・監査役・委員会の設置
  • 取締役と執行役の分離

 

米国では1960年代から、日本では1990年頃から大手企業の不祥事やリコール隠しがあったことから注目されるようになり、米国型の経営者を監視する仕組みとして取り入れられました。また、企業の国際化が高まっている現代においては、株主の期待に応えられない経営者の問題としても取り上げられるようになっています。

日本では金融庁や東京証券取引所が、上場企業のガイドラインとしてコーポレートガバナンス・コードを公表しました。このことから、コーポレートガバナンス・コードは企業統治を行う際のガイドラインや指針を示したものとして、上場する上で重要な意味を持ち、上場していない企業でも経営状態の透明性をアピールする指標の1つとして企業価値の向上にも貢献しています。

 

「コンプライアンス」「内部統制」との違い

コーポレートガバナンスと一緒に使われることもあり、意味も間違いやすい「コンプライアンス」や「内部統制」の違いについて説明していきます。ビジネスシーンにおいて頻繁に聞く言葉なので、違いを理解し間違えないように注意しましょう。

 

コンプライアンスとの違い

コンプライアンスとは、法令遵守のことを指すビジネス用語です。コンプライアンスの中には、法律や社内規範だけでなく倫理やマナーといった社会規範も含まれています。ただ法律を破らなければいいというわけではなく、社会規範に従いルールとモラルに注意しながら行動しなければなりません。

これに対し、コーポレートガバナンスとはコンプライアンスを維持・改善する「管理体制」を運用していくことです。コーポレートガバナンスを強化することはコンプライアンスの強化につながります。また、コーポレートガバナンスを守るためにコンプライアンスが必要であるといえるでしょう。

 

内部統制との違い

内部統制とは、従業員が守る社内規範や仕組み作りのことで、透明性の高い健全な企業経営を営む上で欠かせません。この従業員の中には経営者も含まれますが、内部統制は経営者が従業員を管理する仕組みです。整備していくことで健全な企業活動となり、公正かつ透明性につながるため、コーポレートガバナンスの1つの要素となっています。

例えば、経営者が不正を働いたとしても、部下は指摘しにくい環境にあるでしょう。そこで社外取締役や社外監査役など中立な立場の人間を設置することで、不正や隠蔽などを起こすきっかけを抑制します。このことから内部統制とコーポレートガバナンスとの1番の違い「誰が誰に対して管理する仕組み」であるかという点です。

内部統制は、従業員が不正やミスを防ぐ土台となり、企業が健全に成長していく助けとなるでしょう。

 

コーポレートガバナンスの目的

企業が不正しないように監視する目的として、公正性や透明性のある企業経営のために作られたのがコーポレートガバナンスです。ここからはコーポレートガバナンスの5つの目的について、それぞれ詳しく解説していきます。

 

透明性の確保

コーポレートガバナンスが保たれている企業は、経営戦略や財務状況だけでなくリスクマネジメントも適切に管理されており透明性の高い状態といえます。適切な情報開示をしていくことは会社への信頼が増し、株主との積極的なコミュニケーションも充実するでしょう。

さらに、正常な企業運営をする上での監視体制が整うことにもつながります。

 

企業価値の向上

企業はコーポレートガバナンスを保つことで、法律や社内規範だけでなく倫理やマナーといった社会規範も守る企業として社会にアピールすることができますまた、会社の利益を守るばかりではなく、ステークホルダー(株主・経営者・従業員・取り引き先など)の権利や利益の還元にもつながります。

このように適切な情報を開示している透明性の高い経営は、企業の社会的価値が高まり新たな出資や融資を受けやすくなるといった効果もあるでしょう。

財政面が安定してくると成長基盤も整い、企業成長も期待できます。

 

ステークホルダーへの還元

コーポレートガバナンスは、ステークホルダー(企業のあらゆる利害関係者)の利益を守る上でも重要な役割を担っています。会社の利益ばかり追求してしまうと、労働問題・過剰なコストカット・不祥事隠蔽などステークホルダーへ不利益を与えてしまう可能性があります。

