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ベンチャー企業はIPOをどう捉えるべきか。それぞれのメリット・デメリット比較

2021年12月26日

ベンチャー企業の創業者の中には、IPOを夢見て経営に励んでいる人もいるかもしれません。以前から、IPOはベンチャー企業にとって目標のひとつとなっています。しかし、ビジョンがないまま、なんとなくIPOを目指すというのは、あまり良い経営方法ではありません。

そもそもIPOは、ベンチャー企業にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。また反対に、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

本記事では、IPOを目指すべきなのか、それとも別の戦略を考えるべきなのか、メリットとデメリットをご紹介させていただきます。それぞれのベンチャー企業にとって最適な経営戦略を考える際のヒントに活用ください。

IPOとは

IPOとはInitial Public Offeringの略称で、日本語にすると「新規株式公開」という意味になります。そもそもこれは何のことでしょうか。

新規株式公開(IPO)について

東京や名古屋などの大都市圏には、株式を管理する証券取引所があります。IPOというのは、今まで上場していなかった企業が新たにこの証券取引所へ株式を公開することです。経営者などが保有していた株式を売り出して、一般の投資家が購入できるようにするのです。
資金調達などを目的としてIPOを目指すのは、以前からベンチャー企業の経営者にはよく知られた経営戦略となっています。

ベンチャーの定義

次に、ベンチャー企業についても説明しておきましょう。

ベンチャー企業という言葉は広く浸透しておりメディアでも頻繁に使われている言葉ですが、具体的にどのような会社を指すのでしょうか。実は、明確な定義がある訳ではないのですが、一般に新しいビジネスを展開する小規模な企業をベンチャー企業と呼んでいます。

ベンチャー企業とスタートアップ企業の違いについて

同じく、ベンチャー企業と似たような文脈で使われる言葉に「スタートアップ企業」というものもあります。ベンチャーとスタートアップは、一体なにが違うのでしょうか。

「ベンチャー」という言葉はそもそも日本でのみ使われている和製英語のため、海外では伝わりません。一方、スタートアップは英語圏で幅広く使われている名称です。日本ではどちらも同じようなニュアンスで使われることがあるため少しややこしいですが、会社の成長速度や事業フェーズによって使い分けられることが増えています。

一般的に、革新的なビジネスを短期間で急激に成長させて利益を上げることを目指す形態は、スタートアップと呼ばれます。また、新しいビジネスを中長期的に育てて拡大させていくことを狙っている形態はベンチャーと呼ばれています。

この2つは必ずしも相反するものではありません。どちらかといえば、ベンチャーの方が比較的幅広い意味を持つ名称であり、「スタートアップのベンチャー企業」のように表現されることもあります。

対して、「新しいビジネスモデルを開拓していて、現在成長段階にある比較的小規模な企業」をスタートアップ企業と理解しておけば問題ないでしょう。

ベンチャーにとってIPOをするメリット

ベンチャーにとって、IPOには様々なメリットがあります。どういった点か見ていきましょう。

メリット1: 社会的信用力の向上

IPOの大きなメリットは、社会的信用力の向上です。

企業は一般的に、上場することで社会的な信用度が増します。従来からの取引先がより良い条件での取引に応じてくれるようになったり、今まで取引に前向きではなかった企業が商談に応じてくれるようになったりします。

上場企業というステータスは安心感にもつながりやすいため、個人向けのビジネスであっても、顧客獲得がしやすくなるといったメリットがあります。また、知名度が上がることで注目度も増すため、上場前よりも多くの人にビジネスを知ってもらいやすいという面もあります。

IPOを通して社会的な信用力が向上すれば、企業の経営にポジティブな影響があるのです。

メリット2: 資金調達がしやすくなる

IPOの目的の一つとなることも多いのが、資金調達です。

上場すると、資金調達力が向上します。株式を発行して、一般の投資家から資金を調達することができるようになるからです。
非上場企業であれば、まとまった資金が必要な場合は、銀行などの金融機関に融資をしてもらう間接金融が主流の調達方法となります。しかし、上場企業では、株式市場から直接資金を調達することも可能になります。つまり、まとまった資金を調達するための手段が増えるということです。

メリット3: 株価が高騰する

IPOにより、公開した自社の株価が上昇する可能性が高くなります。新規で上場する株式は多くの場合、上場前の公募価格よりも取引開始後の価格の方が高騰する傾向にあります。新規上場株が一般の投資家から高い人気を集めているのは、そうした理由があるからです。
上場する企業にとっても、株価の上昇には多くのメリットがあります。資金調達がしやすくなることで経営がより安定し、さらに企業イメージが向上するなど、事業の継続にプラスとなる影響があるのです。

