大阪に本社を構える三和建設株式会社は、創業75年を迎える老舗の総合建設会社。これまでに5件のM&Aを手がけるなど、積極的に事業拡大を進める敏腕経営陣が揃った革新的な企業でもあります。そんな経営陣の一人であり、東京支社の責任者を務める森本 行則様は、東京エリアで初となった今回のM&Aをどのように進められたのか。
「すべてが絶妙なタイミングだった」とお話しされる背景や、譲渡後に発生した問題を早急に解決した手腕など、詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 森塗装工業株式会社 |
業種 | 塗装業 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 三和建設株式会社 |
業種 | 総合建設業 |
拠点 | 大阪府 |
譲受理由 | 資本獲得による事業拡大 |
怒涛の商談が終わるも手応えなし。気持ちを切り替え臨んだM&Aプラットフォーム
東京本店の責任者として、首都圏での事業拡大を目指す森本様にとって、コロナ禍の約3年間はM&A案件探しに追われる日々でした。首都圏では初めてのM&Aで、自身がフロントで担当するのは初めてだったと話す森本様が買収対象として探していたのは、直接的なシナジー効果が期待できるゼネコンや工務店といった同業、一連のビジネスプロセスに関わるような設計を担う企業だったそうです。
銀行のM&Aチームと組んで案件探しを進めるも、なかなか条件を満たす案件に巡りあうことができなかったそうで、いざ、数えきれないほどの商談を終えて振り返ると、ほとんど手応えが感じられなかったとのこと。
「どんなに思い入れがあっても、どんなに精魂尽くしても、結構ドライに切られてしまうケースも多くて、心底疲れ果てていました。であれば、自分ももっとカジュアルに物量をこなす方がいいんじゃないかと思っていたところに、社長が無料のメルマガを読んでいたとかで、バトンズを含めたM&Aプラットフォームの利用を勧められたんです。
普段の自分なら、メルマガで紹介されるものに良案件なんてあるわけないだろうと、食わず嫌いで話を聞かなかったと思うのですが、当時は気分を切り替えたいというのもあって、試しに登録してみたのが始まりです」と語る森本様に、M&Aプラットフォームの印象についてお伺いすると「プラットフォームの方が手間はかかるかもしれませんが、銀行チームのフィルタを通す前なので、ど真ん中のニーズではないものも含めてフラットに情報が収集できる点は、非常に勉強になりました。
また、オンラインだとタイミングを逃さずに話したいときに話せて、見たいときに見られるというもの良いと思いました。リアルだと、たとえ相思相愛でもアポが取れなかったために時機を逸して頓挫した、という経験もあったので」とのこと。
こうして、三和建設株式会社にとって初めてとなるオンライン・プラットフォームでのM&Aがスタートしたのでした。
「実は、ど真ん中ではなかった」決め手になったのは、誠実な売り手と仕掛け人の存在
今回の成約先である森塗装工業株式会社は、社名の通り「塗装」を主力事業とする会社。当時、ゼネコンや設計などを手掛ける企業を探していたという森本様にとって、メインターゲットからは少し外れる業種だったにも関わらず、本案件をなぜ選んだのかについてお伺いすると「一番の決め手は、社長である森さんの人柄です。これまで多くの社長にお会いしてきましたが、少しでも高値で事業を売りたいという気持ちがあるためか、盛り気味にお話しされるケースが大半でした。その気持ちは理解できるのですが、そういった姿勢は買い手側に伝わりますし、ネガティブにしか映りません。
その点、森さんは少しも背伸びをせずに全てを曝け出してくれました。そして、森さんが語る社員像から、彼らに対する愛が伝わってきて、この会社を大切に育ててきたのだろうと感じられたんです。
今までは、トップ面談を終えるとモヤモヤした気持ちが残っていたんですが、森さんとお会いした後は、すごくスッキリしまして。自分は、こういう人と話がしたかったんだと気付かされました。ど真ん中の対象ではないけれど、この人の会社なら間違い無いだろう、絶対に引き継ぐ価値があるだろうと感じ、決断しました」とのこと。
そんな森塗装工業株式会社のM&Aを仲介サポートされたのは、株式会社カレンシアの柿本様。その印象についても重ねてお伺いすると「柿本さんは、素晴らしい仕掛け人だったと思います。そもそも、彼女がバトンズでうちを見つけて連絡をくださらなければ、この出会いはありませんでした。また、これまで彼女が半年に渡って森さんに数多くの案件を提案してもなかなか首を縦に降らなかったのに、今回、初めて乗り気になっていて、うちのことを絶賛していると教えてくれて。そんなことを事前に聞いたら、たとえど真ん中でなくても、会ってみようかと思うじゃないですか。
一方で、交渉を進める際の柿本さんは、すごくフラットでした。アドバイザーの中には、売り手に肩入れをし過ぎて時にはブラフを使うような人もいて、そのせいで破談になるケースも少なからずあります。柿本さんは、両者のメリットを考えて立ち回ってくださったので大変信頼できました。それも含めて、今回は非常にご縁に恵まれたM&Aだったと思っています」とも。
こうして、絶妙なタイミングで、然るべきご縁に恵まれたとおっしゃる森本様ですが、譲渡後の従業員向け説明会では自らピンチをチャンスに変え、最後はご自身のお力でこのM&Aを揺るぎないものにされたのでした。
一瞬流れた不穏な空気も、本気の覚悟と歩み寄りの姿勢を示すことで見事に打破
それは、森様から森塗装工業株式会社の従業員に対して、初めて会社が譲渡されたことを説明する場で起こりました。事前に森様から「大丈夫だから」と言われていた説明会は、いざ始まってみると至る所から「どうして」「何のために」「今後はどうなる」といった不安の声が出て、想定以上に騒ついてしまったのだそうです。
それを見た森本様は、説明会終了後も現場に残って従業員の皆様と対話の時間を意図的に作り出し、その場を収めると同時に、当初のスケジュールを大幅に前倒す形で現職である三和建設株式会社の取締役を退任。森塗装工業株式会社の代表に就任することに決められたのです。
「当初しばらくの間は兼務でやるつもりだったのですが、自分が本気でコミットすることを示して、現場を安心させてあげたかったんです。そして、最短で常駐専任となり、彼らと一緒に会社を大きくしていきたいとも思いました。
媚びるつもりはありませんが、M&Aはハコだけ残っても本当に意味がないので。良いものは残し、変えるものは変えていきながら、みんなと一緒にやっていきたいと伝えています」と力強くおっしゃる森本様は、既に60歳定年の社内規定を65歳定年に変えるなど、チーム力が最大化するように変革を始められているそうです。
豊富なビジネス知識を持ち、多くのM&A案件を通じて見る目を肥やしてきた森本様が、案件選定において一番大切にしたのが相手の人柄だったように、森本様もまた、そのお人柄で従業員を魅了しながら会社をリードしていかれる姿が非常に印象的でした。
森本様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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