コーポレートガバナンスは経営陣に不正をさせない監視体制の仕組み作りだけでなく、ステークホルダーの不利益を避けるためにも必要です。

経営の透明化の確保は、企業運営の不正を防止し、結果として利益向上とステークホルダーへの還元につながります。

 

コンプライアンス対策

コーポレートガバナンスへの取り組みは、コンプライアンス対策にも有効的です。コンプライアンスに厳しい現代において、社内や社外に対してのコンプライアンスにも気を配らなけれなばなりません。

コーポレートガバナンスを通じて従業員の労働環境改善にもつながり、働きやすい環境・雰囲気作りに役立ちます。こうした取り組みは、コンプライアンスへと意識を向けるきっかけにもなるでしょう。

 

グローバル化への対応

近年では、企業経営のグローバル化が進んでおり国際的なコーポレートガバナンスへの問題に直面している企業も少なくありません。国際的なコーポレートガバナンスに取り組むためにも、より高い個々の成果が求められ、人事制度の見直しや新しい制度の導入を検討する企業が増加しました。

しかし、無理な改革を進めた結果として、問題の隠蔽や不祥事を起こす企業が増えたため、経営の監視体制や不正防止を目的とするガバナンスが国際的な高い水準で求められるようになっています。

また、グローバル企業にとっての共通課題のひとつであるSDGs(持続可能発展諸目標)への取り組みや、環境・社会・経済の3つを同時進行で成長させるような経営体制の構築が必要となっています。

海外との取り引きが増えることでステークホルダーが多様化し、数も増加傾向にあります。これらの関係の維持・強化のためにも、コーポレートガバナンスが大きな役割をになっているといえるでしょう。

 

コーポレートガバナンスを強化する方法

ここまで、コーポレートガバナンスの概要と目的について紹介してきました。コーポレートガバナンスを強化すると、社内外の両面にメリットが得られます。短い期間で強化できるものではないため、中長期的なビジョンを持って実施していく必要があります。

ここからはコーポレートガバナンスを強化する5つの方法について解説していきます。

 

企業理念やビジョンの見直し

企業として「どのような会社になりたいか」を提示し、そのために社会への貢献や企業活動を行う上での優先順位などを言語化することで、目指すべき企業の姿が明確になりコーポレートガバナンスが強化されます。

ただし、そうするためには掲げている理念や目標を定期的に見直し、企業全体やステークホルダーへの説明が求められます。こういった企業理念に会社全体で団結して取り組むことで、企業としての一体感も生まれやすくなるでしょう。

 

第三者の目を置く

企業経営に長期間にわたり第三者の目がないと、不正や隠蔽が起こりやすくなる可能性があります。そのため、企業内の透明性を保つために、社外取締役や監査役など第三者の目を設置し、公正な立場でチェックする体制を整えることがコーポレートガバナンスの強化につながるでしょう。

それと同時に、内部監査を行う機関の設置も有効な手段です。内部監査とは、監査役や社内の担当者が企業を監査する機関のことで、不正防止・経営目標の達成・業務効率化を目指します。現状の把握・分析・評価を行った結果が経営陣に報告され、問題の改善策に役立てられます。

コンプライアンスやリスクマネジメントにも公平な判断を下してくれるため、監査結果に基づいて改善を繰り返すことは企業の利益をもたらすのに効果的です。

 

コンプライアンスの徹底

コーポレートガバナンスの強化には、「法令遵守」の考えがなくては先に進めません。法令遵守なくして健全な企業運営はなく、長期的な活動もできず経済的な成長も不可能といえるでしょう。

また、社会的に求められる倫理観やモラルも重要で、これらを当たり前に守る姿勢がステークホルダーに対しての信頼につながっていきます。

また現代はITの時代であり、クラウドサービスを利用する企業も少なくありません。例えば外部からの攻撃により情報漏洩してしまうケースもあり、故意過失に関わらずコンプライアンスに違反した結果として情報や機密が漏洩してしまう事件も起こっています。

こういった事態を避けるためにも、セキュリティ対策の強化はもちろんのこと、従業員に対して情報の取り扱いの研修を実施し、コンプライアンス徹底に努めましょう。

 

