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不動産業界の今後の動向を解説、現在抱えている課題や対策は?

2021年12月06日

人々が日常生活を過ごし企業が事業を営む上で、住宅やオフィス、各種施設といった基盤は欠かすことができません。そうした重要なサービスを提供する産業が、不動産業です。

不動産業界全体の2017年度における売上高は43.4兆円(全産業のおよそ2.8%)、従業員数は約134万人(全産業のおよそ2.7%)を占め、国民資産の約4分の3は不動産となっています。*1さらに不動産業の経済効果は、運送業や建設業、金融業など、関連する別の業界にも広がっています。

今回は不動産業界の現状や今後の動向、課題や展望などを見ていきます。

*1 参照:https://www.mlit.go.jp/common/001287089.pdf

不動産業界の現状と政策分野における方向性(2021年11月)

国にとっても重要な産業である不動産業には、様々な法令や規制があります。不動産業界を理解するため、まずは産業の背景や政策の方向性を見てみましょう。

 

国土に関する現状と政策

まずは「国土」について見ていきましょう。

国土の利用や整備、保全などに関する計画は、人々の生活の基盤となる重要なものです。日本には、本格的な人口減少社会が到来しつつあることや、自然災害などの被害が年々大きくなっていることなど、差し迫った危機感があります。そこで2014年、国土交通省によって「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成~*2が策定されました。これが、2050年を見据えた日本の国土づくりの理念となっています。

示されている基本的な考え方は、「コンパクト・プラス・ネットワーク」です。様々な行政サービスを効率的に提供するためのコンパクトなまちづくりを目指す「集約化(コンパクト化)」と、交通や通信、エネルギーといった面において各地域をつなぐネットワークの構築を目指す「ネットワーク化」が掲げられました。

*2参照:https://www.mlit.go.jp/common/001033675.pdf

 

このグランドデザインを踏まえ、2015年には「第二次国土形成計画」が閣議決定され、約10年後までを見据えた中期的な国土づくりの方向性が示されました。ここでは以下の3点が目標に定められています。

1. 安全で豊かさを実感することのできる国

2. 経済成長を続ける活力ある国

3. 国際社会の中で存在感を発揮

 

日本では、このような大枠のもとで国土政策が進められているのです。

 

土地に関する現状と政策

次に、「土地」について見ていきましょう。

日本がバブル景気に沸いていた頃、多くの人々が土地の価格は上がり続けると信じていました。これが、いわゆる「土地神話」です。こうした社会情勢を背景に地価が異常に高騰する中、不動産の投機的な取引を抑制するために1989年に土地基本法が制定されました。土地に関する基本理念などを定めた法律です。

その後バブルが崩壊すると、今度は土地の価格の下降が長期にわたり続きました。不良債権の焦げ付きなどが社会的な問題となり、空き地や空き家が増加したのです。そこで1997年に閣議決定されたのが、「新総合土地政策推進要綱」です。適正な土地の利用を促すことが目的でした。

現在も、地方を中心として多くの利用されていない土地があります。人口減少や高齢化で担い手がいなくなったり、土地を利用する意向が低下したりしたことで、管理が行き届かない土地が増えているのです。所有者が満足な管理をできない場合は、行政や地域コミュニティが利用したり管理したりすることができるよう、ルールをさらに整備することの重要性が見直されています。

 

都市に関する現状と政策

続いて、「都市」についても見てみましょう。

20世紀の後半、自動車産業が発展して一般の人々が車を利用することが当たり前となり(モータリゼーション)、暮らしは大きく変わりました。長距離の移動が容易となり、都心部から郊外へと多くの人が住む場所を移すようになったのです。このような傾向は、1990年代の後半頃まで続きました。中心市街地の空洞化、いわゆるドーナツ化現象です。

こうした情勢を背景に、それぞれの地域の実情に合わせて都市計画を進めることができるよう、1998年に以下の法律が制定されました。

大規模小売店舗立地法
 ・・・大型店を出店する際に、騒音や交通渋滞などの問題が生じないよう、周辺の生活環境の保持への配慮を求めた法律

中心市街地活性化法
 ・・・空洞化が進む中心市街地の活性化を促進するための法律

改正都市計画法
 ・・・まちづくりの観点から、大規模店の立地規制などを定めた法律

 

