
東海エリアで複数の介護事業所を運営する小川様は、今年5月、新たに長野県の介護事業を営むNPO法人を買収されました。交渉は緊急事態宣言のなか行われたため、面談や現地視察は細心の注意を払って行われたそうです。M&A後は現場に具体的な指示を出し、運営面の改革に着手されています。
ITエンジニア集団から始まり、現在は複数事業を運営するグループ会社に
――どういった事業を行われているのですか?
元々はIT企業のエンジニアで、独立し50人くらいのシステム開発会社を作りました。ちょうどその頃リーマンショックが起こり、失業者にITスキルを教育し雇用を創出する事業を行っていたんです。
その後、知人に介護資格も教えて欲しいと言われたので介護事業を行う会社も作り、それから障害者への就業訓練学校と外国人技能実習生の組合も始めました。現在は複数事業があり合わせて10社経営しています。その中でも、積極的にM&Aを行っているのが介護事業ですね。現在6社持っています。今回は証券会社の方からバトンズを紹介され、対象会社が買い手を募集しているのを見つけました。
――今回なぜ長野の介護事業所をM&Aされたのですか?
すでに愛知、三重、静岡、岐阜に拠点を持っており、長野県は地理的にバランスが良かったのです。また立地もよく、一から施設を作るよりは良いと思いました。更に50床と床数が多かったため、収益改善の余地が大きいと判断しました。若干赤字経営でしたが、買収にあたっては気にしていませんでした。
初めてのNPO法人のM&A。議決権の確保と保有資産が主な論点
――トップ面談の際、売り手様はどんな方でしたか?
すごく人柄が良い方で、イメージしていた通りの優しいNPO法人の理事長さんでしたね。私以外にも複数の方からアプローチがあったとお聞きしています。アルプス中央信金の高坂さんから前理事長を紹介していただき、M&Aアドバイザーは成迫会計さんにお任せしました。
――交渉中の論点はございましたか?
資産が沢山あったため、どうするかということを話し合いました。赤字は気にならなかったんですけれど、売買価格が高くなってしまうことが気になっていたので、前理事長に資産を買い取ってもらうという形で買収を進めました。また、NPO法人だったため、株の売買ではなく議決権をもった理事のポストを抑えるという手法で、M&Aのスキームを組みました。
――5月に無事成約。コロナの影響はなかったですか?
お会いする時は金融機関さんに間に入っていただき、できるだけ接触しないように気を付けていました。僕のほうはかなり気を遣っていましたね。現場視察の際、普通だったら建物は隅から隅まで見ていきます。しかし、今回は入所者さんが多数いるなかで内部を見て回るわけにはいかなかったため、建物の中には入らず入り口だけ現地で見せてもらい、施設内は図面で確認しました。
地方の介護事業で好循環を生み出したい。そのためにもM&Aは有効な戦略
――M&A後、まず着手したところは何でしたか?
ノウハウなので全ては教えられないのですが、実は介護で収益が悪い場合は3パターンしかないんですよ。私は運営方針には特に口出しはしませんが、収益面のみ手を加えています。例えば、普通だったら経営者は「売上を上げろ、そのためにコストを下げろ」という指示を従業員にすると思うんですけれど、そういう指示では介護の現場の子たちには伝わりません。そのため、私の場合は利用者数に応じたスタッフのシフトの組み方、
――今後の展望を教えていただけますか?
短期的な目標は、まずは収益力を上げることです。売上が上がれば人件費を上げることができ、良い人材も集まります。良い人材が集まれば利用者も増えるので、こうして好循環を生み出せる介護事業所を作っていきたいですね。
長野の介護事業所を買収して以降、9月に秋田、10月に宮崎にも出店したので、3ヶ月連続で買収しています。グループ全体としては、東海地方から抜け出して九州と東北に出店できたため、これからもっと商圏を拡大し店舗数を増やしていきたいです。
――小川様にとってM&Aとはどういうものですか?
非常に効率が良く、売る側にとっても買う側にとっても無駄がないと思います。昔のM&Aの会社って仲介料が高いですが、手数料も非常に安くなってきている。これから多くの中小規模の企業が買い手を探す時代になると思うので、M&Aマーケットの流れがさらに良くなると良いなと思います。
――ありがとうございました。
アルプス中央信用金庫の高坂様
http://www.alupuschuo-shinkin.jp/
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