中小企業支援
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2020/11/03

経営者像:ビジョンを示し実践する人

記載者情報
サラリーマン時代の上司
前号で、大学の卒業式での学長のお話を紹介しましたが、本号では、32年間の会社生活での上司やお付き合いが有った会社の社長さん・幹部の方と接した中で感じた、経営者像に関して紹介します。 なお、ここでの上司は、管理職ではなく、経営判断を行う立場にいる方を示します。 会社員生活では、何人もの上司のもとで働きましたが、いろいろな意味で上司には恵まれていたと思います。 今では、パワハラと思われる上司もあり、その上司のおかげかどうかはわかりませんが、2回ほど「軽い胃潰瘍」にもなりましたが、学ぶことも多くありました。 お世話になった上司のタイプを次に示します。 これは私の私見で、他のメンバーがどう思っていたかはわかりません。
(1) 自分では決断をせず、メンバーの意見を聞いてまとめ上げていく
部下(社員)としては、非常にやりがいを持てて、経営に参加しているという満足感を得ることができます。 ただし、決定事項がうまくいかなかった時に、部下に責任を押し付ける場合があります。 あくまでも決めた主体は部下であるが、最終責任は経営者が持つことにより組織(会社)としての力が向上します。 気を付けなければいけないのは、何でも部下に相談を持ち掛けるのではなく、経営者が決めるべきことは自らが決める必要があり、部下に相談したことにより自分の考えと違う決定になった場合、その後の実施で意見対立などの問題が生じます。
(2) 自分では決めていて、一応メンバーの意見を聞くが、最終的には自分の意見を押し通す
部下(社員)には、儀式的に意見を聞く場を持つが、あらかじめ自分で決めていて、結論を自分の意見に集約させていくパターンです。 最初は良いですが、何回も繰り返していくうちに、部下は「儀式」に気づき、意見を言ってもしょうがないという気持ちになって、組織(会社)の活力が低下する可能性があります。 経営者のリーダーシップは当然必要なので、意識的に部下の意見も入れた結論に持っていけば良い方向になります。
(3) その上司、あるいはお客様から言われたことを、部下(社員)に押し付ける
「お客さんが言うからこれをやるしかないんだ」のパターンです。 主体を自分ではなく、その先にして、その威光を使って組織を動かすパターンです。 過去の経験では、お客さんが言うことが必ず良い方向とは限りません。 当然お客さんは正しいと思って言っていますが、その背景まで考慮しないと、いざ言われる通りに実施したら、お客さんの中の検討した手段の中の一つでしかなく、それも本命の手段でない場合もあります。 お客さんと「WIN=WINの関係」を築くためには、会社の総意として「対案」を提案するような関係を築くべきで、やはり皆が納得して実行するのが最も力を発揮します。 このパターンは会社の中間管理職に多く見られます。 上司に逆らえないので、それを部下に押し付けて、無駄なことをさせてしまうことがあります。
(4) 問題がある部門の管理職を責めて、強引に改善をさせる
最悪のパターンと思います。 私も管理職の会の中で経験しました。 社長(経営者)は、よかれと思っていると思いますが、やられた者はたまったものではありません。 これが繰り返されると、部下(社員)は何も報告しなくなり、どんどん悪い状態に落ち込んでいきます。 私はたまらず個別の場を設定してもらい話し合いを行いました。 その内容は、仕事のことだけでなく、プライベートの面も含めてかなり話し合いをして、「蛇に睨まれた蛙」の関係から「ボス蛙と平蛙」位の関係には持ち込みました。 社長(経営者)は、個人的には優れた人間性を持っています、弱い面もあります、それを表に出せないので行動面で暴走してしまうことになると思います。
(5) 何でも自分で決めて、それを部下に説明もなく実施させる
(2)のパターンで、部下(社員)に議論の場を与えず、強引に進めるパターンです。 非常時には有効な手段ですが、平常時にこれを繰り返すと、良い結果の場合は問題ない場合もありますが、結果が悪い場合は「やらされ感」が浸透し、組織(会社)としての総合力が低下してしまいます。
(6) 超現実的で、先のことは考えずに現状の成果にこだわる。先のことは、その時に考えれば良い
一応、中期計画(3年程度の計画)を策定するが、資源は「現状」にばかりつぎ込んでしまう。 上司にこのことを確認したら「3年先はその時に資源がある」との回答、変に納得したことがあります。 ある程度の会社では、資源が豊富なので可能ですが、長期的に獲得すべき資源もあるので、先が読めない状況で走るのは部下(従業員)にとって不安になると思います。
(7) 将来のビジョンも示し、その中で現状を判断し、どうするかを示す
「人はビジョンに付いていく」ということを聞いたことがあります。 これまでの経験の中で「しっかりとしたビジョン」を示して、その中での「現状をきちんと位置付け」ができて、「現状やるべきこと」を明確に示した上司に最も従う気がおきました。 当然、人間性も優れた方でしたので。
まとめ
以上、思いついたまま書き出しましたが、その場の状況で対応はさまざまなので、どのタイプが良いのかはわかりません。 当然、平常時と非常時では対応が異なり、「みんなの意見を聞きたいのだが、切羽詰まっているので、強引に突破するしかない」場合も多くあると思います。 平常時、余裕があるときは、人財育成もあり、社員の意見をある程度尊重した方が良いと思います。 私としては、「ビジョンを示せる経営者」「決断ができる経営者」「実際に行動する経営者」であれば、付いていける気がします。(結論が簡単になりましたが・・・・) 中小企業の経営者から見ると、大企業の部門の責任者の話で、その責任者の代わりは幾らでもいるので、実績が良くなければあるいは経営環境が変われば責任者を代えればいいだけの話と思うと思います。 実際、その通りで、会社組織はよくできていて、部門の責任者を代えることにより現状を打破する場合もあります。 部下も、上司はいずれ代わるので、暫く我慢したらいい場面もあります。 中小企業では、当然、経営者が代わることは簡単にはできないし、社員を異動させるにも限界があります。 中小企業の経営者(社長)は、常に、企業の存続・発展を考え、最善の策を選択し、決断をしていかなければならない苦しさ・楽しさがあると思います。 中小企業の経営者は、会社の規模にもよりますが、ほとんど一人の場合が多いと思います。 当然、従っている社員の方、特に長く付き合っている社員の方は、社長さんのお考え、行動をよく理解されていると思います。 その中で、変化のために、他の人格を出すことは難しいと思います。 また、長年のご経験により、身についた「経営者としての独自の実力」がおありなので、なかなか自分を変えることは難しいと思いますし、逆に変わらない方が良い場合もあります。 会社運営の中で、現状を変えていかなければならない場面が多くあると思います。 会社運営を継続されている経営者の方は、これまでの間、多くの事案で適切な対応をして、乗り切ってきたと思います。 その上で、更に、外部の力を必要とした方が有効に実施できる場合は、ぜひ、お問い合わせ願います。 違った視点でお手伝いさせて頂ける可能性があると思います。
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