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農林水産業が抱える課題と今後の展望について解説

2022年03月10日

農林水産業は日本の素晴らしい食文化や美しい景色を支えており、世界から高く評価される日本の自然や食文化を形づくる、重要な産業です。しかし就業者が減少し、深刻な状況に陥りつつあります。

今回は、農林水産業が抱える課題について詳しく解説します。また、今後どのような工夫をすれば農林水産業が活力を取り戻せるのかを考えていきます。

農林水産業の大きな課題とは

まずは農林水産業の現状を見ていきましょう。そもそも農林水産業とはどのような産業なのか、どのくらいの人数が就業しているのかを具体的に紹介していきます。

 

農林水産業とは

農林水産業とは、農業、林業、水産業を合わせた産業のことを指します。

 

・農業:作物や家畜などを育てて、食べ物を生産する産業

・林業:森林を育てて木材を生産する産業

・水産業:海や川で魚をとったり、加工したりする産業

 

どの産業も、日本の豊かな暮らしを支えるために必要不可欠な仕事だといえるでしょう。

 

就業者数の現状

農林水産業は今、就業者の減少という深刻な事態に見舞われています。新規の就業者は微増傾向にあるものの、従業者の高齢比率が高いため全体として労働者が減っています。

2018年に漁業を対象にして行われた調査では、漁業労働力である男性のうち38%が65歳以上であることがわかっています。現在はそれでも15万人ほどの就業者がいますが、農林水産省のデータに基づくシミュレーションによると、2038年には約8万人にまで減少する見込みです。

そのうえ農林水産業は高度な技術を要し、習得が難しいにも関わらず所得が安く、設備にお金をかけないと始められないため、新規参入者にとってはハードルが高いものです。農林水産業を存続させるためには、若い新規就業者を少しでも多く獲得する必要があります。

 

コロナ禍で明らかとなった生産基盤の脆弱性

慢性的な人手不足状態となっている農林水産業は、新型コロナウイルスの影響でさらに打撃をうけました。外国人労働者が入国できず人手不足に陥ったためです。

これによって、外国人労働者が行っていた植え付け作業や収穫作業が遅れ、収益は減り、生産基盤が不安定であったことが示されました。

また、生産面だけでなく消費面でも課題が発生しています。2020年の1回目の緊急事態宣言では外食市場が6割減となり、食料支出金額も減少、需要の落ち込みに連動して産物価格も大きく下落しました。特に外食で用いられる品目での減少が顕著となり、不安定な収益は生産者の不安を広げることとなりました。

 

農林水産業における分野別の課題

農林水産業は深刻な課題に直面しています。問題を解決しサステナビリティを高めるためには、どのような取組みができるでしょうか。分野別に解説していきます。

 

農業では家庭調理向けの産物が成長率を左右する

先述のとおり、農業では新型コロナウイルスの影響で外食に関わる品目の流通が大打撃を受けました。一方で家庭で料理をする機会は増えています

農林水産省によると、「2020年4月以降、それ以前と比較した、自宅における食事頻度の増減」という項目で54.3%の人が「やや増えた」または「かなり増えた」と回答しています。

また、輸出においては2021年1〜4月の輸出総額は対前年同期比32.3%増という好数値を出しており、家庭調理に向いた産物には需要が集まっているといえます。

外食産業のための生産が苦戦している今こそ、家庭調理向けの産物を作ったり、ECサイトやインターネット通販を介した販売を行なったりといった、切り替えが求められています

 

林業は新しいコストの削減方法を模索する必要がある

林業では、外国から輸入されてくる安価な外材との競争が課題となっています。価格の低迷で利益率が下がった結果、コストの削減が大きな問題となっています。

高性能な機械を導入して生産の効率化を進めることも可能ですが、機械は大型で価格が高いため普及は全体の3割にとどまり、進んでいません。また、コスト削減には林道や作業道の開設も効果的ですが、これも施行が難しいのが現状です。

コスト削減を進めるにあたり、多くの人が取り組めるような新しい対策の方法を模索する必要があるでしょう。

 

水産業の労働力不足をDXで改善できるかが肝

先述のように漁業の就業者数は、高齢化の進行によって減少傾向にあり、このままでは将来が危ぶまれる状況です。

人材の確保を効率よく進めるためには、人材確保のDXを進めることがポイントとなるでしょう。人材を人の手で探していくことは大変なことですが、マッチングサイトや省力化技術を導入することで、現場の負担を減らしながら新しい労働力を見つけることができます。

 

課題解決に向けて農林水産業DXを推進

農林水産業の課題を解決するために導入したいのが、DX(デジタルトランスメーション)です。DXとは、IT技術を活用することで生活やビジネスに変革を起こす取り組みを指します。

最近では農林水産業がDXを推進し、IoTやスマート農業への変化が加速しています。導入が進めば生産活動の収益性が高まり、労働力不足の改善にも役立ちます。

 

IoTやスマート機材で労働力不足をカバー

農林水産省が推進しているDXの一例を「スマート農業実証プロジェクト」を用いて紹介していきます。

スマート農業実証プロジェクトとは、2019年から開始した農業DXの実証実験で農業の工程にロボット、AI、IoTなどの先端技術を組み込み、生産性の向上を検討する取り組みです。。

たとえば収穫時の収量予測を立てるためにドローンを活用し、労働時間の2割を削減した事例があります。余った時間を取引先の開拓に充てられるようになった結果、単価が4割も増加し、収益性を大きく高めることにつながりました

このように農林水産業のDXは、生産性と収益性の両方を飛躍的に向上させることがわかっています。

 

DX普及率の増加が成長ポイント

DXは、行き詰まった農林水産業にとって期待の星です。しかし、現時点では実証実験の段階のものも多く、DXに関する専門知識や技術を持っている人材が少ないという課題もあります。今後の農林水産業は、DXがどれだけ進むかにかかっていると見ることもでき、今後ますます注目を集めるでしょう。

 

農林水産業に関するM&A

農林水産業業界は、引き続き政府が積極的にDXを推進していくため、業界に新規参入したいと考える人も増えてくるのではないでしょうか。

DXに関する知識を持っていることは重要ですが、他業界から参入する場合は、特にノウハウの蓄積がポイントとなります。ノウハウの蓄積には時間がかかり、利益を出すまでの資金確保も難しいといわれています。そこで選択肢として考えたいのがM&Aです

農林水産業界のM&Aの手法

農林水産業の現場では、高齢化・後継者不足を理由に、農業を継続できない人が多く存在します。そのような課題を抱える農業法人を、別の農業法人や異業種の法人が買い取るというケースが多くあります。

 

M&Aの動向について

農林水産業は、新規事業参入しやすくM&Aが盛んな産業です。中でも農業では、2017年に施行された「農業競争力強化支援法」により事業参入が支援されており、税制の特例・金融支援などが受けられるため、他業界からでも参入しやすい状態となっています。

日本の農業・水産業を持続可能にしていくために、制度も変わり続けています。今後も農林水産業におけるM&Aは活発に行われることが予想できます。

 

まとめ

農林水産業は高齢化・後継者不足をはじめ、深刻な課題を抱えています。日本の重要な産業を保全するべく、政府はさまざまな支援をして産業の存続へのアクションを起こしてきました。

他業種から農林水産業への参入を希望する際は、より効率よく事業を進めるためにM&Aを検討するのが良いでしょう。とくに現在は、他業種であっても参入しやすい条件が整えられています。

バトンズでは、農林水産業関連のM&Aを多数掲載しています。専門家のサポートを受けながら、理想的なM&Aを実現してみてはいかがでしょうか。

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