ご実家の印刷工場で長年勤務されたのち、広告代理店として独立・起業された石﨑様は、バトンズを通じて伝票専門の老舗の印刷会社である「株式会社ジムデン」を引継ぎされました。長年、現場の声を聞いてきたからこそ踏み出せたという事業承継について、「S.J.PLUS株式会社」の代表取締役である石﨑様と、今回のM&Aをサポートされた「きらやかコンサルティング&パートナーズ株式会社」の斎藤様に、お話を伺ってまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社ジムデン |
業種 | 印刷業 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | S.J.PLUS株式会社 |
業種 | 印刷・広告業 |
拠点 | 宮城県 |
譲受理由 | 商流拡大 |
自分の経験を活かして、悩んでいる現場の方々の手助けがしたい
買い手である石﨑様のご実家は印刷工場を経営されており、石﨑様のキャリアはそこからスタートしました。
営業からはじまり、営業部長、総務、専務取締役と、約20年間で多様な経験を積まれたのち、独立・起業。仙台を拠点に置いた広告代理店、S.J.PLUS株式会社を立ち上げました。
そして独立から約3年後の2021年4月には、人員の増加により法人化をされ、現在は2期目となります。
石﨑様が町工場や印刷業界で長く働いてきた中で、「地方での販路拡大に悩んでいる」「うまく利益を出せていない」「売上が上がっても継続の仕方がわからない」といった、さまざまな現場の声を聞いてきた背景があり、M&Aという決断に踏み切ったのだそうです。
「日々の業務をやって、払うものを払って……。経営は成り立っているけれど、うまく会社を回せていない、どうやったら良いかわからないという印刷工場をたくさん見てきました。それをうまく改善したり、収益化のお手伝いをするのが今の僕の仕事です。自分の事業を拡大したいという思いもありますが、それよりも、自分の経験を活かして悩んでいる現場の方々をお手伝いできないかという想いから、M&Aに興味を持ちはじめました。」
過去には、知り合いからの紹介で一度買収の話が持ち上がったものの、交渉の途中で頓挫。そして、そのときの経験が石﨑様のM&Aへの気持ちを一層盛り上げる追い風になったそうです。
その後、M&A支援やコンサルティング業務を専門とする「きらやかコンサルティング&パートナーズ株式会社」の斎藤様に相談をする中で、バトンズというM&Aプラットフォームの存在を知り、本格的にM&Aに向けて動き出します。
「私はM&Aに関しては全くの素人です。斎藤様には助成金の申請から交渉まで、手取り足取り助けていただきました。M&Aの実務は完全にお任せしていたので、斎藤様無しには今回の成約は実現しなかったと思います。とても助かりました。」
まずは自身の経験が活かせる、シナジーがある領域で
今回石﨑様が買収に至った株式会社ジムデンは、1965年から続く伝票専門の印刷会社。ベテランのスタッフがおり、顧客数も安定しているという強みがありました。
S.J.PLUSは会社を法人化してからまだ2年。これからという段階にある企業としては、まずは印刷業や広告業といった自分が経験してきた領域でM&Aをチャレンジしたいという想いがあったそうです。
「S.J.PLUSは、デザイン・企画を売りにしていますし、本社の印刷工場にも、チラシやパンフレット、伝票印刷のノウハウがあります。自社と株式会社ジムデンが融合することで、これまで培ってきたスキルや経験を活かし合い、新たな販路開拓に向けて効率的に営業攻勢がかけられると考えました。また、関東エリアでの事業拡大を視野に入れていたので、東京という立地も魅力的でした。」
ジムデンは公開当初、多数の買い手から交渉依頼が入っていた人気案件でした。その中から選ばれる形となった石﨑様。印刷業界で長年経験を積まれていたという点が、交渉の際にプラスにはたらいたのではないかと石﨑様は話します。
「一般の人からすると、印刷工場は全部同じに思えてしまうと思いますが、実際には使っている機械、運用の仕方、業務の内容などがわかっていないと、運営するのが難しい仕事だと思います。ニッチな業態だからこそ、経験のある人に引き継ぎたいと思ったのではないでしょうか。」
そんな本成約をサポートされたきらやかコンサルティング&パートナーズの斎藤様は、事業を紹介するにあたって「売り手、買い手が希望する業種をマッチさせ、いかにシナジーが出せるか」が重視していたポイントだったと振り返ります。
