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2024/06/04

M&Aの仲介手数料にご注意!~レーマン方式は1つじゃない

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はじめに
中小企業の間でも事業承継や事業のEXIT手法としてM&Aの活用は広がってきています。しかし、複雑な手続きや専門的な契約書の条件など、多くの事業者にとって独力でM&Aに取組むのは非常に高いハードルがあります。 こうした背景から、多くの企業はM&A専門会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)に相談することになります。しかし、M&Aが成立しても依頼した事業会社とM&A専門会社との間で、料金をめぐるトラブルが後を絶ちません。 今回は、M&Aの売り手・買い手の視点から、テレビCMでも有名になった「レーマン方式」という代表的なM&Aの料金計算方法にスポットを当ててご説明します。具体的なケースを用いて、計算方法の違いによってどの程度料金に差が生じるのかを考察してみましょう。
1. 中小M&Aガイドライン改定の契機にもなったM&Aの料金問題
中小企業庁は2023年9月に中小M&Aガイドラインを改定しました。背景には、事業承継の手段として中小M&Aが普及する一方で、M&A仲介やFAとの間で①手数料体系のわかりにくさ②支援の質のばらつき③契約の複雑さなどが原因でトラブルが頻発していることがあります。 特に、手数料体系については、中小M&Aガイドライン(改定版)で次のような点が指摘されています。 i)仲介者・FAの手数料は、成功報酬の算定方法が複雑な上、最低手数料の適用が各社各様であり適切に把握することが困難 ii)手数料算定法として「レーマン方式」が多用されているが「基準となる価額」については様々な手法があり、手法毎に報酬額が大きく変動し得る こうしたことから、同ガイドラインでは、仲介者・FAは手数料に係る重要事項を仲介契約・FA契約締結前に、書面交付して説明することが義務付けられるようになりました。
2.「レーマン方式」とは
それでは手数料算定方法の代表格である「レーマン方式」とはどのようなものなのでしょうか? 「レーマン方式」とは、M&A専門のFAや仲介事業者の間で一般的に使われているM&A取引における成功報酬の体系です。取引金額に応じて報酬料率が変動する仕組みになっています。中小M&Aガイドライン(改定版)に例示されているものは次のようになっています。 (表1:レーマン方式の一例) 取引金額が5億円までの部分・・・5% 取引金額が5億円を超え10億円までの部分・・・4% 取引金額が10億円を超え50億円までの部分・・・3% 取引金額が50億円を超え100億円までの部分・・・2% 取引金額が100億円を超える部分・・・1% 取引金額が大きくなるにつれて、料率が徐々に低減していくという特徴があります。 株式譲渡によるM&Aの場合で、取引金額=株式譲渡代金という条件で成功報酬を計算すると次のようになります。 取引金額(株式譲渡代金):6億円 成功報酬:5億円×5%+1億円×4%=2,500円+400万円=2,900万円 着手金や中間金など成功報酬以外の料金が設定されている場合もありますが、単純化するためここでは省略します。 この株式譲渡代金を取引金額とする「レーマン方式」を「株価レーマン方式」と言います。しかし、実務においては「レーマン方式」には「4種類」のバリエーションがあり、適用される方式によって全く異なる料金となってしまうところに注意が必要です。
3.「4つのレーマン方式」で料金を試算すると?
(1)4種のレーマン方式 レーマン方式としては、一般的に活用されている方法として次のような方式があります。 方式によって何が取引金額の対象となっているのかを見てみましょう。 ・株価レーマン方式:株式譲渡代金 ・オーナー受取額レーマン方式:株式譲渡代金+経営株主からの借入金 ・企業価値レーマン方式:株式譲渡代金+有利子負債 ・移動総資産レーマン方式:株式譲渡代金+有利子負債+すべての負債(買掛金・未払金など) (2)料金の試算 「レーマン方式」の種類によって、料金にどのような違いがでてくるのか具体例を基に見てみましょう。 【M&Aの前提条件】 株式譲渡代金:6億円 経営株主借入金:1億円 有利子負債:2億円 買掛金・未払い金など:1億円 レーマン方式の表は上記2の「表1:レーマン方式の一例」を使用します。 ①株価レーマン方式 料金=株式譲渡代金5億円×5%+株式譲渡代金1億円×4%=2,900万円 ②オーナー受取額レーマン方式  料金=株式譲渡代金5億円×5% +(株式譲渡代金1億円+経営株主借入金1億円)×4%=3,300万円 ③企業価値レーマン方式 料金=株式譲渡代金5億円×5% +(株式譲渡代金1億円+有利子負債2億円)×4%=3,700万円 ④移動総資産レーマン方式 料金=株式譲渡代金5億円×5% +(株式譲渡代金1億円+有利子負債2億円+買掛金・未払い金など1億円)×4% =4,300万円 上記のように、料金は最も低額な株価レーマン方式の2,900万円から、最も高額な移動総資産レーマン方式の4,300万円まで1,400万円も差額が生じることになるのです。
4.実際にM&A専門会社と相談する際の留意点
上記のように、同じ取引であっても1,400万円もの差額が生じる可能性があるため、M&Aの仲介やFAを依頼する場合、どのような料金体系であるかをきちんと事前に確認することが重要です。 料金体系には「レーマン方式」の成功報酬の他に、着手金や中間金、リテイナーフィー(月額報酬)もあります。料金の見積もりを必ず書面で提示してもらいましょう。 中小M&Aガイドラインの改定と並行して、中小企業庁は「M&A支援登録機関」の制度を創設しました。これは本登録制度にあらかじめ登録されたもののみを事業承継・引継ぎ補助金の補助対象とする制度ですが、中小M&AガイドラインをM&A専門機関に遵守することを促すために導入された背景があります。 「M&A支援登録機関」登録さているM&A専門会社は、HPやパンフレットに「中小M&Aガイドライン」を遵守することが義務付けられており、料金体系については重要として説明することが求められているため透明性は高いといえるでしょう。 まずは、M&Aに相談する際には「M&A支援登録機関」であることの確認をされてみてはいかがでしょうか。 アナタの財務部長合同会社 代表社員 伊藤一彦(中小企業診断士) https://stella-consulting.jp/archives/559
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