創業45年、後継者不在…大阪の内装工事会社が紡いだ「ええご縁」とは
2022年06月23日
2022年06月23日
大阪で一般企業の事務所や物流関係の倉庫のラックを組み立てる有限会社サンコーの代表取締役社長を務めるのは、今年で80歳を迎えるという山田弘幸様。元はサラリーマンだった山田様が、知り合いの方に誘われて創設した小さな内装工事会社は、その真面目で堅実な経営者の下で力強く成長し、今年でなんと45年目を迎えることとなりました。本日は、そんなベテラン経営者の山田様に、情熱を投じて育てたこの有限会社サンコーを譲渡するに至った経緯や、一連のM&Aを通じて抱いた想いを伺ってまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 有限会社サンコー |
業種 | 内装工事・リフォーム業など |
拠点 | 大阪府 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社ニチネン |
業種 | 内装工事・リフォーム業など |
拠点 | 大阪府 |
譲受理由 | 人材不足の解消など |
Photo by Oxana Melis
もともとは一般企業に勤めるサラリーマンだったという山田様が、有限会社サンコーを設立したきっかけは、内装工事を手掛けていた知り合いの方からのお誘いだったそうで、その主な事業内容は企業の事務所や物流関係の倉庫でラックを組み立てるというもの。
「それまで、会社を経営しようだなんて考えたこともありませんでした。ですので、目標とか理想とかを掲げて、そのために頑張ったというよりは、とにかくもう、目の前の仕事をとってきて、それを必死でこなしていくというような毎日でした」と笑う山田様。
創業からこれまでの歴史の中で最も苦労したこと、大変だったことは何だったのかをお伺いすると「一番苦労したのは、人を集めることでした。この仕事は、いわゆる3Kと呼ばれる仕事です。危険で、汚くて、きつい。会社は大阪でしたが、京都や神戸といった近畿一円の仕事も受けていたので、朝8時に施工を開始するためには朝6時に家を出る必要がありましたし、夜勤が発生することもありましたから、なかなか人が定着しなくて。私自身も、晩年は非常にしんどかったです」とのこと。
多くの企業が3年を待たずに廃業するケースも多くある中で、今なお、こうして事業を存続させることができた秘訣はなんだったのか。そこには並ならぬ努力があったのだろうと想像し、事業運営にあたって何を大切にされてきたのかを重ねてお伺いすると「常に安心・安全な状態で作業ができるように、というのは大切にしていました。例えば、体調管理等もしっかりして現場に遅刻しないようすにするとか、怪我や事故が起きないように細部に配慮するとか。お陰様で、大きな事故ひとつなく、ここまでやってこられたことは本当に嬉しく思っています」とのこと。
こうして有限会社サンコーは、丁寧な仕事をしている会社として多くの取引先企業から絶大な信頼を得ながら、順調に成長していったのでした。
株式会社ニチネンの作業現場
そんな山田様が本気で会社譲渡を検討し始めたのは、体調不良がきっかけだったそうです。
「もともと後継者が不在ということもありましたが、一番の理由は私自身の体調不良でした。両肩骨折に加えて、膵臓疾患の疑いがあり、入院を余儀なくされまして。そのため、ここ2〜3年は現場に出ることもできずに、アルバイトを雇って現場を何とか回している状態で、先行きに対する不安が募っていったんです。」
そこで、創業期からのパートナーであり、何年か前から事業継承について相談していた「税理士法人杉井総合会計」の杉井様に仲介役をご依頼されたのだそうです。
「杉井さんはうちのことをよく知ってくれているので、彼が紹介してくれる人なら間違いないだろうということで会ってみた方のひとりが、株式会社ニチネンの代表を務めていらっしゃる服部さんでした。まだ48歳ということでお若いけれども、しっかりしていて活気もある方で、非常に良い第一印象を持ちました」と、山田様がベタ褒めする服部様は、同じく大阪で会社を経営していらっしゃる実業家。その主な事業内容は、オフィスの空間デザインや家具の販売に加えて、建築工事や土木工事も手がけるなど、有限会社サンコーとのシナジーが期待できそうなものでした。
事実、服部様のお知り合いが山田様と面識があったり、共通のプロジェクトに参加した実績があったりと、お二人が相互理解を深めるのに長い時間はかからなかったそうで「決め手のひとつになったのは、服部さんの人柄です。私は、もっと現場を活気づけてあげたいと常に思っていたのですが、歳を重ねるうちに段々とそれが難しくなっていきました。それに比べて、服部さんは若くて活発。彼の下であれば、私の従業員たちもイキイキと働けるだろうと期待させてくれるような方だったんです。本当に、ええご縁に巡り会えて、ホッとしています」と嬉しそうに話す山田様のご様子から、服部様への信頼感がよく伝わってまいりました。
Photo by Jake Nebov
こうして、理想の継承先を見つけるのに成功された山田様に、買い手候補者の方々を絞り込んでいく上で何を大切にされたのかをお伺いしました。
「一番大切だと思っていて譲れないと考えていたのは、今いる従業員たちの生活を守ることでした。彼らは40〜50代の職人で、プライドを持って働いてくれています。だからこそ、彼らの給与水準を維持してくれるのはもちろん、定年まで勤め上げられるように面倒を見てくれる企業でなければ、私の後は任せられないと思っていました。
それに関して服部さんは、40〜50代はまだまだ若い、60代でも活躍できると言ってくれましたし、実際のところ、服部さんのところの従業員も40〜50代が多くいたので、その言葉を信じて託そうと思えました。
あとは、事業を渡すことで相乗効果が生まれるような、同じ業界の会社の方がいいとも思っていました。服部さんの他にも、姫路や愛媛にある会社を2件ほど紹介していただいて、社長の人柄はそれぞれ素晴らしかったんですが、事業内容が内装工事とは全く関係ないものだったので、従業員のみんなが不安になるかもしれないと思ってやめました。
それから服部さんは、新たに若手も雇いながら現場を活気づけると同時に、今いる人たちがより健康に長く働けるように、条件面を拡充したいとも仰っていて。すごく会社を大きくしたいというよりも、いつまでも収益が上がり続けるような安定した会社にしていきたいという考えを持っている方でした。
だから、サンコーのことも大きく変えずに進んでいくつもりだと言ってくださって。そんな服部さんが継承先となることに、うちの従業員のみんなも安心してくれたんで、この人にお任せしようと決心することができました。」
既に、経営者が交代してから1ヶ月が経過しているそうなのですが、あと一年は引き継ぎと応援を兼ねて現場に残るものの、その後は引退して身体を気遣いながら、ゆっくり過ごしたいと笑う山田様は、従業員への思いやりと責任感に溢れた素晴らしい事業家でいらっしゃいました。
山田様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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