スカイ・スクラッパーズ株式会社の代表取締役である田村徹様は、経営コンサルタント・行政書士として、大小さまざまな規模、あらゆる業種の経営支援・法務支援に取り組まれてきました。田村様は、M&A 当事者(譲渡側と譲受側)としての実体験をきっかけに、M&A支援者としての活動を開始。これまで多数の M&Aをご成約に導いています。
今回は、田村様が経験された M&Aの詳細や M&A支援のケーススタディ、そしてM&A支援に対する想いなどについてお話を伺いました。
【田村様の略歴】
・1986 年、大学卒業
・サラリーマンや個人事業主を経て自ら複数社の中小企業経営を経験し、パラレルキャリアで上場企業の連結子会社、中堅ネットベンチャー企業グループや中国政府系企業などのマネージメントにも参画。その間、M&A の譲渡側と譲受側の両業務にも従事
・2009 年、京都市にスカイ・スクラッパーズ株式会社を設立
・2012 年、大学院で学修し、47 歳で MBA(経営学修士)取得
・2014 年、大阪市にICT法務サポート行政書士事務所を開業
・2022 年、バトンズ M&A相談所・大阪本町センター店を開設
【スカイ・スクラッパーズ株式会社の概要】
京都市を拠点に、事業承継・M&Aの支援、経営コンサルティング、人材紹介(有料職業紹介事業)などを全国展開。中小企業庁「M&A登録支援機関」登録。大阪商工会議所所属(特別会員)。
会社 HP: https://sky-s.com/
会社設立前から、M&Aの当事者として多くの課題と向き合ってきた
最初のきっかけは、私自身が事業譲渡の当事者を経験したことです。27年ほど前、親族の関係で年商18億円超の会社の事業再生をする事になったのですが、その頃の私は経験が足りず、突破口を見出せないでいました。
当時の日本では、国内企業同士のM&Aは一般的ではありませんでしたが、大学の講義でM&Aのケーススタディが取り上げられたことが記憶に残っておりまして、窮地に立たされたとき、ふと「M&Aという選択肢があるのではないか」との考えが浮かんだのです。
M&Aが突破口になると思い付くと同時に、新聞にM&A仲介会社の見開き広告が掲載されていたことを思い出して、その出稿企業へ連絡しM&Aの支援を受けて買い手を紹介して頂きましたが、基本合意締結の直後に担当者が転職されることとなり、最後は自力で成約を実現しました。問い合わせをしてから成約までの約2年間は簡単な道のりではなく、大変苦労しました。
いえ、実はこのM&A成約後、私はその会社の経営層として残ることになりました。その一方で、仲介会社の担当者だった方がネットベンチャー企業グループの持ち株会社へ転職されていたため、その方からお誘いを受け、その傘下の事業会社の社長も兼務することとなりました。
その後、「積極的にM&Aを展開したいので協力して欲しい」という話になり、持ち株会社に籍を移しました。ここでは、経営企画の責任者として数億規模の企業買収や資本参加を複数回経験しました。また、PMI(Post Merger Integration)の実務も担当しました。
ただし、当時は中小M&Aを取巻く環境が未整備だったため、中小M&Aに固有の諸事情を正しく認識しているビジネスマンは希少で、トラブルが絶えませんでした。そのため、私が譲渡側との間に立ち、トラブルの解決にあたることも多々ありました。そのような背景があり、当時は中小M&Aに対してネガティブな印象を抱いておりました。
設立当初は、中小企業経営のゼネラルなアドバイザーとして、(親族内や企業内の)事業承継、第二創業、ビジネスモデル構築や業態変革、新商品やサービスの開発、広報や内部統制などの支援が主要業務でした。M&Aの支援は、顧問先企業が事業の一部譲渡を行う際に、LA(Legal Adviser)として法務面から潜在的なリスクを回避するためのアドバイスなどを提供し、契約書の作成や鑑定などを行うに留めておりました。
その後、事業再生で関与した企業の出口戦略としてM&Aを活用したりしながらM&Aアドバイザーの実務経験を重ねていく中で、中小M&Aを取巻く環境の整備が進み、「自らが体験してきたことや経験を活かし、M&Aアドバイザーとしても、より多くの中小企業経営者の役に立ちたい」と思うようになり、FA(Financial Adviser)に特化して、積極的にM&Aアドバイザーとしての活動にも取組み始めました。
また、顧問先に許認可業種が多かったこともあり、2014年に「ICT法務サポート行政書士事務所」を大阪市中央区に開業しました。こちらでは、企業の予防法務ほか、医療法人や医療機関に係る法務の支援と外国人の在留資格申請に係る申請取次業務を行っており、その関係で、スカイ・スクラッパーズ株式会社では人材の採用支援も行うようになりました。
