創業20年、東海エリアを中心に全17箇所の営業所を展開する株式会社アイルロックアンドセキュリティーの代表・伊藤覚様が手掛けるのは、家や自動車等のカギ・防犯用品に関する総合サービス事業。独立起業を果たされたのは、大学卒業から僅か4年目、26歳の頃でした。愛知県豊田市に本社を構え、県内ほぼ全域に加えて三重県や静岡県といった東海エリア、更には東京都にも進出する勢いで業績を伸ばしてきたアイルロックアンドセキュリティーを、変わりゆく時流の中で次のステージへとステップアップさせるために選んだのはM&Aという手法でした。
伊藤様が、いったいどのような理由で、どのような拘りを持ってこの度のM&Aを進めて来られたのか。その全貌をお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社E・S・TEC |
業種 | セキュリティ設備工事業 |
拠点 | 愛知県 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社アイルロックアンドセキュリティー |
業種 | サービス業 |
拠点 | 愛知県 |
譲受理由 | 既存商品・サービスの強化など |
「自分で商売をやると決めていた」新卒4年目で有言実行、独立を果たす
伊藤様が、大学卒業後の就職先として全国展開している大手の鍵交換サービス企業を選んだのは、学生時代に読んでいた起業家向けの情報誌に、当該業界は新規の参入障壁が低いと書いてあったらからだそうで、「会社にも、3年後には辞めて独立します、と言って入ったんです」というほど、ご自身で事業を営むことに強い拘りを持っておられた伊藤様。
その宣言通り、4年目の春には退職され、個人事業主としてスタートを切ったのが今から約20年前の2003年。そこから順調に業績を伸ばされ、その4年後の2007年に法人化を実現されました。
そして今に至るまでの約20年、テクノロジーが劇的な進化を遂げ、あらゆる業界でイノベーションが生まれる中で、伊藤様は「鍵」そのものが、金属製のものからプラスチック製のカードへ、カードから指紋認証や顔認証へと変わっていくのを目の当たりにし、本事業におけるコンピューターや電気工事との繋がりが強まっていくのを感じたのだそうです。
また、鍵交換というサービスを利用する理由のひとつである「防犯」というニーズにおいて、防犯カメラの設置も含めたトータル提案を求められることも多く、「防犯カメラは専門ではないので、詳しいご案内はできません」と顧客に説明する度に、そのもどかしさからますますコンピューターや電気工事のノウハウを自社で持ちたいという気持ちが高まっていったのだそうです。
今のまま“鍵屋さんがやっている、防犯カメラを組み込んだ防犯トータル提案”ではなく、“防犯カメラの専門家であり、鍵の専門家である企業の防犯トータル提案”を顧客に提供していくことで、事業のさらなる拡大を目指したい。そんな想いから始まったのが、伊藤様にとって人生初となるM&Aだったのでした。
登録後わずか2週間で巡り合った、この先何年待っても出会えない理想の相手
「防犯カメラを専門的に扱っている企業の売却案件を見つけたかったのですが、かなりニッチな領域なので簡単にはいかないだろうと思っていて、当初は電気工事の会社を中心に探していました。その手の会社であればエンジニアは揃っているでしょうから、私たちが彼らに防犯のノウハウを伝えればよいと考えていたんです。
ですが、たまたま出てきた案件が、なんと防犯カメラを取り扱っている会社で、買取金額も現実的な値段でした。業績も前向きで経営状況も悪くなく、社長も真面目で誠実な人。こんなご縁は、この先何年待っても出会えないだろうと思えるほど理想的な相手だったんです」と伊藤様がベタ褒めするのは、東海地区の法人を中心にセキュリティ設備の工事業を営んでいる株式会社 E・S・TECとその代表を務める加納様。
「実はM&Aを検討するにあたり、はじめは識学という会社が提供している“M&Aトレーニングサービス”というのを受講していました。これは、経営者自身がM&Aに精通することをゴールに置いた3ヶ月の集中講座なのですが、知識をつけた後に、実際どうやって売却案件を探したらいいのだろうかと思いまして。そこで彼らに質問したところ、バトンズをはじめとした幾つかのマッチングサービスを教えてもらったので、早々に登録してみたら、わずか2週間でこの案件と巡り合えたんです」と笑う伊藤様。
“理想の相手”と確信した加納様の印象について、伊藤様は「加納さんは、職人ならではの拘りと、お客様の要望に応えようとする柔軟性を同時に兼ね備えた、非常にバランス感覚に富んだ方でした。学年も同じで、2回ほど飲みに行って意気投合しましたし、今後のことも考えて、その場に取引先の方も連れてきてくださるなど、気さくで思いやりのある方だと思いました」とのこと。
そんなお二人は、条件の擦り合わせや交渉もスムーズに進んでいったそうで、トップ面談はたった2回というスピード成約となったのでした。
人生初のM&Aで悩んだこと、気をつけたこと、そこから描く次の未来
そんな伊藤様にとって、今回のM&Aは人生初のご経験。そこで、一連のプロセスにおいて悩んだことや気をつけたことは何だったのかを重ねてお伺いすると「最も悩んだことは、どこまでやってよいのかという加減がわからなかったという点です。例えば、加納さんの会社は決算書も綺麗で、借入なんかもなくて、何も誤魔化していないことが伝わってくる内容だったのですが、バトンズのガイドラインでは“デューデリジェンスはやった方がいい”となっていたため、一応、先方にもそれを提案してみたんです。
しかし、彼らが6月決算だったことや、スピードを重視していたことから、結局やらない方向で着地しました。もちろん、彼らのことを信頼できると思ったから受容したのですが、どこまで基本に沿ってやればいいのかが分からず悩みました。
だからこそ、直接会う機会を設けることは意識しました。メールだと良い部分だけを切り取って伝えることも可能ですが、実際に会って話してみると、相手の反応から触れられたくない部分とかも見えてくるので」とのこと。
「あとは、受け入れが決まっている2名の従業員に対する接し方は、特に気をつけるようにしています。今回の買取金は、彼らのスキルに対して支払ったと言っても過言ではありません。そのため、彼らに残ってもらえるように、給与を現在の水準より下げないことはもちろん、将来的に上げられるような体質に変えることも約束しました。
このM&Aを本当の意味で成功させるには、彼らが気持ちよく働けて、最大限にスキルを発揮してもらえるような環境作りが肝だと思っています。現スタッフにも、決して“買収”という言葉を使わず、あくまで“資本提携”であり対等な立場にある仲間なんだ、ということを徹底して伝えています」とも。
今後は、「防犯の専門家」として中部地区で事業拡大を目指しながら、既存事業の延長線上でシナジーが生まれるようなM&Aがあれば、積極的に活用していきたいと語る伊藤様は、その道を極めた情熱的な事業家でいらっしゃいました。
伊藤様と株式会社アイルロックアンドセキュリティーの今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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