中小企業支援
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2021/04/05

事業再構築補助金:新分野展開

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事業再構築補助金:新分野展開
中小企業等事業再構築促進事業の新分野展開について考察してみたいと思います。
新分野展開の定義
新分野展開とは、中小企業等が主たる業種(売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業をいう。以下同じ。)又は主たる事業(売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は細分類の産業をいう。以下同じ。)を変更することなく、新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、新たな市場に進出することをいう。 重要なのは 1:主たる業務 2:主たる事業 の変更がないことです。 業種を変えて行うのは、新分野展開に該当しません。 ここで示されている業種は、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業です。 同じように事業は、中分類、小分類及び再分類の産業です。 総務省の日本標準産業分類は下記を参照ください。 https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/H25index.htm そのうえで、新たな製品等を製造等することよにより、新たな市場に進出することが求められています。 主たる業務・事業を変更する場合は、「事業転換」・「業種転換」となります。 この考察は、別で行いたいと思います。
新分野展開に該当するために
3要件 1:新たな製品等を製造等する必要があります。【製品等の新規性要件】 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商品若しくはサービスが、新規性を有するものであること。 2:新たな市場に進出する必要があります。【市場の新規性要件】 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商品若しくはサービスの属する市場が、新規性を有するものであること。 3:3-5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定することが必要です。【売上高10%要件】 事業計画期間終了後、新たに製造する製品又は新たに提供する商品若しくはサービスの売上高が、総売上高の十分の一以上を占めることが見込まれるものであること。 ※10%は申請するための最低条件です。 新たな製品の売上高がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。
製品等の新規性要件について
製品等の新規性要件を満たすためには、これら4つを全て満たす(=事業計画において示す)ことが必要です。 1:過去に製造等した実績がないこと 過去に製造等していた製品等を再製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。 過去に製造等した実績がないものにチャレンジすることが必要になります。 2:製造等に用いる主要な設備を変更すること 既存の設備でも製造等可能な製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。 主要な設備を変更することが新たな製品等を製造等するのに必要であることが要件となります。 3:競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと 競合他社の多くが既に製造等している製品等を、新たに製造等することは容易であると考えられるため、申請に際しては、競合他社の動向を調査し、新たに製造等する製品等が、競合他社の多くにおいて製造等されているものではないことを示すことが必要となります。 4:定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。) 性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製品等であることを示す必要があります。 (例:既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等) ※「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。
市場の新規性要件について
市場の新規性要件を満たすためには、1.を満たす(=事業計画において示す)ことが必要です。 (2.は任意要件) 1:既存製品等と新製品等の代替性が低いこと 市場の新規性要件を満たすためには、新製品等を販売した際に、既存製品等の需要の多くが代替されることなく、売上が販売前と比べて大きく減少しないことや、むしろ相乗効果により増大することを事業計画において示す必要があります。 (例)日本料理店が、新たにオンラインの料理教室を始める場合、オンライン料理教室を始めたことにより、日本料理店の売上は変わらない(むしろ宣伝による相乗効果により上がる)と考えられることから、市場の新規性要件を満たすと考えられる。 2:既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件) 既存製品等と新製品等の需要・売上の決定要素を考慮し、顧客層が異なることを事業計画において示す場合には、より高い評価を受けることができる場合があります。 顧客層とは、年齢層、性別、所得、職業、地域、資産、家族構成等のことです。
新分野展開の要件を満たす例
製造業の場合 航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時点で、医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合 不動産業の場合 都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいたが、テレワーク需要の増加を踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入し、3年間の事業計画期間終了時点で、当該レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合
新分野展開の非該当例
例えば、次の(1)から(7)までのいずれかに該当する場合、製品又は商品若しくはサービスの新規性を有しないことから新分野展開に該当しない。 また、例えば、次の(8)又は(9)に該当する場合、市場の新規性を有しないことから新分野展開に該当しない。 (1) 既存の製品の製造量又は既存の商品若しくはサービスの提供量を増大させる場合 (2) 過去に製造していた製品又は過去に提供していた商品若しくはサービスを再製造又は再提供する場合 (3) 既存の製品又は既存の商品若しくはサービスに容易な改変を加えた新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合 (4) 既存の製品又は既存の商品若しくはサービスを単に組み合わせて新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合 (5) 既存の製品の製造又は既存の商品若しくはサービスの提供に必要な主な設備、装置、プログラム(データを含む。)又は施設(以下「設備等」という。)が、新たな製品の製造又は新たな商品若しくはサービスの提供に必要な主な設備等と変わらない場合 (6) 事業を行う中小企業等と競合する事業者の大多数が製造又は提供する製品又は商品若しくはサービスを新たに製造又は提供する場合 (7) 製品又は商品若しくはサービスの性能が定量的に計測できる場合であって、既存の製品又は既存の商品若しくはサービスと新製品又は新商品若しくは新サービスとの間でその性能が有意に異なるとは認められない場合 (8) 既存の製品又は既存の商品若しくはサービスとは別の製品又は別の商品若しくはサービスだが、対象とする市場が同一である場合(具体的には、既存の製品又は既存の商品若しくはサービスの需要が、新製品又は新商品若しくは新サービスの需要で代替される場合) (9) 既存の製品又は既存の商品若しくはサービスの市場の一部のみを対象とするものである場合
まとめ
ここから見えるのは、単なる増収計画では、対象にならないと言うことです。 既存の商品を販路拡大する 既存の商品をリニューアルする こういったものは、新分野展開に該当しません。 同一商品を同一市場に投入して、シェアアップを狙う戦略は、この事業の範囲外と言うことになります。 それが悪いことではなく、経営計画の中では、普通にあることです。 経営計画のなかで、最も一般的な計画と言えるでしょう。 今回の新分野展開に該当しないというだけですので、経営計画全体の見直しの必要はありません。 補助金の要件に無理して経営計画を合わせる必要はありません。
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