これらが、いわゆる「まちづくり三法」として都市政策の要となりました。

 

住宅に関する現状と政策

次に、「住宅」についてです。

2006年、急速に進む少子高齢化などにより社会経済情勢が大きく変化したことを背景に、住生活基本法が策定されました。人々が安心して安全に暮らすことができるような居住環境を確保するための指針がつくられたのです。それまでは、住宅や居住環境の「質」に対して充分に焦点が当たっていませんでした。

現行の住生活基本計画には、2016年度から2025年度の期間に取り組むべき施策の方針が示されています。たとえば、若者や子育て世帯、高齢者、住宅を確保するために配慮の必要な人々など、様々な世代の異なる事情の人々が安心して暮らせるようにする、というのが1つのポイントです。

また、建てた家が長期間にわたって利用されることの重要性にも焦点が当てられました。中古の家であっても良質であれば市場できちんと評価されて次の世代の人々が暮らす、という循環を構築すること、建替えやリフォームにより省エネ・耐震性などの機能を向上させ、安全な住宅ストックへと更新していくこと、そして空き家を放置せず活用したり撤去したりすることなどが、目標に掲げられています。

 

不動産に関する現状と政策

最後に、「不動産」について見ておきましょう。ここでは、特に不動産投資にフォーカスします。

不動産に関わる取引や運用については、1994年に不動産特定共同事業法が制定されました。事業の健全な発展と投資家の保護などを目的としたルールが整備されたのです。

2013年の改正では、SPC(特別目的会社)が不動産特定共同事業を営むことを認める特例事業が創立され、SPCが主体となって不動産ファンドを運用できるようになりました。

さらに2017年の改正ではこの範囲を拡大するとともに、クラウドファンディングの活用を認めるなどの変更が加えられ、空き家の活用による地方創生に向けた取り組みをサポートしています。

 

不動産業界の課題

次に、不動産業界にはどのような課題があるのかを見てみましょう。

 

人口減少・人材不足問題

大きな課題の1つが、人口減少に伴う世帯数の減少です。人口減少は日本が現在抱えている課題の中でもとりわけ影響の大きなものであり、不動産業界も当然無関係ではいられません。

すでに人口は減少傾向にあるものの単身世帯が増加しているため、世帯数についてはまだはっきりとピークアウトはしていません。2015年の世帯数は5,333万世帯でしたが、推定では2023年頃に5,419万世帯となり、その後減少に転じるとされています。*3その間に、今まで主流だった「夫婦と子ども」という家族の形は122.4万世帯減少すると推定されています。

一方で、単独世帯は183.6万世帯ほど増加し、中でも65才以上の高齢者の単身世帯に著しい増加が見込まれています。2015年から2030年の15年間を見てみると、その増加は約1.27倍(625万世帯→796万世帯)になるとも言われています。*4

こうした人口・世帯数の減少や家族の形の変化は、不動産業界にビジネスモデルの変容を迫るきっかけとなっています。

*3 参照:https://www.mlit.go.jp/common/001287089.pdf
*4  参照:https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf

また、不動産業界の内包する課題として、人材不足や後継者不足が挙げられます。

少子高齢化は働き手の減少をもたらすため、労働集約型の産業を中心に様々な業界で人材不足が懸念されています。不動産業界についても同様で、働き手を確保するためには働きやすい環境づくりなどにより業界の魅力を高めなければいけません。

また、少数の従業員で事業活動を行う小規模な会社も多い不動産業界では、経営者の高齢化による事業承継の問題に対して、社内に解決策となるアプローチがない場合も少なくありません。後継者問題にも業界として焦点を当てる必要があります。

 

2022年問題(生産緑地問題)

不動産業界に特徴的な問題に、生産緑地問題というものがあります。いわゆる「2022年問題」です。詳しく見ていきましょう。

1991年に生産緑地法が改正され、多くの土地が「生産緑地」に指定されました。次から次へと住宅が建てられていく中で、宅地への転用を防止して農地を確保するために、一定の条件を満たした土地について税制上の優遇を受けることができるようになりました。生産緑地に指定されると、農業等を行うことなど土地の利用に制約がつく一方で、固定資産税が軽減されたり相続税の納税が猶予されたりしました。

