財務・税務
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2025/02/10

【医療法人の事業承継】診療科や形態ごとの医療法人の財務的特徴と事業承継

記載者情報
はじめに
医療法人の診療科や形態ごとの財務的な特徴を事業承継の観点から数回に分けてみていきたいと思います。 ※本コラムはあくまで私見に基づくものであり、必ずしもすべての医療法人に当てはまらない可能性がある旨あらかじめご了承ください。 ▼藤澤文太税理士事務所ホームページ https://fujisawa-taxaccount.com/ ▼Xの投稿もぜひご覧ください https://x.com/5oleg6g3lr077na?s=21&t=d_LoMA-axQyUbexpR9x1yQ
歯科クリニックの特徴と事業承継
歯科の持分あり医療法人で親族内承継を考える場合、法人の純資産の金額が非常に大きく、将来多額の相続税が課税される可能性があるところは多くあります。 歯科の経営戦略としては今後ますます売上に占める自由診療収入の割合を増加させ、3割以上まで増加させることが理想的といわれています。 認定医療法人化では自由診療収入の割合を6年間2割以下に抑える必要があるため、自由診療に力を入れる歯科医療法人は認定を使わない対策をとる必要があります。 例えば、退職金や設備投資、修繕や生命保険の活用、その他の支出が増加したタイミングで株価の評価額が下がりますので、納税対策として暦年贈与や精算課税贈与のほか、認定を使わずに持分なし移行により医療法人に実質的に相続税の負担を肩代わりしてもらう方法などが考えられます。 なお、歯科医院はコンビニより多いといわれていますが、歯科医師国家試験の合格者数が年間約2,000人であることに対し、毎年約3,000人の歯科医師が引退していることから今後とくに地方での歯科医院不足が懸念されています。
病院(急性期病院)
病院(例えば急性期病院)を施設としてもつ医療法人は、診療報酬の抑制や人件費・材料費の上昇、コロナ補助金の縮小により損益は赤字の法人が多い一方、純資産は10億円を超えるところも多数あります。 持分あり医療法人である病院で純資産が10億円を超える場合、相続税が多額に発生するとともに、法人の総資産に占める現預金の割合よりも固定資産の割合が大きいため、納税のために払戻請求をしても現預金で払うことが出来ない法人もあります。 ただし、資産として固定資産の割合が高いことと、銀行借入やコロナ融資により数十億円単位の固定資産と長期借入を有する医療法人の場合、純資産が10億を超えていても相続税法の株価評価額としてはかなり圧縮され、場合によってはマイナスとなっていることもあります。 特に3年超保有している土地建物の評価額が圧縮されるためです。 例えば土地の評価の基となる路線価は公示価格(時価)の約8割程度で、要件を満たせば「地積規模の大きな宅地」としてさらに評価減が可能です。 建物についても評価の基となる固定資産税評価額は建築価格の5~6割程度と言われています。 納税対策として暦年贈与や精算課税贈与のほか、認定を使わずに持分なし移行により医療法人に実質的に相続税の負担を肩代わりしてもらう方法などが考えられます。 また、出資の相続税評価額がマイナスになるのであれば、理事長や創業者からマイナス金額に相当する現金や病院に賃貸している不動産を医療法人に出資することにより、借入金の返済や財務状況の改善に役立つことに加え、将来の相続税の圧縮も可能となります。 ※ただし不動産の出資については出資者に譲渡所得や消費税が課税される可能性があります。 なお、地価や建築価格の高騰により老朽化した病棟の建て替えをすることが出来ず、病院の存続や承継に悪影響を及ぼしているケースも見られます。
最後に
本件にかかわらず医療法人のM&Aや認定医療法人化、その他の事業承継についてのご相談がございましたら、下記の弊所ホームページのお問い合わせフォームからご連絡いただけますと幸いです。 ▼お問い合わせ https://fujisawa-taxaccount.com/contact/
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