複数の名刺を持つのが当たり前、学生時代に起業するのが当たり前。日本人の働き方そのものが劇的に変わりつつある現代において、その先端にいる若者たちの生き方を素でいくのは、今回お話をお伺いした合同会社メディアビューティ(仮称)の代表を務める井垣様(仮名)と、売却対象の事業責任者を務める川西様です。お二人が出会ったのは、とあるIT系企業のインターンシップ。
その頃、既に井垣様は幾つか事業を立ち上げていらしたそうですが、コロナ禍で自粛生活が続く中、何かウェブ上で完結できる事業を一緒に創ろうという話がお二人の間で持ち上がったことで、この新規事業プロジェクトはスタートします。本日は、そんな経緯で生まれたメディアが急成長してからM&Aに至るまでのプロセスと、その際に感じられたことをお伺いしてまいりました。
ドメインパワー・ゼロから始めた新規メディアが、一年足らずで急成長
新メディアの構築にあたり、お二人が選んだのは美容業界。その理由は、衣食住の次に重要視されており、市場規模が非常に大きく、既に多くのメディアが存在するため、自分たちが参考にできるサンプルも多かったから。とはいえ、実際にやってみると、営業が何かサービスを提供することで課金されるシステムではないため、とても掴みにくく難しいと感じたそうです。
何より、ドメインパワー・ゼロから始めざるを得ない新規メディアの立ち上げは、仮説を立てても検証の術が少なく、たとえ何か数値が取れたとしても、それを評価することが困難な世界。とにかく「今やっていることは、正しいんだ」と信じ、たとえ読み手からの反応がなくとも、良いものを発信し続けてサイトとしての信頼性を保っていくこと、それだけを決めて邁進したのだとか。
そんな努力が実を結び、徐々にGoogleからの評価も上がっていった頃、多数のフォロワーを抱えるインフルエンサーを活かしたインフルエンサー・マーケティングの可能性に着眼したことが、一気に事業の成長を後押しします。こうしてメディアパワーをつけた当該事業は信頼度もさらに上がり、上場企業とのコラボが決まるなど、順調に大きくなっていきました。
ところが、これまで全て二人だけでやってきたため、事業が拡大していくスピードにリソースが追いつかず、事業責任者でありサイト運営の全実務を担っていた川西様がメールを返信できるのは、その受信日から3日後という多忙さ。加えて、大学の試験が始まれば、その間は本業である学業に割く時間が必然的に増えるため、このままの状態で続けていくのは難しいと判断し、この度の事業譲渡に至ったのだそうです。
M&Aで重要なのは、具体的な未来を一緒に想像し、それを共有すること
代表の井垣様にとって、今回のM&Aは実は2回目。既に大まかな流れはご存知で、契約に必要な諸々の書類を作成してくれる弁護士等の伝手もお持ちだった井垣様が全体を把握されながら、実務や交渉は川西様が担当するという形で進められたのだそうです。
そこで、実際に現場でM&Aを動かされた川西様に、満足のいくM&Aを実現するために重要だと思うことは何かをお伺いすると、「自分が一番大切にしたいことを明確して、何があってもぶらさないこと。これが案外難しいのですが、非常に重要だと思います。売り手の方の中には、金額に呑まれてしまうケースも多いと聞いたことがあります。
そして、その気持ちも理解できます。ですが、その事業に愛着があるなら、相手が一緒に事業を伸ばそうと本気で思ってくれているのかを見極めて、金額よりもそっちをとった方がいいと思います。その本気度がわかるまで、何度も会って、じっくり話して決めるべきだと思います。
また、引き継ぎ後の話も、できるだけ具体的に、詳細をイメージしながら進めることが重要だと思います。でないと、後になって想像と違うことが起こってガッカリする可能性もあるからです」とのこと。
そんな愛着のあった事業を手放すのに、迷いはなかったのかを続けてお伺いすると「初めて、井垣との間に事業譲渡の話が持ち上がった時は、正直、悩みました。ゼロからスタートしたメディアが、提携インフルエンサーの総フォロワーが30万人にまで成長し、誰もが知っている有名な商材も扱えるようになって、このまま自分たちで伸ばしていける気もしたんです。
こんなに苦労して作ったメディアを、簡単に他人に渡していいのか、とも思いました。でも今は、M&Aという決断をしてよかったと思います。自分の限界を認めることも、時には必要なんです」と語る川西様からは、当時の葛藤が伝わってまいりました。
金額よりも大切なもの…それは、このメディアを買収後も育ててくれるかどうか
そんな川西様は、売却後も事業に残られるそうです。だからこそ、譲渡先に求める要件は非常に明確だったのが印象的で、「全部で80件くらい来た問い合わせの中で、私が最も重視したのは、この事業に対して同じだけの想いを持って一緒に頑張ってくれる人がいて、それを応援してくれる経営者がいるかどうか。
そして、自分たちにはない、何か特別なものを持っているかどうかでした。具体的には、最低限のウェブの知識を持った女性のパートナーが必要でした。所詮私は男なので、企業とタイアップをするにしても、その商品のクオリティの良し悪しは判断がつきません。
それを代わりに評価してくれる人に、仲間になって欲しいと思っていました。また、私は残って事業を育てると決めたので、これまでの経験値や想いを尊重してくれる経営者の下で再スタートを切りたいと考えていました」とのこと。
そんな川西様が最終的に選んだのは、テレビ番組、CMを中心に映像制作を手掛ける某社。「代表の方とは、3度目の商談の時には一緒に飲みに行くほど意気投合したんです。会ってお話をする中で、事業運営上で私が譲れないポイントも理解してくれる包容力を感じました。また、一緒に頑張ってくれる女性社員もいるとのことでしたし、良質なコンテンツ制作に必要な高精度の映像機器や、高レベルの撮影技術をお持ちだったのも非常に魅力的でした。
この会社とであれば、これまでの枠を超えた非連続な成長が叶う、素晴らしいシナジーが生まれるだろうと思ったんです」と語る川西様は、無事に譲渡先が決まり、これまでの激務から解放されて少し安堵しているご様子でした。
今後は、他の分野にも積極的にチャレンジして、ご自身の経験値も広げていきたいと言う川西様。「もっと経験を積んで成功を重ねることで、キラキラしたい」と笑う川西様は、新規事業立ち上げからM&A完了に伴うご経験を通じて、既に十分輝いていらっしゃいました。
井垣様と川西様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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