M&A
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2023/05/22

医業における第三者承継を行う上でのポイント

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医業における第三者承継を行う上でのポイント
医療法人や個人事業の診療所においては、親族内で事業を承継することが多いですが、親族の中に承継者がいない場合は、親族以外の第三者に承継するケースもあります。  近年は、このような第三者による事業承継(以下、M&A といいます)のご相談を受けることが大変多くなりました。第三者に譲る場合は、事業そのものを譲渡するパターン、医療法人の持分を譲渡するパターン、あるいは医療法人内の分院のみを譲渡するパターンなど、様々なパターンが考えられます。また、検討事項も多く、様々なプロセスを踏む必要があるため、特に売却をご希望の先生は事前の準備は早ければ早い方が望ましいと考えられます。  今回は、売手の立場として、事前に押さえておくべきポイントとスケジュールをまとめました。
■ 売手の押さえておくべきポイント
・  期間としては、引退希望時期の2~3年前から検討する。 ・  すぐに売却できるとは限らない(数回の破談はあり得る)。 ・  譲渡対価は希望通りにならず値下げとなる可能性もある。 ・ 過去のトラブル(医療、人事、税務)は全て伝える必要がある。 ・  売手のスピードと買手のスピートは合わない場合もある。 ・  現状の契約(不動産の賃貸借、リース、借入金)状況の確認をしておく。 ・ 引継ぎ資料等の準備をしておく。 ・ 引継ぎに際して買手に依頼したいことを整理しておく。
■ スケジュール
M&A の売手側における一般的なスケジュールは次の通りです。 【STEP1】検討段階  1 .初期的な検討事項の整理・M&A の方針決定 【STEP2】準備段階  2.ビジネスインタビューの実施  3.価値評価算定の実施  4.提案資料の作成(ノンネームシートの作成、秘密保持契約書の締結、企業概況書の作成)  5.買手候補者の選定  6.買手候補先への提案(売手からの情報開示)  7.トップ面談の実施(内覧)  8.買手候補先からの意向表明書の受領 【STEP3】交渉段階  9. M&A の基本条件の交渉  10. 基本合意書の締結  11.デュー・デリジェンスの実施(法務・財務・労務など)  【STEP4】実行段階  12.最終条件の交渉(スキーム・譲渡対価・諸条件の確定、弁護士による確認)  13.譲渡契約書の締結  14.クロージング(クロージング条件の充足、法的手続き、代金決済) 医業におけるM&A と一般企業のM&A とで異なる点としては、経営主体が個人事業か医療法人かによってデュー・デリジェンスの内容が異なること、保健所や厚生局、あるいは都道府県等の行政手続きが必要であること、患者情報等の引継ぎをする必要があることなどが挙げられます。  また、医療法人の場合は、持分の定めのある医療法人か、持分の定めのない医療法人かによってもスキームそのものが異なってまいります。  ご自身にとってどのような承継を望まれるのかを整理し、医療関係のM&A に詳しい専門家にご相談なさることをお勧めいたします。
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