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IT業界の今後とは?現状や最新技術、将来性を知り、M&Aに活用しよう

2021年11月02日

情報通信白書(2021年版、総務省発行)は、生産性の向上、新たな付加価値の創出、感染症や自然災害に対応できる強靱性の確保、持続可能な社会の実現には、デジタル化が欠かせないと指摘しています(※1)。つまり、日本の社会や経済の発展にはITが必要不可欠です。情報通信白書はさらに、「ビジネスモデルの変革を伴うようなデジタル化が広がっていない。企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で人材不足が大きな課題となっている」といった課題も指摘しています。2021年現在の日本にとって、ITの拡大が必要なのに全然足りていない、という状況に陥っています。

そこでこの記事では、IT業界の現状や最新技術、将来性などを概観したうえで、M&AがIT業界の成長の起爆剤になりうることを解説します。

※1:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01point.pdf

 

【2021年版】IT業界のトレンド紹介

IT業界のトレンドとして、5G(第5世代移動通信システム)、AI(人工知能)、ビッグデータ、VR・AR・MR・XRを紹介します。

 

5Gの登場

5Gは、より大量のデータをより速く送信する技術です。5Gの効果の一例としては、スマホに動画をダウンロードする時間が格段に短くなることなどがあげられます。しかし、5Gの本質はこうした理解よりもはるかに「すごいもの」です。

例えば携帯大手のソフトバンクは、車の自動運転も遠隔医療もスマートホームもスマートオフィスも5Gによって格段に進化すると説明しています(※2)。5Gは、近未来の世界の重要インフラなのです。

5Gの普及率は、欧米や中国では2025年までに30%を超えると見込まれていますが、日本は2024年でも27%程度にとどまる見通しです(※3、4)。これは日本のIT技術の普及が欧米や中国より遅れていることを示す数字ですが、伸びしろと考えることもできます。5Gの利用はますます広がっていき、その分ビジネスチャンスが多くあるといえます。

※2:https://www.softbank.jp/biz/5g/column3/#biz-5g-02
※3:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd114140.html
※4:https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1255107.html

 

AI×ビッグデータによる新たな価値の発見

AIはほんの5年ほど前までは驚異のコンピュータ技術のように騒がれましたが、2021年現在、多くの方がAIを活用しています。例えば、インターネット検索における音声検索機能や、お掃除ロボット等が生活に浸透してきています。日常生活の中でインターネットを使えば何らかの形でAIのサポートを受けることになりますし、コンビニで買い物をしてもAIに関わることがあります。

AIが身近な技術になった今、ビジネスシーンで重視されているのは「AI×ビッグデータ」です。

ビッグデータは、豊富な種類・形式の含まれた非構造化データ・非定型的データです。常に生成・記録される時系列性・リアルタイム性のあるものが多い傾向にあります。そのため、ビッグデータをコンピュータで解析しようとしても専用のプログラムを開発しなければならず、また高性能のコンピュータも必要になり、誰でも有効活用できる代物ではありませんでした。

しかしAIはビッグデータを驚異のスピードで読み込み、理解し、そのなかに含まれている法則をみつけます。AIの登場によって、ビッグデータが価値あるものに変わりました。

車の自動運転技術の進化は、AI×ビッグデータを活用した良例といえます。運転者がいない自動車を公道で走らせるには、公道に潜む無数の危険を回避しなければなりません。歩行者や対向車、路面状況などの危険は、カメラやセンサーなどで拾うことができますが、そのデータ量は膨大になり普通のコンピュータでは解析できません。このときAIが活躍します。

 

VR、AR、MRの普及とXRの登場

VRは仮想現実ARは拡張現実MRは複合現実と訳され、いずれもリアルとデジタルを融合させる技術です。

VR・AR・MRはエンターテイメント界や産業界で使われています。例えば、ゴーグル型のヘッドマウントディスプレイをつけて行うゲームはVRが使われていて、これによってゲームの楽しさや表現の可能性は格段にアップしました。また、住宅の内覧をVRで行うサービスも登場しています。MRを使った技術には、デジタル・トレーニングがあります。新人の作業員に特殊な眼鏡を装着させて機械の前で作業をさせると、その眼鏡に機械の操作方法が映し出されます。これなら先輩作業員の指導が不要になるので、省人化に寄与します。

