ノウハウ

2018.10.23

地方の老舗がM&Aで後継者が見つけられない本当の理由

▼ 何故いない?老舗企業の後継者

 

こんにちは。バトンズ運営人 アンドビズCEOの大山敬義です。

それにしても最近、本当に老舗のお店やら会社の廃業のニュースが多くなりましたね。
今年の数ある廃業の中で個人的にショックだったのは、子供の頃の駄菓子屋の定番「梅ジャム」の梅の花本舗さんの廃業。
元々は終戦直後の紙芝居屋さん向けから始まったのだそうですが、私の頃は流石にもう紙芝居屋さんは無く(本当に子供の頃はあったような気もしなくもありませんが)、駄菓子屋さんの軒先きとか、あるいは縁日の景品とかで本当に馴染みの商品でした。
確かに今時の子供向けではないのかもしれませんが、社長さんが87歳となり後継ぎもいないことから、創業70年の区切りである今年廃業を決断したのだそうです。

帝国データバンクの調べによると、業歴100年以上の企業の2017年度の倒産・休廃業・解散件数は461件で、過去最高だった東日本大震災直後の2012年度の417件をも上回り、過去最大の数なのだそうです。
その理由も経営者が高齢となり、後継者もいないため、と皆判を押したようなもの。

でもちょっと考えてみてください。
以前とは異なり今は後継者を探すための仕組みはいくらでもあるはずです。
そもそも私のバトンズだってもちろんそうですし、ネットではなく人がおこなう第三者承継の会社なら検索すれば1000や2000は軽く出てきます。
それに民間だけでなく、事業承継引き継ぎ支援センターのような公的な機関も全都道府県に設置されていて、相談には無料、又は安価で応じてくれます。

それなのに、一体何故これらの老舗は後継者を探すことができないのでしょうか?

 

▼ 小規模企業のあとつぎ探しを阻んだ地域内マッチングの呪縛

 

昨年の話ですが、150年余りの歴史を持つ老舗の菓子店が地元の方に大変惜しまれつつ廃業しました。
地域の贈答品の定番であった上に、宮内庁御用達であった時代もあるそうで、廃業した時は地元紙に大々的に記事が載り、TVでも取り上げられたほどです。
それだけの店なら誰か継ぐ人もいそうなもので、実際店のご主人はこの味と伝統を受け継いでくれる人を、地元の公的機関を通じて探すことを考えていました。

しかし、結果として相手は見つかりませんでした。
もっと正確に言えば「地元では」見つけることができなかったのです。
この店の場合、地元では有名すぎて情報を小出しにせざるを得ず、結果として探索が非常に難しかった、という事情があったようです。
しかし皆さんなら、きっと地元でなくとも、全国からやる気や能力のある人を募ったらいいのではないかと思われると思いますし、私自身もそう思います。
しかし、相談を受けた機関は、店のご主人がそう望んだわけでもないのに、地元でのマッチングに拘り続けました。
ようやく私の耳に入った時にはもう廃業が決定した後だったのです。
では何故相談を受けた側は、何故そこまで頑なに地元マッチングに拘ったのでしょうか?

実際のところ、M&Aの一つの常識として、情報をコントロールするため、自身の活動範囲やよく知っている企業にマッチング対象を限定する、というのはよくあることです。
これ自体は決しておかしなことではないのですが、どんな規模の事業であっても同じレベルの情報コントロールが必要なわけではありません。
小さな事業の引き継ぎの場合は、思い切ってある程度内容を伝えた方が得策な場合はいくらでもあるのです。

もう一つ厄介な側面として他県や大都市の企業に地元の企業を渡したくない、という愛郷心の発露である場合があります。
これはこれで、地元のことは地元でなんとかしたい、という気持ちはわからないでもありませんし、見方によっては尊いことだとも思います。
しかしここに東京の会社が引き継げば地元との付き合いがなくなる、うちの取引もなくなると言ったある種の利害関係の連想が働くと、会社の存続より地元縛りに拘ると言う本末転倒な事態に陥り、結果として地元の会社がなくなってしまう、と言う身も蓋も無い結末になってしまうのです。

因みに、先ほどの会社の場合は、私に相談があった時さえ、宮内庁御用達だったことはもちろん、業歴が150年以上あったことも、それどころか何を作っているのかさえ明かされませんでした。
確かに通常M&Aの世界では、通常これくらい厳格な情報のコントロールが必要なのですが、それは少なくとも年商数億円以上の企業のお話です。
「地方の和菓子屋 年商1億数千万」程度の情報では、誰も関心を持たないことなど明らかで、実際具体的に手を上げた先は案の定ゼロでした。

廃業が報道されると、全国ニュースとなったこともあり、あの老舗がなくなるのかと大きな話題となり、中には自分がやりたかったのにと言う話もあったのだそうです。
もし、最初に本当に店の魅力を伝えるに足る必要な情報を開示し、広く日本中から相手を募っていたならば、この店は150年の伝統を途絶えさせることなく、次世代にその味を伝えることができたのかもしれません。
本当に残念なことです。

 

かつての私も含めた多くの専門家が、結果的に小規模企業には過剰だった情報のコントロールや、不必要な地域内マッチングに拘るあまり、多くの企業を廃業から救えなかった反省から、バトンズでは二つのことをポリシーにすることにしました。
一つは、開示できる範囲で、経営者の想いと、事業の特徴が伝わる情報を、少しでも多く提供すること。
そしてもう一つは、経営者自身の希望がない限り、マッチングする地域には一切の制限をつけないと言うことです。

それによって、今までできなかった小規模企業の後継を、一社でも二社でも多く見つけることができたらいいと私は思うのです。

(執筆)

オンライン事業承継・M&Aマッチングサイト

運営人 アンドビズ株式会社代表取締役
大山 敬義

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