「石﨑社長には明確なビジョンがあり、決断と行動にスピード感がありました。ですので、M&Aにあたり事業拡大に向けた時間的なコストカットができるか、かつ自分が持っているポテンシャルをいかに活かせるかを重視していました。」
共通の課題を洗い出して、一つ一つ解決することでコミュニケーションを取っていく
過去に一度M&A交渉の経験はあったものの、ご成約は今回が初めてとなった石﨑様。M&Aを実施する中で「実際に交渉を進めていくにつれて、資料だけではわからない、感情面の問題が出てきたこと」が印象に残っているとお答えくださりました。
「ジムデンの社長である徳田さんは、非常にまじめな方です。会社自体も、従業員の働きにくさですとか、そういった問題がないまともな会社。引き継ぎにあたり、社内環境の改善から行う必要がないのも買収の決め手でした。
しかし、だからこそ、代表が変わるのであれば、自分は会社を辞めるという声が従業員の方々から上がってきたんです。会社を引き継いだ時点で人材が揃っていなければ、事業継続はできません。従業員の継続雇用が条件だったので、まるっきりちがう話になってしまって……。」
M&A交渉において、従業員の離職問題は一つの壁であると言われています。今回の交渉をサポートされた斎藤様によると、社長が考えていた以上に、従業員の会社に対する想いが強く、考えが相違するケースはよくあるそうです。石﨑様は従業員の方々の気持ちを汲みながら冷静に話し合いを続け、最終的には従業員の雇用を維持する形で話し合いが成立しました。
引き継いだあとの従業員との今後の関係構築においては、あせらずゆっくり時間をかけて行っていきたいと語る石﨑様。年齢層が高いジムデンは、一番の若手社員で50代と、全員が石﨑様より年上にあたります。「これからはこうしていこう」と一方的に指示を出すのではなく、一緒に共通の課題を洗い出して、一つ一つ解決することでコミュニケーションを取っていきたいとおっしゃっておられました。
印刷業は受注生産が主流ですが、これからも攻めの姿勢で仕事を取りに行きたいと石﨑様は目を輝かせます。ジムデンは伝票の専門会社ですが、工場の空きスペースを活用し新製品の開発を進めたり、効率化を図り売り上げアップを目指したり、伝票プラスアルファの付加価値がいかにつけられるかを考えたりと、「従業員の方々と共に今後の道を探していきたい」とお話しいただきました。
進むべき道がはっきりしているのなら、M&Aを事業戦略の選択肢の一つに
今回M&Aをわからないなりにやってみたことで、経験値が上がり選択肢も増えたと話す石﨑様。
「M&Aは、家を買うのと同じように、なかなか経験できないことですよね。先のことを視野に入れないといけないし、資金がないと次々できることではありません。でも、わからないながらもやったことが経験やノウハウに繋がります。
また、一から事業を始めるよりも、既存の事業を引き継ぐことで時間も買えます。選択肢は多いほうがビジネスとして有利ですから、事業拡大や新規参入などを検討している人は、事業戦略としてM&Aを一つの選択肢にするのが良いと思います。」
加えて、斎藤様は「行動なくして前進はありません」と断言。M&Aは、目的により早く近づくための解決策の一つになり得るとお話してくださいました。
「既存事業から脱却できず、今後の生き残り戦略に悩んでいる事業はたくさんあると思います。今後の事業戦略を作り上げる上でM&Aはビジョンにより早く近づく手段になり得ます。特に東北はM&Aがまだまだ未開拓な上、後継者不足に悩む企業がたくさんあります。これからも、そういった悩みを前向きな解決する手段として、M&Aを提案していきたいですね。」
進むべき道さえはっきりしていれば、M&Aは課題解決の近道になります。
石﨑様とS.J.PLUS株式会社がこれから進む道が明るいものでありますように、バトンズ一同、心より応援いたしております!
本案件を担当した「きらやかコンサルティング&パートナーズ株式会社」の紹介ページ
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2023年05月15日
放送事業を展開する企業。映像制作会社を引き継ぎ、思い描く事業戦略とは?
関東・関西の2箇所に事業所を構え、放送事業を中心に事業を展開する株式会社アトス・インターナショナル。そこで取締役を務めるS氏は、これまでも...