財務・税務
18
2025/02/17

【医療法人の事業承継 ヒヤリハット事例】出資の分散、税理士への損害賠償請求

記載者情報
はじめに
医療法人の承継の際に理事長・後継者・顧問税理士や士業専門家が気を付けなければならないヒヤリハット事例をいくつかご紹介させていただきます。 ▼藤澤文太税理士事務所ホームページ https://fujisawa-taxaccount.com/ ▼Xの投稿もぜひご覧ください https://x.com/5oleg6g3lr077na?s=21&t=d_LoMA-axQyUbexpR9x1yQ
出資持分の分散
医療法人の持分が色んな人に分散している場合、トラブルになることがあります。 分散の原因としては、2代・3代と代替わりを何度か重ねている場合に出資者の相続や相続対策で複数の相続人等に出資が分散したり、設立当初に創業家以外の第三者が出資していることによることが考えられます。 経営者や創業者の意向に反対する出資者がいるのでトラブルになっているご相談は多いです。
反対出資者の現在の状況を把握
このような場合、まずは反対出資者が現状どういう地位にあるのかを把握する必要があります。 大きく分けて下記の3通りの状況が考えられます。 ①出資者が現状社員の地位も持っている 通常は設立時に出資者と社員をそろえるケースが多いため、上記の事例のうち設立時に第三者が出資している場合はこのパターンが多いと考えられます。 この場合は医療法人に対して退社による持分の時価での払戻請求権と社員の議決権を持っていることになります。 反対出資者(社員)の越権行為と思われる行為がある場合は、医療法や定款に照らしてその行為が問題ないのか検証する必要があります。 ②出資者の地位はあるが社員ではない 上記での設立時の第三者による出資の事例のうち、設立時に出資はしているが社員としては選任されていない場合がこちらに該当します。 この場合、実質的には現状ほとんど権限は有していないといえます。 社員としての議決権はもちろんなく、社員ではないことから退社による時価での払戻請求権も行使できません。 ただし、法人解散時の残余財産分配請求権は有しています。 なお、投下資本の回収が難しいことから、その反対出資者が持つ出資を別の方に買い取ってもらうのも難しいと考えられます。 ③相続で出資を引き継いだが社員にはなっていない もともとの出資者がお亡くなりになり、相続人が社員になっていなければ、その出資持分は相続時の時価による払戻請求権という債権になっています。 持分あり医療法人のモデル定款では、「死亡・除名・退社」により社員資格を喪失することとなり、社員資格を喪失した者はその出資額に応じて払戻しを請求することが出来るとされているためです。 なお、債権の消滅時効は権利を行使できる時から10年です。援用すれば債権は消滅しますが、法人に債務免除益が生じ、法人税と残存出資者への贈与税が生じます。
税理士が気を付けるべき損害賠償
税理士による相続税の申告代理で「農地の納税猶予」の適用を失念して税理士の損害賠償責任保険の対象になった事例もあるようです(出典:(株)日税連保険サービス 税理士職業賠償責任保険事故事例)。 これと同様に考えると、相続税の申告代理を請け負った税理士が「認定医療法人制度」の適用を失念した場合も、税賠の対象となる可能性があります。 本件にかかわらず医療法人の事業承継についてのご相談がございましたら、下記の弊所ホームページのお問い合わせフォームからご連絡いただけますと幸いです。 ▼お問い合わせ https://fujisawa-taxaccount.com/contact/
関連コラム