中小企業支援
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2020/08/15

5S活動(2) 5S活動は何の役に立つの?

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効果1:業績(利益)が向上する
① 売上が拡大する ビジネスは、対企業(会社)向けの「B to B」と、対一般消費者向けの「B to C」の両面がありますが、「5S活動」は両面の売上の拡大に効果があります。 「B to B」の場合、お客様が「品質監査による現場立入り」「新製品の試作品の確認」あるいは「共同開発のための人の受け入れ」などが多くあると思います。 その場合、「5S活動」がしっかりできていると、好印象を感じてもらい、「信用力」が向上し、これにより取引きが円滑に進み、それにより売上が拡大します。 競合先と、品質、価格が同等であっても「信用力」により受注をが可能で、場合によっては、多少価格が高くても、品質安定や製品改善の潜在力を認めてもらって注文を得ることも可能になります。 製造現場あるいは販売現場が乱れている会社に大事な取引を頼むことはないと思います。 「B to C」の場合も同様で、「乱雑に展示されている販売店」「汚れた飲食店」には、通常は、「入らない」、「一度は行っても二度とは行かない」と思います。 また、商品を探すときも、店員に言って、探すのに手間取る店やたらい回しにあう店も同様に行かなくなると思います。 ② 材料費の減少、修繕費の減少などの変動費が下がる 「5S活動」のレベルが高い組織は、原材料の先入れ先出しができるので、材料が劣化(錆、変色、分離)したり、食品の場合は消費期限が切れたりすることがなく、これにより、廃棄の損失や再購入が少なくなり、材料費が減少します。 また、在庫管理が「5S活動」によりきちんとできていると、欠品がなくなり、それによる生産停止やビジネスチャンスの機会損失を防ぐことができます。 「5S活動」のレベルが上がると、職場や業務の「見える化」が進み、また「観察眼」が養われるので、「異常」を初期段階で発見することができ、問題発生を未然に防ぐ、または炎上しないうちに対処することができます。 このように「5S活動」は現状だけでなく、将来にも目を向けることができます。 ③ 生産、営業の本来の業務に回す時間が増え、固定費が下がる(生産性向上) ある本の記載では「平均的なビジネスマンは、1年間に150時間をモノを探すのに充てている」という調査結果があるとのことです。 1日の労働時間を8時間とすると約19日を、価値を生まない(業績に寄与しない)時間に費やしていることになります。 これは、平均的な数値で「5S活動」のレベルが低い者の場合は無駄な時間を多く使っていることになります。 生産現場で「工具」「材料」などを探すのに時間がかかり、生産性が低下することは理解しやすいと思いますが、他の部門では見えにくいのでより深刻な場合があります。 研究開発、商品開発、企画・調査部門では、資料や書類の整理・整頓が悪い、あるいはパソコン内の格納が系統立ってないため(情報5s)、必要なものを探すのに時間を費やして、それに疲れ、本来の「創造する」ことにエネルギーをかけれない状態になっていることも多いかと思います。 個人の能力を上げる方法の中に、「無駄な時間を減らす」ことは有効だと思います。 「1作業1片付け」と言われますが、並列的に幾つかの業務を抱えている場合(我々の士業はその典型ですが)、途中まで実施した仕事を片付け(整理・整頓)により1区切りを付け、これにより気持ちを切り替え、また次に同じ仕事の続きを実施する場合はスムーズに開始できるように日々実施することにより、業務の効率は飛躍的に上がると思います。 個人、組織が無駄な時間消費を減らすことにより、能力が向上し、他の業務を実施できるようになり、これにより人件費の抑制ができ、会社の業績が向上する好循環を生むことができます。 「ライフワークバランス」ということが数年前から言われていますが、「単に労働時間を減らす」のではなく、「無駄な労働時間を減らす」「個人の能力を上げて労働時間を減らす」必要があります。 これができないと、会社は人を増やさなければ対応できなくなり、業績の悪化につながっていきます。
効果2:個人・組織の能力が上がる *これにより業績向上