生産緑地は、指定を受けてから30年が期限となっています。多くの生産緑地が1992年に指定されたため、その30年後である2022年に大量の土地が宅地として売りに出されることが不安視されました。生産緑地は、市街地やおよそ10年以内に市街化が進められる地域である「市街化区域」内の土地について指定されるものであったため、その多くが大都市や大都市近郊にあります。そのため、都市圏の地価が暴落するとして懸念されたのです。これが、2022年問題です。

面積にして80%程度が2022年に期限を迎える予定でしたが、2018年に生産緑地法が改正され、10年ごとの延長が可能になりました。いずれにしても地価の下落は生じるだろうと考えられていますが、従来懸念されていたような大暴落は起きないだろうというのが現在の見方です。

 

不動産業界の今後のビジョン

では、不動産業界は今後どのようなビジョンのもとで事業を進めていくべきなのでしょうか。

 

豊かな住生活を支える産業

生活の空間に対する人々のニーズは多様ですが、不動産業にはそうしたニーズを把握し、よりよい社会への発展を目指すという役割が期待されています。

住宅というのは、人が人生の多くの時間を過ごす基盤であるという意味では私的な性格のものです。しかし同時に、街並みを構成する要素として地域の生活環境にも大きな影響を与えており、その観点からは社会的性格を有しているとも言えます。地域の安全や安心を守り、社会の持続的発展と安定を図る上で、豊かな住生活の実現は非常に重要です。

不動産業には、そうした面から社会の安定に貢献する産業として発展することが期待されています。

 

日本の持続的成長を支える産業

不動産業は、国の経済活動を支える産業でもあります。それは、以下のような分野において供給・流通・賃貸・管理といった業務を営んでいることから明らかです。

・企業活動を支えるオフィス

・生産活動を支える製造拠点、物流、施設

・宿泊・余暇活動の拠点となるホテル、リゾート施設

・各種サービスを提供する物販・飲食施設、商業施設

 

こうした各種施設は人々の日々の暮らしに密接に関わっており、活気のある地域づくりや特性を持った街づくりにも貢献しています。ひいては、日本の持続的成長を支えることにもつながるでしょう。人々が暮らす空間に新たな価値を生み出し、日本の経済活動を支えるというのも、不動産業の目指すべきビジョンなのです。

 

人々の交流の「場」を支える産業

これまで不動産業は、一戸建てやマンション、各種施設といった不動産を提供してきました。今後は、ますます空間づくりの重要性が意識されるようになると考えられます。

少子高齢化や地方の人口流出、都市部における人間関係の希薄化などが背景となり、地域コミュニティは昔に比べて衰退しています。また、地方と都市の格差や都市間競争などといった課題もあります。

これからの不動産業に求められることの1つが、こうした課題のソリューションとなる「場」を提供することです。人が集まり、交流し、地域に賑わいをもたらすような空間の重要性が高まっていくと考えられるからです。

人々が交流する「場」を支える産業となることに、不動産業の未来があります。

 

不動産業界の今後のあり方     

不動産業界のビジョンを踏まえ、不動産業界は今後どのように発展していけばいいのか、そのあり方を考えてみましょう。

 

信頼産業としての一層の深化

一般の人々にとって、不動産業は頻繁に関わることの少ない業界です。そのため、大切なのは信頼される産業としての発展を目指すことです。

不動産取引に関しては、トラブルを回避し消費者を保護するための様々な法令が策定されており、そうしたルールを遵守することは最低限求められることです。しかしそれだけでなく、業界全体でのコンプライアンス意識の向上や透明性のある取引の遂行など、顧客視点に立った事業活動が求められます。さらに、人材育成を推進して不動産業に携わる人々の質を上げることや、自主的なガイドラインの策定によるトラブルの防止なども有効でしょう。

業界全体として、信頼産業として発展するための体制を積極的に充実させていくことが求められています。

 

他業種や行政との連携・協働を通じた“トータルサービス”の提供

日本国内では、人口減少による市場の縮小などに伴い、従来型の不動産の価値は低下していくことが予想されます。そのため、今後ますますビジネスモデルの転換が必要となってきます。