不測の事態に備える

コーポレートガバナンスの強化は、事前にあらゆるリスクを想定し対策を打つことにもつながり、不測の事態に備えることも可能です。万が一の事態が起きた場合にも、対策がされていればステークホルダーのみならずステークホルダー以外へのリスクも最小限に抑えられます。

また、不測の事態が発生した場合には、企業・投資家・従業員など全員でコーポレートガバナンスの認識を共有することが必要です。共通の認識があれば判断に迷うこともなく、落ち着いて事態の把握・対処に臨めるでしょう。

 

内部統制を強化する

従業員が守る社内規範やリスクマネジメントの仕組みである内部統制を強化するためには、主に2つのポイントがあります。

1つ目は、現場の意見を反映した合理的な統制にすることです。
例えばあらゆるリスクを想定し、その全てに徹底的な統制を設けることは業務の圧迫につながりかねません。そのため内部統制を強化する際は、現場目線での必要な統制のみ設定するように心がけましょう。

2つ目は、効率的な運用を行うことです。
従来の内部統制の運用では、膨大な評価範囲と評価までの工数があったために、効率的な運用が行えていないケースが多く見受けられました。しかし、働き方やさまざまなツールの進化した現代では従来の運用方法を見直し、運用を電子化したり、評価範囲・項目の再設定を行ったりするなど効率的な運用を行えるようにしましょう。

想定しなければならないリスクや評価範囲が増加した現代だからこそ、コンパクトな内部統制が求められています。

 

コーポレートガバナンスの注意点

コーポレートガバナンスを効かせることでさまざまなメリットが得られますが、これまで通りの企業活動が制限される恐れもあります。注意点をよく理解しておきましょう。

 

保守的な経営になる恐れがある

コーポレートガバナンスは、健全な企業経営を目指しステークホルダーを重視した企業経営を実施します。もし革新的なアイデアが思いついたとしても、ステークホルダーの意見を気にして実行に移せず保守的な経営になる恐れがあります。

新規事業や革新的な経営手法を重視している企業にとっては、攻めの経営ができないばかりか守りの経営になりミスマッチを起こすかもしれません。

 

企業の成長を止める恐れがある

企業経営においては短期的な利益だけではなく、企業成長に合わせて中長期的な利益も重視する必要があります。

しかし、株主や従業員などのステークホルダーは、短期的な利益を求める傾向にありますコーポレートガバナンスを導入することは、ステークホルダーに寄り添った企業経営となるため利益優先の企業経営になることも考えられます。

短期的な利益ばかりに目がいき、長期的な目線が欠けた結果として企業の成長を止めてしまう恐れがあります。短期的な利益ももちろん重要ですが、企業のあるべき姿を見失わないためにも長期的な目線を忘れないように注意しましょう。

 

ビジネスチャンスを逃す恐れがある

コーポレートガバナンスを重視する経営は、ステークホルダーの理解を得ながら経営方針を決定し遵守していきます。短期的・中長期的な計画を立て周知し、計画を実行することを考えすぎてしまうと、迅速に行動に移せなくなりビジネスチャンスを逃す恐れがあるでしょう。

具体的には、経営陣がビジネスチャンスを掴むために仕事をしたとしても、監査側が「問題あり」と判断すると進めている仕事であってもストップさせなければいけない点です。

経営計画を立てることは、ガバナンスを保つためにも必要な手段の1つです。しかし、計画や経営方針の遵守にとらわれず、ビジネスチャンスを掴んだ場合には柔軟な経営体制も整えておくといいでしょう。

 

コーポレートガバナンスが効いている企業の事例

コーポレートガバナンスオブザイヤー」から、ガバナンスが効いている成功事例を紹介します。

コーポレートガバナンスオブザイヤーとは、経営者や社外取締役などで組織する日本取締役協会が主催し、コーポレートガバナンスを用いて中長期的に健全な成長を遂げた企業を後押しする目的で2015年度から実施されています。

社外取締役の有無・現状の業績・委員会設置など、コーポレートガバナンスに積極的に取り組んでいるかを総合的に評価して選定されます。コーポレートガバナンスオブザイヤーに選ばれた企業のうち、「株式会社ダイフク」と「エーザイ株式会社」の2社について紹介していきます。

