新潟県見附市に本社と工場を構え、制御盤製造と電気配線を専門に手がける「ロジックメイト有限会社」は2023年7月、兵庫県神戸市を拠点に産業機械の電気設計や装置の開発・設計を行う「株式会社室住設計」に会社譲渡を実施されました。ロジックメイトの創業者である藤澤勝也様がM&Aを考え始めたのは、ご自身の年齢が60歳を迎えた頃のこと。「まだ自分が元気なうちに次世代に引き継ぎたいと思った」と話す藤澤様が、バトンズを利用した背景やM&Aが成約するまでの経緯などについてお話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | ロジックメイト有限会社 |
業種 | 製造業 |
拠点 | 新潟県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社室住設計 |
業種 | 製造業 |
拠点 | 兵庫県 |
譲受理由 | 事業拡大 |
苦しい創業期を乗り越え、30年以上続けてきたロジックメイト
ロジックメイトは設立から約30年以上、産業機械や工作機械に使用される制御盤製造と、機体内配線作業の受託製作・施工を専門に事業を展開してきました。
制御盤とは、工場の機械や設備などを制御するために電気部品や電気機器を配線して自動制御を行う装置のことを指します。ロジックメイトでは、その配線作業はもちろんのこと、正常に機能するかどうかの試験までを一貫して手掛けている会社になります。
「主に産業機械を取り扱うお客様から依頼を受けて受託製作・施工を行っています。ご依頼いただく業界は幅広く、例えば麺を作るための粉を照合する混合ミキサーの制御盤や、ゴミ処理時の粉砕や破砕をするための機械などです。お客様のご要望に合わせて、機械に応じて開発・設計しています。」
最初、豊橋、栃木、横浜の家電工場で研修後、製造技術・サービス部門を10年間行なっていた藤澤様。その後は地元である新潟に帰り、制御盤を専門とする会社に就職。そこで10年ほどお勤めになられたあと、独立してロジックメイトを創業されたそうです。
「長らくこの業界に携わってきているので、自分の手で事業を手掛けたいと思い、創業しました。ただ、創業時はちょうどバブルが崩壊した頃でして。最初のお客様がつくまでの道のりは、とても厳しかったです。そんな中でも大事にしてきたのは、お客様のご要望に真正面から向き合うということですね。この信念を曲げずに真面目に経営をしてきたおかげで、お客様からの信頼も獲得できるようになり、この業界で50年以上働くことができているのだと思います。」
「自分が体調を崩してからでは遅い」早期からM&Aを考え始めた理由
不景気で日本経済が落ち込んでいる苦しい創業期を乗り越えて、事業を展開されてきた藤澤様。大事に育ててきた事業を手放すことを考え始めたのは、60歳を迎えた頃からだったそうです。
「自分の年齢のことと、後継者がいないという不安がずっと頭の中にありましたね。誰かに事業を譲るか、譲渡先が見つからなければ廃業するかと考えていました。理想としては『どなたかに引き継いで欲しい』という気持ちが大きかったので、自分が動けない状態になってから探し始めるのでは遅いと思い、まずは譲渡先を探すために動き出しました。
最初は新潟県事業承継・引継ぎ支援センター(※)に登録しました。正直なところ、後継者が見つかるという期待はあまりしていなかったです。業界も事業内容もニッチなので、興味を持ってくれる人がいるのかどうか、半信半疑でしたので。」
特殊な事業を手掛けているからこそ、本当に興味を持ってくれる買い手が現れるのか、不安に思っていたという藤澤様。だからこそ、自分が動けるうちから事業をどうするのかを考え始めておいてよかったといいます。
「やはり、早くから探し始めておいて本当に良かったなと感じます。事業承継をした後も、引継ぎや準備期間などいろいろあるので、その期間を想定した上で早めに動き始めるのは大事だと思います。また、会社の機能として1番重要な『経営』の部分を引き継いでもらうわけなので、この人であれば任せたいと思える人に出会えるかどうかも重要です。そう考えると、早め早めに譲渡先を探し始めておいて良かったなと思いますね。」
(※)事業承継・引継ぎ支援センターとは ‥ 国が設置する公的相談窓口。 全国47都道府県に設置されており、後継者不在の中小企業・小規模事業者と譲受を希望する事業者とのマッチングを支援する機関。
リーズナブルで支援体制が整ったバトンズを通じて成約へ
ロジックメイトを譲り受けたのは、神戸市に本社を構え産業機械の電気設計に特化した事業を展開する「株式会社室住設計」でした。藤澤様は、新潟県事業承継・引継ぎ支援センターからバトンズを紹介してもらい、室住設計との出会いが実現しました。
「M&Aは初めての経験だったので、ある程度のサポートは必要としていたものの、それほどお金はかけられないという気持ちでした。そこでバトンズを紹介していただき、リーズナブルな価格で譲渡先探しができる点が良いなと思い、利用してみることにしました。
譲渡先の希望として、シナジー効果を見込める同業の会社が良いと思っていました。実際に何名かとお話しすることができ、本社に見学に来ていただいた方もいらっしゃったのですが、ちょうどコロナが拡大し始めたタイミングと重なってしまったので、なかなか思うように交渉を進めることができませんでした。あの時は産業全体がコロナの影響を受け、ロジックメイトや取引先でも売り上げに大きな打撃を受けましたね。」
コロナの影響もあり、一時は諦めかけたという藤澤様ですが、コロナ禍が落ち着き始めた頃に室住設計の出会いが実現。室住設計の代表取締役を務める室住様と初めて対面でお会いした際には「とにかく正直で明るい、裏表のない方」という印象をもったといいます。ストレートで率直な意見を言ってくださるそうで、だからこそ安心して会社を任せられるのだと藤澤様は話しています。
いずれは来る決断、早くからM&Aを考えることがオススメ
M&Aを決断した当時、従業員の皆様にはどうお伝えになって、どのような反応だったのでしょうか。
「従業員には、後継者を考え始めた6〜7年前頃から方針については伝えていました。現時点では後継者がいないこと、良い譲渡先があればM&Aを考えていることなど、自分の考えを正直に伝えていました。そのため、今回の話を伝えたときも、従業員は驚いていませんでしたね。
また、M&Aをして1年経った今も、これまでと業務内容は変わっていないため、良い意味で変化を実感していないのだと思います。指揮系統や業務内容がガラッと変わってしまった場合は戸惑うかもしれませんが、譲渡先の室住様の配慮もあり、心配な点はありませんね。」
業務内容はこれまでと変わらない一方で、M&Aにより金銭的な面で肩の荷がおりたと、安堵の表情を見せる藤澤様。引継ぎ期間として現在も働かれていますが、引退後は趣味の時間をもっと作りたいと笑顔でお話しいただきました。最後に藤澤様より、今後M&Aをお考えの経営者の方に向けたメッセージをいただきました。
「あまり固く考えず、自然体が1番良いのではないでしょうか。今すぐ譲渡を考えていなくても、今後その決断を考えざるを得ない時は必ず来ると思います。ですので、まずは気軽に事業承継・引継ぎ支援センターに登録してみたり、バトンズのようなサイトを覗いてみたりするのがいいのではないでしょうか。M&Aを考え始めると、譲れない自分の軸が見えてくると思います。
また、実際に譲渡をするタイミングが来た際、普段の仕事を行いながら初めてのM&Aを進めていくのは、正直大変です。私はバトンズの川村さんにサポートを依頼して無事成約することができました。M&Aが初めての方や忙しい方は、プロの力に頼ることをお勧めします。」
藤澤様とロジックメイト有限会社の今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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