そして今新たに、VR・AR・MRをすべて盛り込んだ XR(クロスリアリティ)という概念が登場しました。NTTドコモは、XRが進化すると時間、空間、フィジカルの制限がなくなる世界を構築できると説明しています(※5)。例えば、3D教科書で原寸大の恐竜をみながら歴史を勉強したり、自宅のクローゼットに世界中の有名ブティックの洋服を並べたりすることができます。映画や海外旅行も様変わりするでしょう。

※5:https://xr.docomo.ne.jp/about_xr/

 

IT業界の課題

総務省は日本のIT業界には次のような課題があるとしています(※6)。

情報通信機器の利用における世代間格差
企業のDX化の遅れ
DX化における人材不足
行政手続オンライン化の遅れ

 

この中から人材不足にフォーカスしてみます。

※6:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01point.pdf

 

2030年には約79万人のIT人材が不足する

みずほ情報総研は2019年3月に「IT人材需給に関する調査」を公表し、そのなかで、経済産業省が「2030年にはIT人材が79万人不足する」と指摘していると紹介しています(※7)。

そしてこれより深刻な数字があります。みずほ情報総研が独自に試算したところ、IT需要が1%伸びると、2030年には、先端IT人材が38万人不足し、さらに従来型IT人材が22万人余る、という結果になりました。つまり、単にIT人材を集めればよい時代は終わり、先端ITを操ることができる質の高い人材のみが求められる時代に突入しようとしている、といえます。

IT人材不足問題は量的問題に加えて、質的課題も突きつけられることになります。

※7:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

 

小学校でプログラミングが必修化された意味を考える

政府もIT業界の人材不足問題には危機感を持っていて、2020年度から小学校にプログラミング教育を導入したことは周知のとおりです。子どもの頃からITに興味を持ってもらい、さらに子どもたちにIT業界の将来性と可能性を知ってもらい、ITの道に進んでもらうというわけです。児童たちは今、「ネズミが猫から逃げるプログラム」や「卵が割れたらヒヨコが出てくるプログラム」などをつくっています(※8)。

文部科学省は、小学生にプログラミングを学ばせる意義について次のように説明しています(※9)。

AIなどの技術革新に対して、将来、今ある仕事の半数近くが自動化されるという予測があり、このような急激に変化する社会では、「今、学校で教えていることが通用しなくなる」「人間の職業が AIに奪われる」という不安の声がある

予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合い・関わり合い、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となることを目指す

コンピュータはプログラミングで動いていることを理解することで、コンピュータがブラックボックスでなくなるので、より主体的に活用できるようになる

あらゆる活動でコンピュータの活用が求められるので、将来どの職業に就くにしてもプログラミングの知識は重要になる

 

 

文部科学省は子どもたちが今後、変化の激しい社会で生活していく上で、コンピュータやプログラミングの知識が必要になると考えています。

※8:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1416408.htm
※9:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1417094_003.pdf

 

IT業界の将来は希望に満ち溢れている

ITの強化は日本の国家戦略であり、日本のIT業界はまだまだ強くなっていかなければなりません。国の支援も充実し、IT業界も大型投資を進めるはずです。そのためIT業界の将来は、希望に満ち溢れているといっても過言ではありません。

 

IT業界の動向

経済産業省の特定サービス産業実態調査から、IT関連の市場規模を測る指標を抜粋したものが以下の表です(※10、11、12)。2018年とその10年前の2008年を比較すると、驚異的な成長を記録していることがわかります。

特定サービス産業実態調査、2018年と2008年の比較
2018年 2008年 上昇率
ソフトウェア業
 

 

 

事業所数(単位:社) 21,953  12,313  78%
従業員数(単位:人) 707,600  618,519  14%
年間売上高(単位:億円) 148,401  148,070  0.2%
情報処理・提供サービス業
 

 

 

事業所数(単位:社) 9,855  5,433  81%
従業員数(単位:人) 310,700  239,358  30%
年間売上高(単位:億円) 72,888  50,385  45%
インターネット付随サービス業
 

 

 

事業所数(単位:社) 2,892  513  464%
従業員数(単位:人) 59,500  21,584  176%
年間売上高(単位:億円) 19,792  7,853  152%

 

ソフトウェア業の年間売上高の上昇率だけが0.2%増という小さい数字になっていますが、それでもソフトウェア業は従業員数が14%増え、事業所数は78%も増えています。

