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2024/03/04

事業承継のボトルネック「経営者保証」対策は事業承継保証の活用で

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はじめに
今回は、経営者が高齢化して、事業承継の検討が必要な企業の視点で経営者保証と事業承継の関係についてみていきましょう。
1.借入金の経営者保証は事業承継のボトルネック
業績も財務内容も良好なのに後継者未定で事業継続の見通しが立たないために廃業を検討している中小企業は少なくありません。 中小企業庁の推計によると2025年には団塊の世代が後期高齢者になることに伴い、中小企業経営者381万人のうち245万人が70歳以上となります。その約半数の127万人は後継者未定のため、事業継続のためには親族承継や従業員承継だけでなく第三者承継の選択肢も検討する必要があるのです。 ところが、後継者候補がいる118万社についても、その内22.7%は経営者保証を理由に事業承継をしないという調査結果があり、経営者保証は事業承継上の大きな障害となっています。M&Aなどの第三者承継の場合にも、承継者が経営者保証を提供することが借入を継続する条件とされることは少なくなく、経営者保証対策は事業承継を進める上で、重要な課題となっているのです。 ボトルネック解消のキーとなる「経営者保証解除」についてどのような対策があるのか考察していきます。
2.経営者保証ガイドラインと経営者保証の代替制度の検討
2014年に、全国銀行協会と日本商工会議所が策定した「経営者保証ガイドライン」が導入されました。①経営者と会社の経理が明確に区分・分離されていること、②財務基盤が健全で借入金を返済できる収益力が十分認められる、③金融機関に対する財務情報の開示が十分であるなどの3要件の充足度合いに応じて、経営者保証を求めないことや保証機能の代替手法の活用を検討することが努力義務となったのです。 経営者保証が原因で、事業承継に行き詰まっている場合、まず、経営者保証ガイドラインの視点で自己点検してみると経営者保証解除に向けて何をすべきなのか、課題が明らかになってくるでしょう。具体的な考え方は『経営者保証に関するガイドライン』Q&Aに示されていますので参照すると良いでしょう。 点検した結果、経営者保証を直ちに解除できなかったとしても諦める必要はありません。 こうした動きの中で、全国信用保証協会は事業承継を対象とした保証制度を拡充し、様々なケースに応じた経営者保証の代替手法の提供を開始しています。どのようなケースで活用可能なのか具体的に見ていきましょう。
3.事業承継特別保証とその類型
「事業承継特別保証制度」は2020年に導入された経営者保証を不要とする信用保証制度です。「資産超過」、「返済緩和債権なし」、「一定の返済能力(EBITDA有利子負債倍率10倍以内*)」、「社外流出等なし」等の一定の要件を満たすことを前提として、同制度の適用を受けることができます。この保証制度を利用することで新規の借入の場合はもちろん、経営者保証ありの既存の借入金を借り換える際に経営者保証を不要にすることが可能となります。 さらに、中小企業活性化協議会や事業承継・引継ぎ支援センターの確認を受けることで信用保証料率の割引を受けることができます。 *EBITDA有利子負債倍率=借入金などの有利子負債をEBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の略で、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益で除したもの。会社のキャッシュフローを基に借入金を何年間で返済できるかを見るために使用する指標。
4.事業承継の形態に応じた信用保証協会の施策
さらに事業承継特別保証には、上記以外にもいくつかの類型があります。事業承継の実施形態に応じて以下のような保証制度が設けられています。 (1)事業承継サポート保証 持株会社を設立し、持株会社が事業会社の株式を買い取る資金を借入れする際に利用できる保証制度です。持株会社が事業会社の株式の2/3以上を保有し、かつ、持株会社の株式の2/3以上を後継者が保有していることなど、一定の要件を満たしている場合に対象となります。 (2)経営承継関連保証 「事業会社」が経営の承継のために必要な資金を借りる際に利用できる保証制度です。 後継者が代表者に就任後、「事業会社」が株式や事業用資産の取得のための資金を借入れする場合などが対象となります。 (3)特定経営承継関連保証 新代表者に就任した「後継者個人」が事業承継に必要な資金を借りる際に利用できる保証制度です。「後継者個人」が株式や事業用資産の取得のための資金を借入れする場合などが対象となります。 (4)経営承継準備関連保証 M&Aによる事業承継に必要な資金に利用できる保証制度です。買い手企業が売り手企業・株主等から株式や事業用資産の取得のための資金を借入れする場合などが対象となります。 (5)特定経営承継準備関連保証 従業員をはじめとした事業を営んでいない個人による買収(EBO等)に利用できる保証制度です。株式や事業用資産を取得する資金を借入れする場合などが対象となります。 いずれのケースでも経営承継円滑化法による経済産業大臣の認定が必要となります。
5.売り手・買い手の立場に立った専門家を活用しよう
事業承継支援について、親族承継であれば相続の専門家、第三者承継であればM&Aの仲介会社などといったように、後継者の属性だけに着目して支援している専門家の場合、経営者保証がネックになっていて前捌きが必要なケースには対応しきれません。 事業承継を検討する際には、特定の専門家に決め打ちせず、本件のような経営者保証(金融面)が課題となっている場合は、金融に明るい専門家を探してみると案外、解決の糸口が見つかり易いのではないでしょうか。 アナタの財務部長合同会社 代表社員 伊藤一彦(中小企業診断士) https://stella-consulting.jp/archives/559
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