仕組みを知り、バトンズに可能性を見出す。厳しい譲渡案件も成約に導く
以前からバトンズの存在自体は知っていましたが、当初は胡散臭いと感じていました(笑)。公式サイトに、「M&Aのプロセスを最短 3 カ月で終わらせられる」と記載されているのを見て、「本当?」と斜に構えて見ていましたね。しかし、仕組みを詳しく知ってその可能性に気づき、その時は、手元には具体的な譲渡案件は無かったのですが、直ぐに「バトンズ M&A相談所」に登録したいとご担当者に連絡しました。
サービス業の譲渡案件で、財務状況は非常に厳しく、資本金の数十倍の負債を抱えていました。また、資産価値のある不動産なども所有しておらず、一般的には成約が難しいと言われるようなケースだと思います。
それでも「何か突破口がないか?」とリサーチを続けたところ、予約サイト内のカスタマーレビューが高評価であることに気付きました。その理由を売り手の社長様に確認すると、スタッフの教育に情熱を注がれているため、顧客満足度が高いことが分かりました。
売り手様の店舗には約50名のスタッフが在籍されており、有資格者も多く含まれていましたが、この規模の人材獲得には、高額な人材紹介料や求人広告費が必要です。この部分を買い手様に正確に伝える必要がある、と考えて、バトンズ内で買い手候補者を検索し、提案のメールを送信し続けました。
3社が譲受希望の意思を示してくださいましたが、そのうち、首都圏の同業者と成約になりました。売り手様は近畿圏において複数店舗で事業展開されていたので、近いエリアの買い手様とのマッチングも考えたのですが、私の経験則から、売り手様の営業エリア(店舗の立地と商圏)は首都圏の同業者からの潜在的ニーズが高いと予測できました。
そこで、3社のうち首都圏で同業をされている 2社の企業様には「売り手様の営業エリアにご関心はないですか」と質問したところ、「このエリアへの進出を検討しているが、現地での人材採用が進まない」との回答がありました。
その回答に、私は「このエリアでこれだけの人材を獲得するには、相当な時間と費用がかかります。このエリアで事業を譲受すれば、すぐにご希望の事業展開が実現できますよ」と伝えました。これにより首都圏で同業をされている2社の企業様が譲受に前向きになられ、そのうち好条件をご提示頂いた企業様との成約が実現しました。
最近は「知的資産経営」という考え方が注目されています。知的資産の 1 つが人的資産であり、他にもブランドやノウハウ、特許権などの産業所有権が挙げられます。こういった知的資産を組み合わせて収益力を上げていく経営が、知的資産経営です。特に中小企業のM&Aでは、売り手様も買い手様も知的資産を重視していく必要があると考えています。
橋渡し役がポジティブになれば、最善の結果を得られる
自分の心に正直になり、依頼者の皆様を支援することを心掛けています。
例えば、以前、私が売り手側の FA としてオンラインで面談した買い手様に、M&Aで起業を検討されている方がいらっしゃいました。この買い手様はそれなりの資金を保有されておられましたが、ご経歴を拝見して「M&Aは時期尚早なのではないか」と感じました。
私は言葉を選びながらも、その意見を述べさせていただきましたが、先方は「あなたは M&Aを前に進めるのが仕事だろう!」とご立腹になられて、以後のやりとりはなくなりました。
その後、だいぶ月日が経った頃、私の事務所にその方からお手紙が届きました。私が当時お伝えしたアドバイスが時間差でお役に立ったようで、悪意のあるM&A案件を契約直前で回避できたとのことでした。お手紙には、「あのときは生意気なことを言って申し訳ありませんでした」という言葉が添えられていました。
別の譲渡案件では、買い手様から「その正直すぎるスタンスでは、仕事にならないのでは」と言われたこともあります(笑)。もちろん、仕事は好き嫌いだけでは成立しません。しかし、私は自分が納得できない案件を無理に進められないタイプです。納得できないことは、どこまでも納得できない。そのため、結果的に自分の気持ちに正直になり、依頼者と向き合うことになります。
自分の気持ちに正直になると、仕事がポジティブに進められます。橋渡し役である私がポジティブな姿勢を持つことで、売り手様や買い手様が最善の結果を得られると考えています。
スムーズに成約になる案件も大歓迎ですが(笑)、私の性格に合っているのは、他のM&Aアドバイザーが敬遠するような大きな課題のあるような譲渡案件かもしれません。障壁がある案件を担当しているときは苦心しますが、成約まで辿り着いたときは、大きなやりがいを感じます。私らしい生き様にこだわって、このやりがいの部分を、いつまでも大切にしていきたいと思います。
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