情報処理・提供サービス業は、年間売上高が45%増と堅調です。

そしてインターネット付随サービス業は、年間売上高は152%増、つまり2.5倍になっています。

※10:https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-1.html
※11:https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-2/h30/pdf/h30outline.pdf
※12:https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-1/h20kzenntainogaikyou(kakuhou).pdf

IT業界は安定している

IT業界には将来性に加えて、安定性があります。

経済産業省とみずほ情報総研が共同で作成し、2021年2月に公表した「我が国におけるIT人材の動向」は、企業はIT人材に対し、通常より高い報酬を設定する傾向があると指摘しています(※13)。

例えば富士通は、平均年収は798万円ですが、AIやセキュリティの分野で高いスキルを持っている人には年収3,000万~4,000万を用意しています。NECは大学時代にAI分野の論文を発表し高い評価を得た人は、新卒者でも年収1,000万円を支払うとしています。

※13:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/001_s01_00.pdf

 

IT業界はM&Aで成長する

IT業界は、M&Aに熱心な業界です。最近だけでも、M&A関連ニュースには多くのIT企業が登場します。

Eコマースの楽天日本郵政の資本業務提携:日本郵政が楽天の増資を引き受ける

・LINEZホールディングスの経営統合:Zホールディングスを完全親会社とし、LINEの承継会社を完全子会社とする株式交換

・シャープによる、NECディスプレイソリューションズの買収

・ソフトバンクによる日本テレコム買収

・Zホールディングスによる、ファッションEC大手ZOZOの買収

 

IT業界にとってM&Aは成長の起爆剤になっていて、これは買い手企業にも売り手企業にもいえることです。

 

買い手企業にとってのM&Aの魅力

IT業界におけるM&Aでは、買い手企業には次の2つの魅力があります。

 

1.最新技術を獲得できる

IT業界には、大企業でなければ事業展開できない半導体製造やプラットフォーム事業がある一方で、数人のベンチャー企業がアイデアだけで勝負できる領域もあります。そして中小零細の企業が生み出すIT技術は、ときに大手IT企業の想定をはるかに超えます。

そのため、大企業が中小IT企業を買収すればさらなる成長が見込めるうえに、中小企業が零細IT事業者を買収して成長できれば、上場も視野に入ってくる可能性があります。M&Aで最新技術を獲得すれば時間もコストも削減することができ、何より素晴らしい技術をつくりあげた貴重な人材を仲間にすることができます。

 

2.人材不足を解消できる

最新技術を持っていなくても、既存の技術に定評があるIT企業を買収する価値は十分あります。

それは人手を確保できることです。例えば、エンジニアが10人足りない会社であれば、10人の零細IT企業を買収すれば、採用コストを抑えることができます。

 

売り手企業がM&Aに応じる2つの理由

IT企業が買収に応じるのは、売り手企業になってもメリットがあるからです。

IT業界のM&Aでは、売り手企業は少なくとも次の2つの恩恵を受けることができます。

 

1.技術開発の資金を集められる

IT業界には形式にこだわらない経営者が多いので、買収した企業(つまり売り手企業)の経営陣も社名も変えないことが珍しくありません。そうなると、売り手企業は株主が変わっただけで、これまでの事業をこれまでのメンバーで続けることができます。さらに、買い手企業の経営資源を使うことができます。

売り手企業にとって買収されることは、技術開発のための資金を集めるのと同じ効果が得られるだけではなく、人材も販売経路も、買い手企業(親会社)のものを使うことができます。

 

2.多重下請けから脱却できる

IT業界では、2次請け、3次請けは当たり前で、フリーランスも含めると4次請け、5次請けも発生します。

小さなIT企業は、多重下請けに困っているのではないでしょうか。「請けの次数」が増えるほど「上の企業」に利益を吸い上げられるので、自社の実入りが減ります。買収されることは、売り手企業が買い手企業の1次請けになるようなもの、と考えることができます。

 

IT企業こそM&Aに力を入れるべき

Googleを運営するAlphabet社、iphoneやMacで知られるApple社などのグローバルIT企業のほか、楽天やソフトバンクなどの日系IT企業も、M&Aで成長してきました。「事業を拡大させたい」と真剣に考えているIT企業の経営者は、買い手企業になるケースも、売り手企業になるケースも考えながら、M&Aをご検討ください。

 

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