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航空業界の今後の展望は?現状を踏まえ徹底解説

2021年12月16日

2019年の冬から世界的な感染症拡大によって、深刻な打撃を受けた業界の1つが航空業界です。

感染症拡大防止の観点で旅行や出張が制限されたことで、航空業界は軒並み深刻な経営難に直面しました。大手航空会社もかつてない規模の赤字を公表し、業界全体に危機感が漂っています。今回は、コロナ禍の渦中にある2021年現在、国内外の航空業界はどのような状況にあるのか、現状を徹底解説していきます。

日本の航空業界の現状(2021年11月現在)

はじめに日本国内の現状を見ていきます。国内では緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置」が発令されることで、多くの人が移動の自由を制限されてきました。航空業界を取り巻く環境は、感染症拡大以前とは大きく変わっています。

感染症による大打撃

日本国内では、2020年4月に全国的に緊急事態宣言が発令され、人々の生活が一変しました。都道府県をまたぐ移動の自粛が呼びかけられ、多くの人が出張や旅行を取りやめたのもこの時期からです。

この影響で、空路を利用して移動する人が激減します。世界的にも感染が拡大し、各国がウイルスを自国に入れないための水際対策をとった関係で、海外へ行くことへのハードルが高くなりました。当然旅客機の利用は激減し、国内線も国際線も、大きな打撃を受けることになりました。

ANAとJALで合計「約8000億円」の赤字

自粛ムードが世の中に定着した結果、観光業界や航空・鉄道業界は、過去に類を見ないほど厳しい状況に置かれ、深刻な赤字を抱えることになりました。

2021年3月期の決算では、ANAホールディングスは約5,100億円の赤字、日本航空(JAL)は約3,000億円の赤字を公表しました。日本のフルサービスキャリア2社の赤字は、合計8,000億円を超えるという危機的な事態に陥りました。

運行便数を大幅に減らした両社は、従業員の雇用を守るために、地方公共団体やコールセンター、店舗での接客業務などに「出向」という形で社員を派遣しています。臨機応変な対応をとりながら、コロナが収束する日を待ち望んでいます。

 

世界の航空業界の現状(2021年11月現在)

次に、国外の航空業界の状況を見ていきましょう。危機的状況に置かれているのは国内と同様で、1兆円近い赤字を公表したり、資金調達ができずに経営破綻となってしまったりと、深刻な状況に陥る企業が多く見られます。

米国の航空業界の現状

アメリカは2020年の2月2日から、国制限措置を開始しました。過去14日間を遡って中国への滞在歴がある外国人について、入国を停止しました。さらに3月13日には、中国だけでなく欧州の多くの国も制限対象に追加するなど、入国制限措置の対象となる国を、徐々に拡大していきました。

アメリカは国内の感染状況が深刻でした。地区によっては爆発的な感染拡大となり大きな不安に直面したアメリカでは、国内移動であっても飛行機を利用する客は大きく減少しました。主要航空会社をはじめ、軒並み大きく業績を落とすことになりました。

2020年第1四半期決算では、アメリカン航空は22億ドルの赤字(前年同期は1.9億ドルの黒字)。ユナイテッド航空は17億ドルの赤字(前年同期は2.9億ドルの黒字)。デルタ航空は5.3億ドルの赤字(前年同期は7.3億ドルの黒字)と、深刻な状況です。第2四半期決算においても事態は回復せず、前述の3社それぞれが、21億ドルの赤字、16億ドルの赤字、57億ドルの赤字を公表しています。

フランスの航空業界の現状

フランスでも、アメリカと同様の危機的な状態が続いています。ヨーロッパ最大の航空会社グループであるエールフランスKLMは、2020年4月に深刻な数字を公表しました。グループ全体での3月の旅客数を前年同月と比較したところ、旅客数が56.9%に減少していたとのことです。

未曾有の事態の中で迎えた2020年第1四半期決算では、18億ユーロの赤字(前年同月は3億ユーロの赤字)を公表しました。7月には、向こう3年間での約7,600人の人員削減を行う見通しを発表し、業界に危機感が走りました。
この状況に付随する形で、航空機製造企業にも苦戦の波が広がっています。欧州の大手空機メーカーであるエアバスは、従業員全体の約11%にあたる15,000人の人員削減を行うと発表しました。過去に類を見ない規模の事業再編計画に、欧州各国の労働者が反発するという事態になりました。

参照:財務省 コロナ禍での航空業界とその後

日本の航空業界の今後の課題(2021年11月現在)

世界規模で窮地に追い込まれている航空業界が深刻な状況を打破していくためには、どうしたらいいのでしょうか。今後与えられうる課題を、日本の航空業界の視点で考えていきます。

コロナによる打撃からの回復

ワクチンや特効薬の開発によって、コロナの収束に向かって医療業界が動いています。かつてのように自由な行き来ができる世界が戻ってきたときに、いかに業績のマイナスを素早く回復していくかというのが、現在の航空会社に課されたミッションの1つです。

JALやANAのようなフルサービスキャリアでは、LCCのように一部のサービスを有料化することで赤字の補填に取り組むなど、収束後、利用客に選ばれる魅力的なプランを提示するためにどのような工夫ができるのかという課題があります。

航空業界のコロナ後の課題は「環境対策への対応」

ただ、コロナウイルスとは別に、無視することのできない重要な課題があります。それは、CO2排出量の軽減です。
昨今、世界的に地球環境への意識が高まり、「脱炭素」が多くの業界で謳われています。航空業界も例外ではなく、飛行機の運行が盛んになるのと比例してCO2排出量が年々増加しています。CO2排出の観点で、矢面に立たされている業界です。

