岡山県に所在する、一見したところ学習塾とは思えないオシャレな空間に、カフェのような椅子や照明が印象的なのは、グランガルル株式会社の代表取締役 竹岡様が立ち上げた個人指導塾。美大受験生向けの塾を営むデザイナー兼経営者が、アトリエに通う生徒たちの一般科目の学習サポートのために開いた本塾を、どのような思いで手放すに至ったのか。そして、売値相場の3倍で成約したというM&Aの進め方とは、どのようなものだったのか。優しい笑顔が印象的な竹岡様ご本人に、直接お伺いして参りました。
譲渡企業 | |
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社名 | グランガルル株式会社 |
業種 | 学習塾 |
拠点 | 岡山県 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
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社名 | 合同会社Prima |
業種 | 教育サービス業 |
拠点 | 長野県 |
譲渡理由 | 新規エリアへの進出 |
美大出身のデザイナーが手掛ける、カフェのようなオシャレな学習塾
もとは大手電機メーカーの家電デザイナーだったという竹岡様は、数年の勤務を経て独立を果たし、当時としては岡山県で唯一だったフリーランスのデザイン事務所を立ち上げられます。そして、サラリーマン時代に周囲から「教えるのがうまい」と言われていたことや、ご自身も他人に教えるのが楽しいと感じていたことから、美大受験生のためのアトリエを開講することを決めたのが、今から7年前。
はじめは、主に高校生を対象に、美大受験に必要なデザインや色彩、構成といった実技試験を突破するための知識や技術を教えていた竹岡様。丁寧な指導が評判を呼び、順調に生徒数を伸ばしていったそうです。
そうして多くの受験生を美大に送り出す中で、竹岡様にはひとつのもどかしい感情が湧いてきます。それは、「実技試験のための勉強時間と、英語などの一般科目のための勉強時間のバランスをどう取ってあげればよいのか」ということでした。
どんなに「実技試験」で良い点数が取れたとしても、合否を決める要素の5割は「一般科目」であるため、そちらを蔑ろにするわけにはいきません。そこで、どの生徒も並行して学習塾に通うそうなのですが、学習塾側としては、一般科目で高得点が取れるように最大限の時間を勉強に費やしてもらいたいと考えますし、アトリエ側も実技試験対策に最大限の時間を費やしてもらいたいと考えているため、生徒自身は両者の板挟み状態となり、どうやってバランスを取ればいいのか分からなくなってしまうのだそうです。
そんな生徒達の悩みを解決するために、自ら学習塾を立ち上げられた竹岡様。アトリエとフラットな視点で連携を取れるようになり、より強力なサポートを実現できるのではないかと考えたところからの創設でした。こうして開講された学習塾は、デザインを教えるアトリエの姉妹校ということで、カフェのようなオシャレな空間に仕上げられました。
売値相場の3倍で成約!元・家電デザイナーの精緻なM&Aスタイルとは?
そんな経緯からスタートした学習塾事業でしたが、本業の方が急成長を始めたことで、経営資源の選択と集中を迫られた竹岡様は、サブ事業にあたる本塾を譲渡するという決断を下します。
M&Aそのものは初めてだったそうですが、もとより家電製品のデザインを手掛けていただけでなく、経営者としてのコスト感覚もお持ちだった竹岡様は、机や椅子ひとつひとつまで丁寧かつ詳細に資産価値を計算し、写真なども撮影して現物がわかるようにした上で、同じ教室を再現しようとした場合の総コストを算出。こうした細やかで手触り感のあるアプロートが買い手候補の方々の心を掴み、売値相場の3倍近い提示価格だったにもかかわらず、バトンズに登録後すぐに5件もの問い合わせがあったそうです。
「私の場合は、早く本業に集中したかったので、早期成約を目指していました。なぜなら、アトリエというビジネスモデルの特性から、春の集客時期にあたる1月〜3月は次の1年間の業績を左右する重要な期間だからです。これは学習塾にとっても同じなので、買い手候補の方々も早く商談を進めたいと考えているケースが多く、このことは大変助かりました」そのように話す竹岡様が最終的に選ばれたのは、合同会社Primaの滝沢様。
「滝沢さんは県外の方だったのですが、問い合わせの後、すぐに会いに来てくれて。ものすごく熱意のある方で、どうしても自分に譲ってほしいと口説かれまして。もともとは、2月末までには受け渡せれば有難いと思っていたのですが、結果的に、12月末に全てを先方に移管するというスピード感で進めることができました」とのこと。
「正直なところ、相場より売値価格を高めに設定していたので、そう簡単に買い手は見つからないだろう、と思っていました。ですが、こんなに早く決まったというのはもちろん、“事業を買おう”と考えている人が、こんなに多くいるのだということに驚きました。そして、希望価格での譲渡が叶ったことから、自分のやってきたことは間違っていなかったんだと感じることができ、そのことはとても嬉しかったです」とも。
そんな竹岡様に、譲渡先を決めるにあたって一番重視した条件は何だったのかをお伺いすると「実は、金額については多少、希望価格と差がついても許容しようと思っていました。ですが、唯一の正社員である塾長の雇用だけは、今の条件のままで受け入れていただきたいと思っていて、それは何を替えても譲らないと決めていました。また、その塾長と相性の良さそうなお人柄を持った方を選ぶようにもしていました」と笑う竹岡様は、理想に近いM&Aを実現されて、とても安心されたご様子でした。
あっという間に拡大した人気の図工教室、世界を視野に入れた今後の展望
こうして円満にM&Aを終えられて、次はどんな未来を描いていらっしゃるのか、最後に竹岡様の今後の展望をお伺いすると「本業であるアトリエは、当初、高校生を対象にしていたものの、徐々に中学生も招き入れるようになり、もっと小さな子供たちには図工教室として、デザインやクリエーションに触れる機会を提供する形で事業を拡大していきました。それと同時に、毎年ひとつずつ拠点を増やしていった結果、気がつけば岡山県に6拠点もアトリエを構えることができるようになりました。今後は、これまでの経験を活かして、独自の予約システムを構築したり、教室の運営ノウハウや教材管理法をパッケージ化したりして、岡山県内にフランチャイズ展開をしていきたいと考えています。特に、図工教室は美大受験と異なりターゲットも広いので、いろんな可能性を秘めていると思っています。今はコロナの影響で止まってしまっているのですが、北欧・デンマークの子ども教室との交換留学なども計画しているんですよ」とのこと。
常に穏やかな笑顔を浮かべながらも、その頭の中には壮大な夢が広がっていて、聞いているこちら側も自然と笑顔になれるような、そんな事業をデザインされる竹岡様は、真の意味で優れたデザイナーでいらっしゃいました。
竹岡様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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