「地元の人に愛される素敵なカフェを始めたい」「引退したら田舎でカフェを経営したい」と、カフェを経営・開業したいと思っている人が気になること。
それは開業資金や経営資金、実際の利益ではないでしょうか?
カフェ経営は必ずしも大きく儲かるビジネスではありません。開業から3年持たずに廃業するケースも少なくないため、利益を上げるためにはなるべく開業費用や日々の経営費用を抑えることが重要です。
本当にカフェ経営で利益を出せるの?
「カフェ経営って儲かるの?」という疑問に対し、おそらく大半の現役カフェ経営者や元・カフェ経営者は、「難しい」「儲からない」と答えるでしょう。
なぜならカフェの経営は客単価が低い上、回転率も良くありません。あるカフェ経営者に話を聞くと、「収入は開業時月収10万円、1年で月収10~20万円、2年で月収30万円に到達できれば上出来」と回答しています。
では、日本におけるカフェ・喫茶店業界の現状を見てみましょう。
帝国データバンクの「喫茶店・カフェ経営業者 1180 社の経営実態調査(2018年版)」によると、全国の喫茶店・カフェ経営業者1,180社の2017 年の売上高合計は、前年度4.6%増の6,415億3,200万円となり、拡大傾向が続いています。
売上高の拡大を牽引するのはスターバックスコーヒージャパン、ドトールコーヒー、タリーズコーヒージャパンといった大手カフェチェーンで、この上位3社が売上高の42.6%を占めているのが現状です。
社名(2017年) | 売上高(百万円) |
---|---|
スターバックスコーヒージャパン | 170,984 |
ドトールコーヒー | 72,560 |
タリーズコーヒージャパン | 30,268 |
売上高合計 | 641,532 |
参考:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p180801.pdf
日本ではコーヒーの消費は堅調であることからユーザーが固定化しやすく、業績を安定させることはそれほど難しくありません。しかし、個人経営や小規模法人のカフェ経営はマニュアル化された大手カフェチェーンとは異なり、スタッフ確保の問題やエリアのニーズに合ったサービスの提供、サービスの品質向上や均一化など、経営の舵取りの難易度は高くなります。
カフェ経営で利益を出すには、このような現状を把握した上で、軌道に乗せるまでの資金繰りや売上確保を考えていくことが重要です。
カフェの経営・開業資金を試算
カフェを経営するには、最初に経費をかけすぎないことが大切です。小さく始めることで資金繰りが楽になり、精神的にも負担が少なくて済みます。
一例として、10坪・賃料15万円のカフェの開業資金、開業から経営が軌道に乗るまでの運転資金を試算すると次のとおりです。
費用 | 金額(万円) |
---|---|
物件取得費 | 150 |
内装工事費 | 270 |
厨房機器購入費 | 100 |
食器・備品購入費 | 100 |
運転資金 | 100 |
合計 | 720 |
※おおよその金額の中央値をとって計算しています
それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
物件取得費(150万~300万円)
カフェを経営する際に必要な物件の取得費用です。物件には2種類あり、1つは前の飲食店の内装や設備がそのままの「居抜き」、もう一つは基礎構造がむき出しの「スケルトン」です。物件取得費は物件の種類や出店地域によって変動します。
たとえば、東京都新宿区信濃町にある9.4坪の喫茶店居抜き物件は、賃料が15万2,280円、敷金・保証金は合計して賃料の15ヶ月分がかかります。
さらに、そのほかにも物件の契約からカフェがオープンするまでの間の「空家賃」として、1~2ヶ月分の賃料も考慮しておく必要があるでしょう。
参考:https://inuki-ichiba.jp/rent/
内装工事費(270万円)
物件を取得したら、次は開店の前日までに内装工事を終わらせなければなりません。内装工事費の内訳は設計費、材料費、家具・インテリアなどで、かかる費用はカフェのデザインによって異なります。一般的なカフェの場合は、1坪あたり20万~50万円となることが多いようです。
居抜き物件の場合は、既存の内装を活用することで、内装工事費を節約することもできます。
厨房機器購入費(50万~200万円)
カフェがコーヒー専門店なのか、軽食やアルコール類も提供するかなど、コンセプトによって必要な厨房機器は大きく変わります。コンセプトに関わらず必須となる厨房機器には、業務用の冷蔵庫、製氷機、ガスコンロ、シンクなどがあります。すべて新品で購入するとなると50万~100万円程度、他に軽食提供用の調理器具や食洗機まで購入すると200万円以上かかることもあります。
初期費用を抑えるために中古品を購入するという方法もありますが、その場合は後々のメンテナンス費用も考慮しておかなければなりません。
食器・備品購入費(100万~200万円)
食器・備品は内装と並んでカフェの雰囲気を決定する重要な要素のひとつです。
こだわりのソファやテーブル、チェアを購入するとそれだけで100万円を優に超えるでしょう。一方で、家具量販店の商品はコストを抑えられるものの、カフェの独自性を発揮しづらいというデメリットもあります。
カフェの規模にもよりますが、20席程度で100万~200万円を想定しておくと良いでしょう。
運転資金(100万~200万円)
運転資金はカフェの経営を軌道に乗せるまでに最も重要な資金です。開業間もないために赤字が続いても、運転資金さえあれば廃業は免れることができます。運転資金は、開店から6ヶ月で赤字から黒字へ転換するという試算であれば、賃料のおよそ10ヶ月分が目安です。
ほかにもカフェ経営に必要なことがある
資金面や設備面以外でも、カフェ経営で準備しなければいけないことがあります。
カフェ開業に届け出が必要な書類
事業を始めるからには、個人事業主として営むのか株式会社などの法人を設立してカフェを運営していくのか決めておかなくてはなりません。個人事業主でカフェ開業する場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」を最寄りの税務署に提出します。
一方、法人を設立する際には「法人設立届出書」の提出が必要です。また、法務局で法人設立の登記申請も済ませなければなりません。
カフェ経営に資格は必要?
