東大阪市にある認可外保育園「ぐるーびぃ保育園」は、英語教育を中心としたインターナショナルスクールとしての機能を持ち合わせた、新しいスタイルの保育施設。そこの経営を手掛ける三好様は、もともと京都大学大学院で博士号を取得後、大阪で7年間教員をしていたという異色の経歴の持ち主です。そんな三好様が、どういった経緯で認可外保育園を立ち上げ、どのような変遷を経て事業譲渡へ踏み切ったのか。ご本人に詳しくお話を伺ってまいりました。
譲渡事業 | |
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事業名 | ぐるーびぃ保育園 |
業種 | 教育事業・保育園 |
拠点 | 大阪府 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
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社名 | 株式会社ワーク産業 |
業種 | 人材派遣 |
拠点 | 大阪府 |
譲渡理由 | 新規事業への参入 |
元・短大の教員が始めた認可外保育園、その起業理由は‥
まず、短大の教員をしていた三好様が、なぜ保育園を開こうと思ったのか。起業の理由を一番にお伺いしてみると、「短大の教員という立場は、自分の研究に集中するのが難しい環境だと感じていました。そのため、もっと自由に研究の時間を捻出できる場所を探していたのですが、なかなか見つけられなかったんです。それならば、自分で職場を作ってしまおう、というのが始まりです。正直なところ、どんな事業でもよかったのですが、自分の専門知識を活かしながら、今すぐにスタートできるものを探っていった結果、保育園の経営にたどり着いたんです」と笑う三好様。
聞けば、専攻は「インクルーシブ教育」という分野だそうで、「国籍や貧富の差、障害の有り無しなどを超えて、誰もが等しく一緒にいられる場所は、どうすれば作れるのか」を探求し、「誰かを排除するという社会は、そこで育った人の引き出しが少ないから出来てしまうのではないか」という仮説の下に、子供たちがどんな風に人格を形成していくのかを間近で見られる保育園というものが、ご自身の研究にも役立つのではないかとも考えられたのだそうです。
こうして立ち上げた、英語教育を中心としたインターナショナルスクールとしての機能を持ち合わせた保育園は、自分と異なる価値観を排除するのではなく、それを受け容れることでかっこいい大人になってほしい、魅力的な人になってほしいという三好様の願いから、英語で「かっこいい、すてきな」という意味を持つ「ぐるーびぃ」と名付けられました。
保育行政の改変という逆境の中、経営のプロへの譲渡を決断
そんな三好様が、保育園の譲渡に踏み切ったのにはいくつかの理由がありました。
「まず、第一には体力的な問題がありました。保育園の営業時間は、月曜から土曜の朝7時半から夜7時までです。もちろん、保育士を雇っていましたが、人件費をそこまでかけられなかったため、私が自分で補う部分も多くありました。もしも私が倒れたら、保育園を開けられなくなるという状態で、やってきたわけです。幸い、この5年間は一度も倒れることなく続けられましたが、それは結果論に過ぎないので、このままではダメだと思っていました。
加えて、空いているスペースを有用活用してプラスの売上を得るべく、週3回のペースで夜9時まで学習塾をやっていたので、そのことも体力的に大きな負荷となりました。実際、最近では体調もあまりよくない状態になっていました」と苦笑いをしながら、続けて保育行政の改変が引き起こした保育現場の実情も話してくださいました。
「待機児童問題を受けた一連の行政改変は、認可外保育園にとっては厳しいビジネス環境を作る結果となりました。現状、助成金や補助金を一切受けられず、保護者の方からの保育料だけで運営しなければならない認可外保育園は、事業を継続するのが非常に難しい状態になっています。事実、こうした一連の変化によって周辺の同業者たちは、企業主導型の保育園に変わったり廃業したりしてしまいました。私のところも例に漏れず厳しい状況だったので、経営基盤のしっかりした人に引き継いでもらった方がよいだろうと考えるようになったんです」
こうして、三好様の中で事業を誰かに引き継ぎたいという思いが芽生える中、法人化して、一緒に事業をやりませんかという誘いが直接あったりもしたそうですが、「他の承継先も探してみませんか」という商工会議所の事業継承部の方からの提案もあり、バトンズを利用した継承者探しが本格的にスタートしたのです。
「お金の話よりも、私自身の話をききたい」と言ってくれた、最高のマッチング相手
バトンズ登録後に入ってきた問い合わせの数は、およそ15〜20件。そんな数多ある買い手候補の中から三好様が選んだ譲渡先は、株式会社ワーク産業の河合様でした。そこで、河合様に選んだ決め手となったのは何だったのかをお伺いすると、「実際に面談をしたのは5〜6人だったのですが、他の候補者の方々が収支状況や投資回収シナリオの話に終始する中、河合さんだけは違っていたんです。彼は、事業や数字の話よりも、なぜ研究者なのに事業経営をしているのかとか、どんな研究をしているのかとか、そういった私自身に関する話ばかりに興味を示したんです。そして、本来は自分の研究時間を捻出するために保育園経営に挑戦したのだという話をすると、是非、それを応援したいと言ってくれたんです。そんな河合さんのことを、私は非常に面白い方だと思いましたし、この方とだったら一緒にやっていけると思ったんです」とののこと。
そんな三好様に、最後に今回のM&Aを終えた感想をお伺いすると「事業譲渡ということに関して何ひとつわからない状態だったので、今回のように商工会議所やバトンズさんのような第三者に話を聞きながら、ひとつひとつエビデンスをとって物事を進めることの大切さを実感しました。もしもそれをやらずに最初の方との話を決めていたら、譲渡金を得ることもできなかったでしょうし、 後になって“だまされた”と感じて後悔していただろうと思います。また、認可外保育園が厳しいビジネス環境にあるのは事実なので、この事業はリスクこそあれども価値などないのではないかと考えた時期もありました。でも、こうして譲渡金が支払われ、自分の創った事業に価値があったことも証明できたので、今はとても満足しています」とのこと。
最終的に事業譲渡が叶っただけでなく、ご自身の研究を応援してくれる良き理解者にも同時に巡り合い、最高のマッチングを果たした三好様は、とても晴れやかに微笑まれていらっしゃいました。
三好様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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