メリット4: 現金収入を得て設備投資ができる

株式を一般に公開することで、現金収入を得ることができます。事業を拡大するために、設備投資は不可欠です。IPOを実現させると一般の投資家から多くの資金が集まり、それを元手にして大規模な設備投資をすることが可能になります。ビジネスをひとつ上の段階に成長させるためにも、大きなメリットとなります。
また、資金調達ができるのはIPOの実現時だけではありません。上場後も必要な時に株式を発行して、投資家から資金を集めることができます。会社の事業計画に合わせて資金調達を行い、経営基盤を安定させることができるのです。

メリット5: 社員のモチベーションアップ

企業の上場は、従業員のモチベーションアップにもつながります。ベンチャー企業の経営者にとってIPO実現は大切な目標ですが、従業員にとっても喜ばしい話です。最前線で日々奮闘する従業員にとっては、上場により会社の知名度や信用力があがることでより働きやすい環境ができるでしょう。

また、IPOを目指すベンチャー企業は、従業員へストックオプションを付与することもできます。ストックオプションは、会社の株式を予め定めた価額(権利行使価額)で将来取得する権利を付与するインセンティブ制度であるため、付与された従業員は、IPOを一緒に目指すことをモチベーションにして事業に貢献してくれることを期待できるでしょう。

さらに、優秀な人材を確保しやすくなるというメリットもあります。就活市場や転職市場では、上場企業であるか否かがひとつのバロメーターとなることも多いからです。人材確保の難しさは多くのベンチャー企業の課題でもありますが、IPOをすることで採用活動もやりやすくなるのです。

ベンチャー企業にとってのIPOをするデメリット

このように、IPOには多くのメリットがありますが、それ相応に十分理解しておくべきリスクも存在します。ベンチャー企業はそうしたデメリットも知ったうえで、IPOを目指すかどうかを検討しましょう。

デメリット1: コストがかかる

IPOを実現するためには、費用や時間など莫大なコストがかかります。上場には様々な厳しい条件があるからです。

IPOを目指すためには、経営基盤の強化やコンプライアンス遵守の環境整備などの管理体制の構築を行い、社内体制を大幅に変更する必要があります。内部制度の構築や変更、書類の作成、人員の確保、外部コンサルタントの利用、監査法人との契約など、様々な費用を支払わなければいけないだけでなく、平均すると数年単位の時間がかかります。莫大なコストをかけたにもかかわらず、結果として上場の条件を満たすことができなかったためにIPOを諦めざるを得なかった、というケースも多々あります。

また、上場したら終わりという訳でもありません。上場を維持するためには、その後も引き続き様々なコストが発生します。上場企業であり続けるというのも、決して楽ではないのです。

デメリット2: 株主に対しての説明責任が生じる

上場すると、一般投資家などの株主に対して経営の説明責任が生じるようになります。説明をおろそかにすると投資家からの信頼を失ってしまい、結果として株式市場で継続して資金調達を行うことが難しくなってしまいます。経営が上向きのときは良いですが、経営状況が悪化した場合や見通しが外れてしまった場合など、逆境において不特定多数の株主に対して説明を行うのは心理的にも大変な仕事でしょう。

さらに、常に適切な情報開示を行わなければならず、株主総会を開催したり有価証券報告書などの報告書を作成したりと新たな手間や費用がかかることを覚悟しておかなければいけません。

デメリット3: 経営の自由度が下がる

IPOを選択すると、経営の自由度は下がってしまいます。新たにステークホルダーとなった多数の株主の意見を尊重しなければいけないからです。今まで独断で経営の方向性を決めてきた経営者も、株主と協議したり株主に対して判断の理由を説明しなければいけなくなるでしょう。

また、株主からは、短期的な利益の追求に対するプレッシャーが大きくなりがちです。そうした声に負けてしまうと、中長期的な視点での経営や将来的なビジョンをおろそかにしてしまう結果にもなりかねません。
自身の経営の裁量が小さくなることに大きな抵抗がある場合は、IPOを検討する前に今一度考え直してみるべきかもしれません。

デメリット4: 敵対的買収の危険

株式を公開することで、敵対的買収(敵対的TOB)の危険性も伴います。敵対的買収とは、経営者の事前の同意を得ることなく多数の株式を購入して、実質的にその企業の経営権を握ってしまうことです。日本ではそれほどメジャーな手法ではありませんが、まったく事例がないという訳でもありません。敵対的買収をされると、経営の支配権を失うという最悪の結果になってしまいます。
上場する場合には、そうしたリスクもあるということを理解しておかなければいけません。

 

M&AでのEXITが人気な理由

IPOを視野に入れて経営を進めるベンチャー企業はこれまで多数存在しますが、ベンチャー企業が目標とすべきなのは、決してIPOだけではありません。近年ではM&Aを目指す経営者も多く、EXITの手法としてもM&Aが注目されつつあります。ここでは、IPOと比較してM&Aについても見ておきましょう。