開業・経営するお店が「カフェ」なのか、「喫茶店」なのかによって、必要な資格や申請が少し異なります。「カフェ」は酒類が提供できて調理全般も可能であるのに対し、「喫茶店」はいずれも原則不可です。
まず、カフェも喫茶店も食品衛生責任者がいなければなりません。食品衛生責任者は、食品衛生協会が開催する講習を受講することで取得できます。
また、お店がカフェであれば、保健所に飲食店営業許可の申請も必要です。そのほか、収容人数が30名以上であれば「防火管理者」、お菓子やパンを製造してテイクアウトしてもらうことを考えているなら「菓子製造業許可申請」をしなければなりません。
カフェ店内の雰囲気づくりも大切
ここまで、カフェ開業・経営に必須の項目を紹介してきましたが、長くカフェ経営を続けていくためには店内の雰囲気づくりも大切です。店内BGMを工夫し、資金に余裕があれば、イスなどの店内インテリアにこだわりを見せてみてはいかがでしょうか。
また、近年リモートワークをする人が増えていることから、Wi-Fi環境を整えておくことも重要です。
カフェ経営の魅力
経営を続ける難易度が高く、儲からないとさえ言われるカフェ経営にはどのような魅力があるのでしょうか?
オーナーが店に立たなくても良い
カフェオーナーはカフェの経営、コンセプトの立案、内装や家具・備品類の購入の検討、スタッフを教育するといったさまざまな仕事があります。
小規模なカフェであれば、オーナーが一人でお店を切り盛りすることもできますし、オーナーが店には立たず、自分以外の店長やスタッフを雇用して、自身は経営に専念するという選択をすることもできます。
カフェの経営は特別高度なスキルは必要なく労働量もそこまで多くないので、比較的小さな規模で運営を始められるところが魅力の一つです。
広告費がかからない業態
カフェの広告にはチラシの配布やショップカードの配布などが挙げられますが、現在の主流はSNSやレビューサイトを活用した「口コミ」とされています。
さらに、カフェを利用するユーザーは「近いから」や「たまたま見つけた」という理由で来店することが多く、さらにリピーターが生まれると業績安定しやすいという魅力があります。
失敗しないための、カフェの経営方法
ここまででカフェの経営は難易度が高いことをお伝えしましたが、うまく軌道に乗せていくためにはどのような方法をとれば良いでしょうか。
自己資金+融資で開業
大半のカフェ開業が自己資金+融資のケースです。会社員時代の貯金と銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などから融資をしてもらい、開業資金と運転資金を調達します。
金融機関では「開業融資」という制度(ローン商品)を利用することにより、実績や社歴がなくてもまとまった資金を融資してもらうことができます。しかし、希望する融資額を達成するためには、明確な事業計画書とコンセプト、開業する本人の熱意で融資担当者の面接をクリアしなければなりません。
スモールM&Aで開業
既存のカフェや喫茶店を買収、事業承継をする「スモールM&A」による方法もあります。
たとえば、老舗の喫茶店のオーナーが高齢を理由に店を300万円で譲りたいとの申し出があった場合、300万円で店舗、厨房機器、家具等、さらには顧客まで引き継いで経営することができます。スモールM&Aを活用すれば、開業時の資金、カフェ経営のノウハウなどさまざまなハードルを一気に飛び越えられます。
カフェの経営をM&Aで実現する際のポイント
ここから、スモールM&Aでカフェ経営を実現するためのポイントを紹介します。
M&Aの流れ
M&Aは以下のような流れで進むことが一般的です。
1. M&Aの専門家にどのようなカフェを経営したいか相談
2. 希望に沿った売り手が見つかれば、マッチング
3. 売却条件で双方合意にいたれば基本合意書を締結
4. 専門家に依頼してデューデリジェンスを実施
5. 譲渡する資産を明確にした店舗資産譲渡契約を締結
6. 買収金額の授受・物件や資産引き渡し
取引金額の算出基準
M&Aで引き渡されるのは、土地・建物のように目に見えるものに限らず、その店の知名度や評判も含まれるでしょう。そのため、買収金額の算出にあたっては売上高、将来性、従業員・店舗数、立地などを総合的に判断することが一般的です。
M&Aの相談先はどこ?
「M&Aの流れ」の1でわかるように、M&Aを進めることを決めたら、まずはM&Aの専門知識を持つ人に相談します。具体的には、取引金融機関、M&A仲介会社、会計士や税理士などです。
事業承継・引継ぎ支援センターのように、公的機関で相談に乗ってくれる場所もあります。
カフェ経営は難しいが、そのぶん魅力がある
カフェ経営・開業の魅力と具体的な方法について解説しました。
ここまでお伝えしたように、カフェ経営は安定して利益を出すことは可能ですが、決して儲けが大きいビジネスとはいえません。しかし、地域の住民に愛され、憩いの場になるという得難い価値があることもまた、カフェ経営の大きな魅力です。これからカフェを経営してみたいという人は、ぜひ経営手段のひとつとしてM&Aも検討してみてください。
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