その方法の1つとして、他業種や行政との協働を進めることが考えられます。交通や運送、医療、福祉などは、不動産業との関わりが深いばかりでなく、人々の暮らしにも不可欠です。このようなサービスとの連携により、他社と差別化したトータルサービスを提供することができ、多様化するニーズに応えることにもつながります。

不動産に付加価値をつけて新たなビジネスモデルを発展させることで、新たなマーケットを創出することができ、市場競争にも有利になるでしょう。

業務生産性の向上及び消費者サービスの向上

社会や産業に新技術を活用していく「Society5.0社会」という考え方に注目が集まり、最近では多くの業界でAIやIoTといった技術の導入が進められています。不動産業界においても、この流れに乗ることが今後の要となります。

たとえば、オンラインの活用により業務を効率化することで、消費者にとっても働き手にとってもポジティブな影響が期待できます。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により人との接触を避けることが求められるようになった2020年、物件のバーチャル内覧というサービスが一気に広まりました。これは、消費者にとっても利便性が高く、感染症の拡大が収束した後も継続的に発展していくサービスとなるでしょう。

新たな技術を効果的に取り入れていくことが、業界のさらなる発展につながります。

 

不動産業の担い手確保等

課題の1つとしてもすでに挙げたとおり、不動産業界にとって人材の確保も今後重要です。不動産関連の会社では従業員の離職率が高い傾向にあり、教育体制を充実させたり、キャリアアップを支援したり、働き方改革をするなど、従業員の満足度を高めることのできるような環境の整備が必要となるでしょう。

従業員がモチベーションを上げることができると、人材の質も上がり、顧客への提案能力が高まったり業務効率化に対する意欲が高まったりするなど、消費者に対してもポジティブな影響がもたらされます。質の高い人材が定着したり、女性も働きやすい環境が構築されたりすると、若い世代の人々に対する間口を広げることにもつながります。

後継者問題については、同業他社との課題の共有を進めることも重要です。後継者を探している事業者と事業を受け継ぐ意思のある経営者や投資家とのマッチングをするなど、業界として事業承継の課題を解決する方策を決めていかなければいけません。

 

不動産業界におけるM&Aの意義

では最後に、不動産業界におけるM&Aの意義を見てみましょう。

 

M&Aが急増している現状

昨今、不動産業界にかかわらず、多くの業界でM&Aの案件が増加しています。2019年に国内企業が当事者となったM&Aの件数は過去最多の4,088件にのぼり、初めて4,000件を超えるM&Aが行われました。これは、2018年の3,850件を238件上回り、6.2%の増加です。2020年の件数は、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済の減速の影響もあり、2019年より8.8%減少の3,730件となりました。それでも2018年と同様の水準であり、M&Aはすでに一般的なものとなりつつあります。

以前は、M&Aに対して「他社を乗っ取る行為」や「自社を売り払う行為」として悪いイメージが持たれることもありました。しかし、日本市場にM&Aが浸透するにつれそのようなイメージは払拭され、むしろ多くのメリットがある効果的な経営戦略1つとして企業や経営者に検討されるものになってきています。

出典:レコフデータ「2020年のM&A回顧(2020年1-12月の日本企業のM&A動向)」

 

人材不足解消のためにM&Aは必要である

不動産業界でも、今後M&Aが増えていくことが見込まれます。その大きな理由の1つが、すでに不動産業界の課題の1つとして挙げた「人材不足」です。M&Aにより事業規模を拡大したりより効率的な経営に舵を切ったりすることで、人材不足の解消を目指すことができます。また、後継者問題へのアプローチとしてもM&Aは有効です。

このように、不動産業界でもM&Aを積極的に進めていくメリットは大きく、経営戦略や業界の生き残り戦略として広くM&Aが行われていくことでしょう。

 

まとめ

この記事では、不動産業界の現状や課題、将来的な展望などを見てきました。不動産業界で事業を営んでいる経営者にとっても、M&Aなどにより不動産業界への進出を検討している経営者にとっても、業界の全体像を理解することは重要です。今後不動産業界が目指すべきビジョンを理解した上で、経営戦略の1つとしてM&Aなどを検討していくとよいでしょう。

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