「5S活動」の効果は、目に見える効果もありますが、「個人・組織の能力が上がる」目に見えにくい効果が大きいです。 以前の号で「日本電産サンキョー」の話を紹介しましたが、業績向上の基礎として「個人・組織の能力向上」があると思います。 数人の個人の能力向上では限界があり、「組織」としての能力向上が業績向上にはかかせません。 効果のある「5S活動」は社長、経営者をはじめ、管理職、一般社員、あるいは派遣社員を含めた全員参加が重要で、全員参加があとに示す効果を実現することができます。 ① 円滑なコミュニケーション、価値観の共有 「5S活動」には、上司と部下の関係はなく、対等な立場で取り組むことができます、あるいはそうしなければなりません。 多くの会社では、「上司と部下の縦のコミュニケーション」「部門間の横の連携」に課題を持っていると思います。 これを打ち破る活動として「5S活動」は非常に有用と思っています。 「5S活動」は全員参加ですので、当然その活動の中で、「対話」が生じます。 最近は電子申請が進んでいて、休暇願いも上司との相談もなく申請、もっとひどい場合は、席が近いのに大事な報告をメールで出して帰宅する、あるいは上司は通達の形でメール連絡のみで直接話をしない状態が見られます。 以前よりも「対話」の機会が減っている、「対話」がし難いようになってきています。 小さな誤解、すれ違いが積み重なると、不信感が高まり、人間関係の悪化、組織の崩壊につながっていきます。 ほとんどの場合は、悪気があってやっているわけではないですが、時には本心でやっている場合もあります。 これを修復するには、「直接の対話」しかありません。ただし、「対話の機会」を持つことは難しいこともあります。 そのため、「対話」が必要な「5S活動」を行うことにより、自然と「対話の機会」が増えて、自然と「本心で話す」ことができるようになります。 ただし、中途半端な、あるいは表面的な「5S活動」は不信感が出て逆効果になることがあります。 「5S活動の中の対話」により、組織内に「価値観が共有」されるようになります。 個人の各々の価値観は尊重しなければなりませんが、ここでは、「対話」によりお互いのことが理解でき、組織として必要な普遍的な価値観である「感謝の気持ち」「思いやりの心」が生じることです。 この価値観の共有がベースになり、様々な活動における基礎が形成されると思います。 ② 判断力(決断力)の向上 「整理」とは、「いらないものといるものを分けて、いらないものを捨てる」ことです。 当然、捨てる前には、判断しなければなりません。 この判断の基準は人によって異なります。そこで、組織としての判断基準が必要になってきます。 最初のうちは、判断に迷うことが多いと思いますが、「5S活動」を進めていくと、組織としての判断基準が明確になってきて、その度ごとに協議することなく、各個人が適切な判断を行うことができるようになります。 「5S活動」で養われた「判断力」は、通常の業務においても活かすことができるようになります。 また、「自分で判断してはいけないこと」もわかるので、対外的な問題も発生しにくくなります。 ③ 組織の問題解決力の向上 上記で示したように「5S活動」で、組織内のコミュニケーションが深まり、組織の判断能力が高くなると、当然に「組織の問題解決力」が向上します。 「5S活動」の中では、「計画し、それを実行し、その結果を評価して、さらに改善するサイクル(PDCAサイクル)」を回し、それがスパイラル的に回り広がることによって成果がでてきます。 また、計画段階では、「目標(あるべき姿)」を設定し、「現状とのギャップ」を明確にして、それを埋める対策を実施します。 これらの一連の内容は、通常の「業務改善」で行う必要があるもので、全ての会社で、明示的にあるいは暗黙的に行われていることと思います。 「5S活動」で真の問題解決力が個人、組織で高めることができれば、会社の業績向上に寄与できるものと考えています。 基本ができてないと、組織は弱いものです。一つのきっかけによって崩れることがあります。また、問題は組織の中で弱い部分で発生します。 基本は簡単なことですが、これを完全に行うまたは継続して行うことは難しいことです。 以前の号でも述べましたが「5S活動が停止するときは、社長(経営者)が5S活動に熱意がなくなったとき」と述べましたが、極論を言うと、「5S活動を止めるときは、会社の発展をあきらめるとき」ではないでしょうか。
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