ご両親が自ら事業を営まれていたということもあり、以前から独立を考えていらっしゃったという徳留様が、世界的にも評価の高い“メイド・イン・ジャパン”の製品を海外向けに販売するという輸出業を始められたのは今からおよそ5年前…そこから毎年、順調に年商を伸ばされていた本事業を、次の経営者に譲渡するまでの経緯や想いを伺ってきました。
中小企業のオーナー社長のリセット手段としてM&A はベストな選択
客観的な数字だけをみれば、極めて順調に事業を展開されていたように見える徳留様。その業績はというと、初年度から年商1億円を実現し、翌年には約2倍の1.9億円…翌々年には更にその約2倍強の4.3億円と、まさに“倍々ゲーム”のような素晴らしい軌跡を辿っていました。
そんな、まさにこれから…という可能性に満ち溢れたこの事業を、なぜ譲渡されようと思ったのかをお伺いすると「自分には、どうしても“リセット”することが必要だったんです」とのこと。業績が好調だからこそ増えてくる難しい判断、重くなる責任…そんな中で、一度ゆっくりとご自身と対話し、いろんなことを見つめ直したかったのだとか。またそのように気持ちが不安定な状況の中でご自身が代表を務めても、業績を伸ばせずにこのままでは会社やスタッフに迷惑が掛かると感じられていたそうです。
とはいえ、中小企業のオーナー社長ともなれば、サラリーマンと違って1ヶ月前に退職届を提出すれば辞められるわけではないし、大企業と違って副社長や複数の役員といった役職たちが後に控えており、自分のやってきた業務を引き継ぐ準備ができているわけでもない。かといって、自社内で後継者を育てるともなれば、多大な時間と労力が必要となってくる…。
「だから、中小企業のオーナー社長は、そう簡単に辞めることができないんです。どんなに苦しくても、しんどくても、“じゃあ、辞めます”って急に投げ出すことも、逃げ出すこともできないんです」と語る徳留様が、ご自身をリセットするために選ばれたのはM&Aという選択肢でした。
「M&Aというやり方であれば、スタッフの雇用は継続出来るし、取引先とも既存の取引を継続できるので、誰にも迷惑をかけることなく、会社の価値を維持しながら、自分は自分でリセットすることができると思ったんです。もちろん、そのために人的資本や金銭的資本を持ち、シナジーを産むことができるような相手を慎重に選びました」とのこと。
実際、徳留様が事業を託すと決めたお相手は、既にご自身が興された会社を好業績に導いた確かな実績をお持ちで、現在、手がけておられるのは2社目…と、経営者としての貫禄は充分すぎるほど。それに加えて、今回のM&Aに対する熱意や、非常に誠実なお人柄にも心から惹かれたとのことで、この方であれば、徳留様の想いを継承しつつ事業をより良い方向へ発展させてくれるに違いないと思われたそうです。
アドバイザーとは、大小様々なトラブルを一緒に受け止め、背中を押してくれる存在
そんな素晴らしい出会いを果たされた徳留様にとって、M&Aは今回が初めて。人生における重要な決断となるM&Aというものを初めて進められる中で、不安なことはなかったのかをお伺いすると、「特に大きな不安はなかった」とのこと。
「会社を作った事がある人たちは、これまでに “初めてのこと”を大量にやってきているんです。そもそも、ゼロから売上を作らなければならないし、会計や税金、採用や事務手続きなど、本当に“初めてのこと”だらけなので、ある意味、何も分からない状態から物事を進めていくことには慣れています。それらの対処法は、自分で調べたり誰かに聞いたりしながら、ひとつひとつ順番に解決していくことでしかないんですが、それを一生懸命に繰り返していけば、最後には何とかなると思っています。M&Aも初めてではありましたが、その延長線上にあるものと捉え、何とかなると思っていました」とも。
そんな徳留様が、「それでも、とても助けられた」と語られるのは、アドバイザーである株式会社事業承継通信社 取締役COO 柳 隆之様の存在でした。実際、ご自身が納得できる理想的なM&Aを実現されたわけですが、もちろん、そこに至るまでの道中では、大小様々なトラブルが発生したそうで、
「M&Aという性質柄、そう簡単に誰かに相談できるわけではないので、柳さんには本当にいろいろと相談に乗ってもらいました。途中、一部の従業員に先立って情報が漏れてしまって大変だった時もあったんですが、柳さんが“起きたことは仕方がないので、その先を一緒に考えましょう”と言ってくれたおかげで、自分も冷静に次のアクションに進むことができました」とのこと。
他にも、交渉の過渡期に主要取引先とのシステムトラブルが発生し、買い手様に詳しい説明を求められるなど、成約に至るまでの過程は決して平易なものではなかったそうなのですが、だからこそ、大局的な立場に立って、時に徳留様の背中を押してくれる…そんな柳様の存在には、M&Aの流れを説明してもらうといった基本的なアドバイスの枠を超えて、精神的な部分でも頼りされていたそうです。
当たり前が当たり前じゃない…外の世界から見た自社の評価で気が付いたこと
何事も、最後には何とかなると考え、前向きかつ着実に前進されている徳留様。そんな徳留様にとって、今回のM&Aを進める中で一番印象的だったのは何だったのかをお伺いすると、それはデューデリジェンスで得た自事業の評価内容だったそうです。物販を営まれている徳留様の事業では、仕入れから納品までを自社のシステムに乗せて管理されており、「あくまで必要な戦略の一つとしてシステム開発に取り組んでおり、顕著なアピールポイントになるとは考えていなかった」そうなのですが、今回のデューデリジェンスに際し、買い手様からこのポイントが高く評価されたということで、ご自身としては非常に驚かれたそうです。
「自分の中では当たり前のことが、外の世界から見たら当たり前じゃなかったりする…自分では何でもないと思っていることが、実はとても価値のあることだったりするんですよね。そんな風に、今回のM&Aを通じて自分の会社の客観的な価値を知ることができたのは、ひとつの収穫でした」と、嬉しそうにお話されておりました。
「先週、成約が決まったばかりなので、まだまだ引き継ぎなど、やらなければならないことがたくさんあるんです」と微笑む徳留様は、最良のカタチで“リセット”が叶い、とても晴れ晴れとしたご様子でした。多くの修羅場を乗り越えて育て上げられた事業を、「本当に、かっこいい人なんです」と信頼を寄せる買い手様に継承することが決まった…ということで、バトンズ一同、本当に心から嬉しく思っています。
徳留様の今後の更なるご活躍を、心より応援いたしております!
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