 

株式会社ダイフク「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2021」経済産業大臣賞受賞

株式会社ダイフクは、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2021」経済産業大臣賞を受賞しました。

選定理由は、以下の3つです。

  1. 現社長就任時に前社長が取締役から退任。新任社長主導により執行部のチーム作りを行うなど、速やかで明確なリーダーの交代
  2. 現社長が就任後、透明性・合理性・客観性強化のために、社外者を中心とした諮問委員会を構成。事業部の垣根を超えて人材の育成に取り組んでいる。
  3. 外部からの指摘に対して、迅速に情報開示や対応を行っており誠実さが発揮されている。また中長期的な視点を持った経営の結果、高い業績をあげている。

 

現社長就任時の速やかで明確なリーダー交代や、後継者計画においてもリーダーシップを発揮しながら先進的な取り組みを行った点が高く評価されました。

また、外部からの指摘にも迅速に対応し、ステークホルダーに真摯に向き合う誠実さも評価されています。

 

エーザイ株式会社「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2021」東京都知事賞受賞

エーザイ株式会社は、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2021」東京都知事賞を受賞しました。

また東京都知事賞は、コーポレートガバナンスが優れていることはもちろん、環境対応・女性活躍推進・ダイバーシティ対応・働き方改革などのESG活動に積極的に取り組んでいる企業に対して贈られます。ESGとは環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素を考慮することを指します。

選定理由は、以下の3つです。

  1. 執行と監督を分離することで、経営の公正性や透明化を確保しつつガバナンスの実効性向上を目指している。
  2. 国連グローバル・コンパクトにも署名し、RE100や気候変動イニシアチブにも積極的に参加
  3. 人的資本の投資など、バランスシートには反映されない人的資本への投資を数値化。女性管理職比率などESG(環境・社会・ガバナンス)の具現化、普及にあたっての課題に挑戦している。

 

コーポレートガバナンスに積極的に取り組むだけでなく、パーパス経営やESGの普及への課題に取り組むといった経営体制が高く評価され、受賞につながりました。また、投資家との対話にも力を入れており、社外取締役が毎年50〜60名の投資家とQ&A形式での対話も継続的に実施しています。

監督と業務執行の明確な分離を図り、監査側(執行役会)へ説明する際には執行役からステークホルダーへの説明をし、企業経営の公正性や透明性の確保に努めています。

 

M&Aを活用することでコーポレートガバナンスを強化する

前述した事例からも分かる通り、コーポレートガバナンスを企業全体に効かせるようにするには、組織の根本からの改革や社会的な潮流への対応が高いレベルで求められます。また、そのためには十分な資金や優秀な人材が必要になり、全ての企業が同じようにすることは困難でしょう。

そこでM&Aを有効に活用することで、コーポレートガバナンスの強化につながる事例も少なくありません。コーポレートガバナンス強化に有効なM&Aの方法は大きく分けて2つあります。

1つめは、株主の利益を軽視する「経営が非効率な会社を投資家が買収する」方法です。M&A後にステークホルダーを重視する経営者が社長に就任すれば、効率のよい経営が実現可能です。また、敵対的買収されるかもしれないという危機感は、経営者側にとってもより効率的な企業経営を行うきっかけとなるかもしれません。

2つめは、経営側が自社株式を買収するM&A方法です。経営者が自社株をM&Aすると所有と経営が一体化され、経営側と投資家の間で所有と経営が分離される心配もありません。

どちらの方法をとっても、豊富な知識と経験を持つアドバイザーの存在は心強い味方となります。

 

まとめ

コーポレートガバナンスは、上場を検討する時に必須であるばかりではなく、不正を未然に防ぎ企業経営の透明性を高める手段として重要な役割を担っています。

また方法の1つとしてM&Aを活用することでコーポレートガバナンスを強化する方法もあります。M&Aを検討している場合にはバトンズがオススメです。

バトンズではM&Aマッチングサービスを提供し、スピード感を持って成約まで無料で利用することも可能です。専門的な知識を持つスタッフによる安心・安全なサポート体制が整っており、バリュエーションやデューデリジェンスにも丁寧に対応いたします。

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