
▼新規事業を立ち上げる際、自社で一から事業を立ち上げる方法のほかに、他社の事業を買ってくるという方法も考えられます。事業の売買や引き継ぎはもはや大企業だけの専売特許ではありません。中小企業や個人事業主であっても小規模な事業を買ってくることにより新規事業開発のスピードを高めることが可能です。
事業を買うことのメリットとは何でしょうか。具体的な手法にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は事業を買うことの魅力に迫ってみます。
よく耳にするスキームという言葉、M&Aにおいては引き継ぎ方を指します。
事業を買うことのメリットとは?
事業を買うことは、事業に含まれる商品や不動産などの有形資産はもちろん、技術、ノウハウ、取引先、顧客基盤、流通網など無形の資産も合わせて取得することを意味します。
新規事業を立ち上げるには、マーケティング・PR、技術開発、従業員の教育などが多くのリソースを必要とします。そこで、経営資源がある程度そろった状態の事業を買うことによりコストや時間を大幅に削減することが可能となります。
また、手法によっては、自社に必要な事業だけを選択して取得できるというメリットが挙げられます。つまり、自社によって不要な事業は引き継がないという取捨選択ができます。会社を新設したり、清算したりすることなく、事業単位で売買することも可能です。
新規事業は軌道に乗らず失敗に終わることも多いです。つまり、一般には既存事業の拡大を目指すよりはリスクが高いと考えられます。しかし、すでに特定の分野で実績を上げている事業を購入すれば、新規事業参入のリスクを軽減できるというメリットがあるのです。特に近年では、作ったら売れるという時代ではないため既存事業の拡大も決して容易ではありませんので、新規事業参入のハードルが下がることで会社の成長戦略の描き方が大きく変わったと言ってもいいでしょう。
事業を買う際に留意すべき点
事業を買う場合に気をつけなければならない点もあります。まず、事業を譲り受けた場合でも、うまくシナジーを生み出せないことがあります。事業は物的な資産だけでなく、人材やノウハウなども含むビジネスの総体です。組織風土の違いなどで事業統合がうまくいかないことも想定されます。事業統合後に優秀な人材が流出して事業の運営がスムーズにいかなくなるケースもあります。
ただし、小さな会社や事業を引き継ぐ場合にはそもそもシナジーなど考える必要がないケースもあります。新規事業として飲食事業をはじめるとします。このとき例えばラーメン屋1店舗を引き継ぐとしたら、シナジー効果があるのでしょうか。近隣に既にラーメン屋をやっているのであればともかく、他の事業をしていて飲食事業に新規参入する場合には、よほどの特殊事情がないかぎりここにシナジー効果は生まれないでしょう。
また、後述するようなスキームの選択によって手続が煩雑になる場合もあります。たとえば、事業譲渡を受ける場合、個別の資産や契約ごとに引き継ぎの手続が必要となります。従業員の雇用契約についても個別の同意を得なければなりません。
事業を買う手法にはどのようなものがあるか
事業を買う手法にはいくつかの種類があります。通常、会社を買う場合にはほとんどの場合株式譲渡によりこれは行われます。下記では、その他の主要な手法をご紹介します。
・事業譲渡
まず、事業譲渡の方法があげられます。これは買主から見ると事業譲受と呼べるものです。事業譲渡契約にもとづき、会社が保有する特定の事業を譲り受けることです。事業譲渡は、法的には組織法上の行為ではなく取引行為であるといわれます。そのため、上述したように資産や契約につき個別の引き継ぎの手続が必要となってきます。
・吸収分割
次に、吸収分割という方法が考えられます。吸収分割とは会社分割の一種です。会社分割には、新しく設立した会社に事業を移す新設分割と、すでに存在している会社に事業を移す吸収分割があります。吸収分割によれば、事業譲受と同じく、新たに会社を設立する必要がありません。
吸収分割とは、会社を複数の法人格に分割し、その事業を他の会社に包括的に承継させることができる組織再編行為です。引き継ぐ会社は分割を行う会社または株主に株式を割り当てます。
吸収分割は、組織再編行為に該当するため、債権者保護手続こそ必要となりますが、事業に関連する資産や負債を包括的に既存の会社へ承継することが可能となり、個々に資産や契約を引き継ぐ手続が必要となりません。
・株式交換
欲しい事業を保有している会社を子会社とすることで、実質的に事業を購入した場合と同等の効果が得られる株式交換という手法も考えられます。株式交換は、ある会社が対象会社を100%子会社にするための企業再編手法です。
具体的には、子会社となる会社の株主が保有している株式を親会社となる株式に交換します。株式交換によると、株式を買い取るための資金を持たなくとも、自社株式を対価に会社を購入することが可能となります。
以上のように、小規模な事業を買うためには様々な方法があります。どのようなスキームが適しているかについては専門家の意見も交えながら、新規事業開発の一手法として活用すると良いでしょう。
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