日本最大級のクラウドファンディング「CAMPFIRE」の創設者でもある連続起業家の家入一真氏が、多種多様なニーズに応える”居場所”として立ち上げたのが、全国各地に点在するシェアハウスを運営する「リバ邸」です。
今回インタビューに応じてくださったのは、2018年に譲り受けたリバ邸を「株式会社リバ邸」として法人化し、現在も代表取締役としてご活躍されている片倉 廉様です。事業として好調に見えるシェアハウスの1物件を、どんな展望を持って譲渡するに至ったのか、片倉様のキャリアを含めて詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社リバ邸 |
業種 | シェアハウス運営など |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受側 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | 医療・不動産管理 |
拠点 | 神奈川県 |
譲受理由 | 起業・副業 |
「友達をつくるように居場所をつくる、友達と遊ぶように居場所を広げる」がコンセプト。
人との交流を目的として立ち上げたシェアハウス事業
もともと民泊の運営をされていたという片倉様でしたが、運営する中で民泊ビジネスと自身の価値観との間で“ズレ”を感じるようになったのだそう。
それは、チェックイン・チェックアウトのタイミングでしか顧客と接点が生まれず、それ自体もルーティン化していく民泊のビジネスモデルと、人との交流や友人との繋がりの中で事業展開したいという片倉様との間にあるズレでした。
そんな中で、民泊よりも圧倒的に人との交流が多い「シェアハウス」というビジネスに興味を持つようになった片倉様。
シェアハウスなら、運営すること自体が自分にとって心から面白い、楽しいと思える、「遊びと仕事の境界線がない」アソビジネス(遊びとビジネスの造語)であると感じたのだそうです。
「短期のお付き合いが基本となる民泊とは違って、シェアハウスは長期に渡って人と人とが接することになります。その中で、価値観を共有できたり、深い繋がりが生まれたりもしていきます。
また、友達の紹介で訪れる人が多いので、自然と同じような考え方・価値観を持った人が集まって、友達同士で暮らしているような感覚になるんです。友達の友達は友達ですね(笑)
遊びと仕事の境界線を溶かしながら、あやふやに暮らすことが自分の人生のコンセプトでもあるので、シェアハウスの運営は自分にとっては天職だったと思っています」
長年シェアハウスの運営に携わる片倉様に、その難しさについてもお伺いすると
「このビジネスモデルは、借りた物件を転貸するというものなので、利益のアッパーが決まっています。そのため、多くの物件を抱えないと利益総額を増やすことができないのは、事業を成長させたいと思った時に、ネガティブな要素になりますね。
実際、リバ邸も全国70件以上の物件があるのですが、今のスタイルだと全国各地に赴き友達と場をつくっていくのが体感として遅すぎるし、僕らの競合は1人暮らしという概念なので、既存の事業モデル以外でリバ邸を広げるためには新しい一手が必要だと考えるようになりました。
具体的に言えば、“借りて貸す”というサイクルから、“借りて貸して引き継ぐ”というサイクルへの転換を徐々に増やしていければ思っています。
これが形になれば引き継ぎ(売却)の際にキャッシュができて、今後リバ邸の場づくりの展開にも多様性が生まれ、引き継ぎ手(買い手)は場づくりに参加することができます。
M&Aという形で1つのシェアハウスを手放したのも、会社の戦略変更とそれを実現するための資金調達を同時に叶えるためでした」とのこと。
このような背景があり、片倉様の戦略的な事業譲渡がスタートしたのでした。
利益の追求より、コミュニティに対して思いが込められるかどうか。
決め手は「リバ邸と共に場づくりをしていけるか」
こうして、日本国内での場づくりをレベルアップするための資金調達を目的に始まったリバ邸の事業譲渡。
譲渡先の候補者を選定する際に掲げていた条件について、片倉様は
「このビジネスは、クライアントである住人との距離が近いので、ただ利益を追求するだけの人にとっては割に合わないビジネスモデルです。また、住人のことを考えても、彼らと積極的にコミュニケーションが取れるような人が良いと思っていました。
そのため、譲渡先を選定する際には面談を重視していて、実際に会って話してみた印象で決めていました」とのこと。
そんな片倉様が選んだのは、個人事業主である高山様(仮称)。ご両親が賃貸不動産管理の経験があり、シェアハウスの運営に興味を持っていた方だそうです。また、購入後もリバ邸で開催のさまざまなイベントに参加して住人を集めていこうと積極的に活動をされているとのこと。
「非常に物腰が柔らかく、売却後もスムーズなコミュニケーションを維持してくださり、お陰様で非常に良い関係性が築けています。シェアハウスを運営した経験がなかったとしても、高山さんのようなコミュニケーションを大切にされる方は結果がついてくるので、彼女に譲ることができた本当によかったです」
今回、M&Aプラットフォームサービスを利用して初めてのご成約を果たされた片倉様。使い始めた経緯や印象に残っていることについてお伺いすると
「リバ邸のフランチャイズオーナーが、かつて売り手としてバトンズを使っていた経験があると聞いていたのがきっかけです。当初は、本当に売れるのかなと半信半疑の部分もあったのですが、面接や内見まで進んだ案件は多かったので、こういったプラットフォームが活発に使われているんだなと驚きました。
シェアハウス事業では、初めてのM&Aだったので契約書の作成など大変なこともありましたが、とても貴重な経験をさせていただいたと思っています」と笑顔でお話しくださいました。
M&Aとは、新たな事業展開に向けた良質で合理的な資金調達ツール
今回の事業譲渡は、新たに場づくりの事業を開始するための資金調達手段であるとおっしゃっていた片倉様に、最後に今後の事業展望についてお伺いしました。
「本格的に推進していこうとしている戦略は、リバ邸のフランチャイズオーナーを増やしていくことです。
シェアハウスという”場”をつくれる人たちを全国海外に増やして、リバ邸は場をつくれる人たちのレーベルとして場づくりのプレーヤーを各地に増やしていくことです。
一方、中長期的な展望としては、シェアハウスを卒業した住人たちとの接点を生かした事業開発をしていくことです。シェアハウスに住んでいる人たちは20~30代の若者たちですが、結婚したりライフステージが変わったりすると、多くがシェアハウスを卒業していきます。そしてその後、彼らと継続的な接点を持ち続けることは難しくなってしまいます。
折角できた繋がりが途切れてしまうのは私としては寂しいですし、同じ想いをもっている卒業生もたくさんいるのではないかと思っています。私は、シェアハウスを卒業しても繋がり続けられるような会社にしていきたいと考えています」
そういった背景から、キャンプ場の運営をスタートしたリバ邸。結婚・出産などを機に卒業した元住人たちが、もう一度集まって楽しんでいるのを見たり、そのためのお手伝いができたりすることは、“遊びと仕事の境界線をなくす”という片倉様の人生観にもフィットしていると話します。
「M&Aというと会社の売買という印象が強かったですが、今回のような事業の売買という方法があり、それが会社の次の成長を叶える有効な手段であることが知れたのは大きな収穫でした。これからも積極的にM&Aを仕掛けていって、ビジョン実現のために会社を大きくしていきたいです」
ご自身の人生においてブレない価値観を持ち、人と繋がる温かさをモチベーションにしながらも、冷静かつ合理的な戦略を掲げて事業を育てる片倉様は、非常にバランス感覚に富んだ経営者でいらっしゃいました。
片倉様とリバ邸の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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