飛行機は、鉄道に比べて約20倍ものCO2を排出すると言われている乗り物です。飛行機に乗らずに他の手段で移動すればそれだけで大きなCO2削減に繋がるため、2019年末には、飛行機に乗ること自体を避けようという動きが活発化しました。

この流れで、スウェーデン語の「Flygskam」という欧州発のワードが世の中に出てきます。これは飛行機で飛ぶことを恥とするという意味の単語で、日本語では「飛び恥」と訳されて話題を呼びました。このような世の中の潮流を踏まえ航空業界は、CO2排出量の削減に本腰を入れて取り組んでいます。

 

今後の航空業界を発展させるには?世界の航空業界から学ぶ

現在の航空業界は、新型コロナウイルスからの復興と脱炭素社会に向けたCO2削減という2つの大きな課題を抱えています。この2つの課題を両立するにはどのようにすればいいのでしょうか。最先端の取り組みをしているEUの事例から、今後航空業界が発展していくためには何が必要なのかを考えていきましょう。

EUでは現在、2050年までにEU域内における温室効果ガスの排出を実質ゼロとするという、「気候中立」を目標に掲げています。達成に向けての取り組みとして、CO2の排出に価格をつけて排出量削減を促す「カーボン・プライシング」や、人間の暮らしや自然環境を守るため汚染防止に努めています。

人にも地球にも優しい持続可能な社会を目指していくこの取り組みは、「欧州グリーンディール」と呼ばれ、新たな成長戦略として注目を集めています。

オランダ政府

フランスの大手航空会社エールフランスKLMの子会社であるKLMオランダ航空は、2020年6月に、オランダ政府が支援する形で34億ユーロを借り入れることを発表しました。

この支援にあたってオランダ政府は、CO2排出量の削減を同社に求めました。それを受けてKLMオランダ航空は、バイオ燃料の導入拡大などによるCO2削減を、企業の目標として掲げています。

オーストリア政府

ドイツ・ルフトハンザ航空の傘下であるオーストリア航空も2020年6月に、オーストリア政府から総額4億5,000万ユーロの支援を受けることを公表しました。オーストリア政府は支援にあたってオーストリア航空に、CO2排出量の削減や、鉄道に代替する短距離路線の削減、機体の燃料効率の向上などを求めました。

フランス政府

フランス大手のエールフランスKLMは、2020年4月24日に、政府から70億ユーロの支援を受けることを公表しました。この支援に際してフランス政府は、温室効果ガス削減に向けたいくつかの条件を示しています。オーストリア政府と同様、鉄道に代替されうる短距離路線を削減すること、より環境に配慮した機体に移行すること、さらに2025年までに燃料全体の2%を持続可能エネルギーへ移行することなどを条件として求めました。

さらにフランス政府は2020年6月9日に、航空業界全体向けに総額150億ユーロ規模の支援策を公表しました。コロナ禍で危機的状況に立たされている航空系企業を支援し、雇用を維持させたのです。また環境負荷の低い航空機の研究・開発を支援することも表明しています。

フランスのル・メール経済・財務省は、あるラジオ番組にてメッセージを残しています。

私はこの危機を、我々が経済に対し求めるものを再定義し、環境に配慮したものに置き換える契機になると考えている。

ポストコロナを見据え、この機会に航空業界が業界変革を行うことを期待しているのです。

今後の航空業界にとって重要になるのは、コロナ禍から素早く復興することだけではなく、グリーン化・デジタル化の視点を組み合わせた事業を行なっていくことです。

参照:財務省 コロナ禍での航空業界とその後

航空業界におけるM&Aの意義

航空業界が活力を取り戻すための手法の1つとして、M&Aという選択肢も考えられます。苦境を乗り切るためにM&Aを活用する航空系企業は、今後も増えていくかもしれません。

 

世界の航空業界でも頻繁にM&Aが行われている

航空業界では、M&Aの数多くの実例があります。2004年には、エールフランスとKLMオランダ航空が経営統合し、共同の持ち株会社の下に入る形となりました。
2008年には、アメリカのデルタ航空とノースウェスト航空が合併、2010年にはユナイテッド航空とコンチネンタル航空が合併。さらに2020年には大韓航空がアシアナ航空を買収しました。

航空業界のM&Aで期待できること

このように航空業界のM&Aは実例としていくつも存在していますが、M&Aは企業に一体どのようなメリットをもたらすのでしょうか。

まず挙げられるのは、コストの削減です。従来と比べて大きなスケールで燃料や部品の調達を行うことにより、コスト削減が実現されます。さらにM&Aは、就航エリアの拡大にも繋がります。航路が拡大すれば、より多くの利用客を獲得するきっかけになるでしょう。他にも、大手の航空会社のグループに入ることで、マイル等のサービスを共有できるというメリットもあります。

多くのメリットが期待できるので、M&Aの実例が多くあるのです。航空業界が厳しい状況に置かれている今、ぜひ視野に入れておきたい選択肢です。

まとめ

新型コロナウイルスの影響で、世界的に厳しい状況に置かれている航空業界は、CO2排出量削減を訴える動きも加わり、大きな変化の中に置かれています。危機的な状況ではありますが、多くの利用客に愛され続ける企業であるために、多くの航空会社が業務改革に取り組んでいます。その取り組みの手段の1つとして就航エリア拡大など顧客満足度向上に起因しやすいメリットを多く持つM&Aを検討してみるのはいかがでしょうか。

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