東京都台東区を拠点に、ビルの清掃・メンテナンス、リフォーム事業を行う井口商事株式会社。代表取締役社長の藤田様は、創業40周年の節目にリタイアを考え、事業継承を決断されました。『これからの人生は、ビジネスに軸足を置いた利益の追求ではなく、ボランティアのような形で社会と関わっていきたい』と話す藤田様に、井口商事を受け継いだ経緯や初めての事業継承の経験について、お話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 井口商事株式会社 |
業種 | ビル清掃・メンテナンス、リフォーム事業 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社ライジングトラスト |
業種 | 不動産 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 既存商品・サービスの強化 |
「うちの事業を面倒見てくれないか?」ゴルフ仲間からの誘いで事業を引き継ぎ
今年で創業40周年を迎えた井口商事株式会社は、東京都台東区を拠点に置き、ビルの清掃・メンテナンス、リフォーム事業を行う会社です。
創業当時は清掃の会社だったという井口商事ですが、お客様から修理やビルメンテナンスの要望が増えてきたことで、事業を横展開していきました。
「先代が、町の工務店や電気屋さんに依頼をして見積もりを出し、そこに井口商事の利益を乗せて、文具屋さんにワードで見積書を作ってもらってお客さんに持っていく。そんな形で始まった会社でした。」
今回M&Aを行なった藤田様は2代目の社長。会社を受け継いでから、10年間に渡り会社の経営を担ってきました。先代の社長との血縁関係はなく、もともとはゴルフ仲間だったのだそう。
「もともと自分は㈱藤田建設企画という会社をやっていて、先代の井口さんから『うちの事業も面倒を見てくれないか?』と話を貰いまして。井口商事は、バブルの頃は年商が2億ほどあるような会社だったんですが、その後は赤字が続いていて。まずは、お手伝いする形で会社に関わるようになりました。」
経営を立て直した10年間を経て、自身も事業承継を決断
藤田様がリフォーム事業を担当するようになってからは、業務のスピードが上がり、お客様との成約率も向上した井口商事。そうして業務に関わるようになってから2−3年が経った頃、先代社長の井口様から『息子たちは会社を継がないから、代わりにうちの会社を買ってくれないか』と持ちかけられ、井口商事を引き継ぐことを決断されました。
「当時の井口商事は、家族経営で経営赤字、社員さんたちには十分な福利厚生が整っておらず、社内環境は劣悪でした。でも、井口商事が持っているお客さんは経営者だったり、ビルのオーナーさんだったりと、立派な方々が多かったんですよ。借金をして会社を継ぐことになっても『これはチャンスだな』と思いました。」
引き継ぎ後、見事に経営を立て直し、これまで事業を続けてこられた藤田様。会社を継いで10年という節目で『ここまでが自分の限界だ』と感じ、会社を次の経営者に託すことを検討し始めました。
「会社を継いでからの10年、社員には『ずっと僕が社長で居続けることはないんだから』と、常々話をしていました。うちには、『お客様からありがとうと言われる仕事をしよう』というスローガンがありまして。社員には、僕がいる間にスキルを磨いて、誰にも負けない仕事ができるようになってくれと言い続けてきました。
ですので、M&Aをするという話をした時も、みんな抵抗なくスーッと受け入れてくれましてね。僕が選んだ会社なら、自分たちのマイナスになるようなことはないだろうと思ってくれていたんじゃないでしょうか。」
予想をはるかに上回る買い手から連絡が殺到!自身でもわからなかった会社の価値
会社譲渡を検討する中で、日本政策金融公庫からM&Aの話が一度出たものの、自社の都合により頓挫。再び検討していくうちに、バトンズのことを知ったそうです。
「金融公庫の担当の方が熱心で、親身になってくれる方でして。その方から『この状況なら、バトンズさんであればかなり該当する買い手が見つかるはず』だとお話をいただきまして、乗ってみることにしました。」
売却案件としてバトンズに掲載をしたところ、掲載直後から藤田様の元には買い手希望者からの連絡が殺到。予想外の事態に、すぐに掲載の一時停止を希望したほどでした。
「ほんとにびっくりしましたよ。一週間くらいは携帯が鳴りっぱなしでね、すっかり戸惑ってしまいました。かなりたくさんの方から、すごく積極的に申し込みをいただきまして。それだけ引っ張りだこな事業だなんて、思ってもいませんでしたから。」
希望条件通りの企業とマッチング。事業に精通した、信頼できる会社
藤田様の譲渡先の希望は、『リフォームの仕事ができる会社であること』。数ある応募者の中で、今回成約に至った「株式会社ライジングトラスト」は、まさに希望通りの会社でした。
「清掃の事業をやっている会社はたくさんありますが、リフォームの分野にまで明るい企業はなかなかありませんので。もちろん清掃はやりつつ、建築の分野の知識もあって、力を入れているところが良かったですね。
たくさんの個性的な応募者の方々がいましたけれど、ライジングトラストさんとは構えることなく自然に事業の話ができました。お話があってすぐに、実際に現場を見に行ったんですが、彼らが手がけた建物が台東区にあるのも有利でしたね。お会いした翌日には、もう決めていました。」
また、早めに引き継ぎを終わらせてリタイアをしたいという希望もあった藤田様。他の応募者の中には、金額や条件がいいところもあったものの、引き継ぎに時間を要する企業が多かったと話す藤田様。スムーズに引き継ぎが進みそうであったことも、ライジングトラストに引き継ぐ決め手となったひとつでした。
「ビジネスの一線から離れて社会を関わっていきたい」リタイア後の将来展望
「今回のM&Aでは、買い手側のライジングトラスト担当者様が全てリードしていただいたことで、スムースに進み大変ありがたく思いました」と、初めてのM&Aを振り返る藤田様。条件提示をほぼ100%以上満たした企業への譲渡が決まり、安堵の表情を見せておられました。
「僕がこうして事業承継をしたことで、身近な社長さんやビルのオーナーさんがM&Aに非常に興味を示してくださいましてね。僕に触発されて、会社を売却してリタイアしようっていう方もいらっしゃるんですよ。実は自分も考えているっていう方が、結構いるんじゃないでしょうか。僕の話を聞いて、一度自分事として捉えてもらえたらと思います。」
そんな藤田様に、最後にご自身の今後の展望を伺うと、「これからは、ビジネスの第一線から離れて社会と関わっていきたい」と、これからの道筋をお話してくださいました。
「正直に言うと、どんな企業の社長もそうなんだと思いますが、社員たちをまとめて、会社を経営していくっていうのはかなりの負荷がかかります。ここまでやってきて、踏ん切りがついたといいますか。これからはストレスのない生き方をしたいと思っています。
これまで培ってきたものはありますから、それらを活かして、建築系のボランティアをやろうと思っているんですよ。今までは利益を追求するために建築や営業のノウハウを使ってきましたから、これからは利益の絡まない世界に入っていきたいですね。ビジネスの第一線から離れて、社会と関わっていこうと思っています。」
一企業の社長という責任ある立場を離れ、新たな道へと進まれる藤田様。
藤田様と井口商事株式会社の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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