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2021/04/28

中小企業経営の実態②:経営者個人が会社の借入金の連帯保証人

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中小企業経営の実態②:経営者個人が会社の借入金の連帯保証人
 教科書やビジネス書で紹介される企業は、主に大企業や比較的規模の大きい中小企業が対象となっています。  またテレビで紹介されるような中小企業は優良企業で、さらにその優良企業の成功体験のみが紹介される訳で、良いところだけピックアップされています。  そのため、売りに出される中小企業の実態とは異なります。  経営の未経験者であるサラリーマンがいきなり中小企業の経営者になっても失敗しないためには、中小企業の経営についても正確に把握ことが重要です。  そこで、中小企業の経営者になるために知っておくべき「中小企業の実態」を、3回にわたってお届けします。  第2回目は「連帯保証人」です。 ② 経営者個人が会社の借入金の連帯保証人  大企業と異なる中小企業の実態は、中小企業の経営者は自ら会社の借入金の連帯保証人であることです。  大企業の経営者はサラリーマン社長です。  そのため大企業が金融機関から借入をする場合、経営者が会社の借入金の連帯保証人になることはなく、会社の借金を社長個人が保証することはありません。  そのため業績を悪化させて責任を追及されて辞任する場合でも、社長を辞めればいいだけで、それでも膨大な退職金を手にすることができます。  つまり、大企業の責任の取り方というのは「辞任」なのです。  ニュースなどで大企業の社長が退任の記者会見をしている映像が流れることがあります。  そこで辞任する社長は厳しい表情を浮かべながら「責任を取って辞任します」などと話しをします。  その内容を見て、「辛かったんだろう、大変だったんだろう」と思わず同情してしまいますが、実はきっちりと膨大な退職金を手にしているため、退職後は悠々と生活できているのです。  しかし中小企業の場合は、金融機関から借入をする際、慣習的に社長個人がその借入の連帯保証人となります。  もし会社が倒産したら、会社の借金を社長個人の個人資産で返済しなければなりません。  つまり、会社が倒産して、金融機関の残債が返済できなくなった場合、社長が個人の預貯金を切り崩して返済しなければなりません。  預貯金で足りなければ、自宅を売ってでも返済しなければならないのです。  そのため、業績を悪させて資金繰りが厳しい状況に陥っても、大企業のように責任を取って社長業を辞任することはできません。  会社経営から簡単に逃げることができなくなるのです。 中 小企業の社長は、資金繰りを維持するため、社長個人の預金を会社につぎ込んだり、社長が個人として金融機関から借入をして、そのお金を会社に提供したりすることはよくあることです。  このように中小企業の経営を行うには、それなりの覚悟が必要になるのです。  実は、このしくみがあるからこそ借入の審査が緩く、中小企業は金融機関から借入をしやすくなっている、という側面もあります。  ただし、中長期的には、経営者が連帯保証人になるという慣習はなくなる方向になっていくと思われます。
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