未上場でも資金は集まる

大規模な資金調達をするために、必ずIPOをしなければいけないという訳ではありません。M&Aも資金調達の手段になり得ます。

多くの場合、ベンチャー企業のM&Aは大企業が買い手となって提携関係を結んでいます。その結果、上場しなくても会社の信用力を向上させることができ、銀行などの金融機関からまとまった額の融資を得ることができる可能性が高まります。

また、買い手の企業が事業の将来性に大きな期待をして、多くの経営資金を事業に割り当ててくれるといった場合もあります。すると、金融機関に頼ることなく事業拡大のための資金が手に入るのです。

このように、上場しなくてもM&Aによって資金調達力を向上させることができます。特に大企業と提携することができれば、資金の調達はより容易になるでしょう。

 

M&Aを使ったEXITによる成長性

創業者が利益を確定させるためのEXITの戦略として、IPOではなくM&Aが検討されるケースが実は増えています。EXIT戦略としてのM&Aを使うメリットは、IPOと比較して圧倒的に短期間で実施できる可能性が高いという点です。M&Aは、IPOをする際に必要な様々な手続きが基本的に不要となり、買い手と売り手の間で合意すれば、内部体制などを変えずに現状のままで売却できるからです。

そして、何よりM&Aを行うことによってビジネスの成長を期待することができます。他社と提携することでシナジー効果が生まれるからです。技術力の向上や売上の増加、コスト削減などを導くシナジー効果は、M&Aならではのメリットです。
一般的にIPOによる事業成長は、資金調達力を向上させて大規模な設備投資を行い、その結果としてビジネスを拡大させる、というプロセスを自力で行わなければなりません。

ところが、M&Aを行い他社と提携することができれば、お互いの強みを掛け合わせることでシナジー効果を発揮し、自社だけでは得られなかった飛躍的な成長を遂げることも可能です。そのため、競争の激しい市場で優位性を高めようと、M&Aを目指すベンチャー企業が増えているのです。

ベンチャー企業はIPOすべき?

ここまで、ベンチャー企業にとってのIPOのメリットとデメリット、そしてM&Aという手段があることをご紹介しました。その上で、ベンチャー企業は、どういった状況であればIPOを選択すべきといえるのでしょうか。

IPOを選択すべき場合

今後も持続的にビジネスが拡大していくと自信をもって想定しているのであれば、株式の公開は良い選択肢となりますので、IPOの検討をオススメします。中長期的に株価が上昇すると、会社の経営にますますポジティブな影響を与えるからです。

また、IPOはM&Aとは異なり、上場時にすべての株式を一気に手放してしまうわけではありません。段階的に株式を売却するので、事業が成長基調にあり株価が上昇している場合であれば、結果として創業者はより多くの利益を手に入れることができます。

事業の長期的な拡大を見込んでいるベンチャー企業は、前向きにIPOを検討してみると良いでしょう。

あえて、IPOを選択しない場合

現状に対して、不満や問題を感じていないのであれば無理をしてIPOをする必要はありません。事業の拡大を目指しているため資金の調達をしたい、などという場合はIPOが選択肢の一つとなりますが、必要な投資が十分にできており、このまま安定した経営を続けたいというのであれば、IPOを真剣に検討する必要はないでしょう。

むしろ、莫大なコストをかけてIPOに向けた準備を行い、IPOに失敗してしまったり、上場した結果、経営の自由を失ったりするほうが経営にはマイナスとなってしまいます。IPOには高いハードルがあり、リスクもあるため、資金調達の必要性やIPOの欠かせない将来ビジョンがないような場合は、あえて“挑戦をしない”という選択もあります。

現状の範囲で設備投資を行い、希望通りに事業を展開できているのであれば、今の体制で非上場のまま、安定的に経営を続けていけるような戦略を検討するほうが懸命といえるでしょう。

ベンチャー企業とIPOに関するまとめ

いかがだったでしょうか。多くのベンチャー企業創業者にとって、IPOは大きな憧れであり、目指す目標の一つです。手間やコストがかかり、リスクも生じますが、将来性のあるビジネスを展開していて、事業をしっかりと成長させていきたい場合、高いハードルを越えてでもIPOを目指す価値と魅力があります。

一方で、事業成長のための選択肢は、IPOだけではありません。近年、日本でもベンチャー企業のM&Aが少しずつ盛んになってきています。そして、ベンチャー企業にとってのM&Aの魅力もご紹介しました。

自社が成長するためにいま何が必要なのかをしっかりと把握し、より自社の経営方針や将来のビジョンに合った最適な手段を選ぶために、本記事を参考にしていただければ幸いです。

 

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