
▼私たちの身の回りには、時代とともに消えていった技術やサービスがたくさんあります。今回は家庭や学校といった身近な場所や、地域で親しまれてきた技術やサービス、さらには比較的新しい「インターネットの世界」から姿を消しつつあるモノやサービスをご紹介します。
時代の流れは今までよりも早くなってきました
「一家に一台」は昔の話? 衰退する「家庭用プリンタ」
パソコンが急速に普及した時代、当たり前のように一緒に購入されていたのが「家庭用プリンタ」です。ちまたで売っていたパソコンデスクにも、頭上にプリンタ用の棚が付いているものが普通でした。
今、その家庭用プリンタの需要が減っています。IDC Japan株式会社の調査によると、家庭用プリンタを含むインクジェット製品の総出荷台数は前年比1.5%減の436万3,000台で、2013年以降5年連続で減少しているとのこと(注1)。
この背景のひとつには「年賀状離れ」があります。同じくIDCが行ったアンケート調査では(注2)、家庭用プリンタの用途について回答者の半数以上が「年賀状印刷」と答えています。一方でLINEなどのSNSが普及したことで、年賀状の発行枚数は年々減少しています。この傾向は今年も続いていて、2019年向け年賀状の当初発行枚数は過去15年間で最少となりました(注3)。
スマホやタブレットの普及により文書や写真の印刷需要も減っていて、わずかに残る印刷需要も、コンビニに置かれる多機能プリンタの普及に吸収されつつあります。
大手電気量販店の棚にはまだまだ新製品も並んでいますが、近い将来、家庭用プリンタが消える日が来るかもしれません。
(注1)「IDC 国内プリンター市場 2017年第4四半期の分析と2018年~2022年の予測」https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/201804261Apr.html(概要)
(注2)「2018年 国内プリント環境エンドユーザー調査:デジタルネイティブ世代のプリント意識」
(注3)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181101-00000032-jij-soci
学校の代名詞?だった 「チョーク」も減少中
学校の教室でおなじみの「チョーク」も、世の中から姿を消しつつあるモノのひとつです。2015年には、チョーク製造で国内シェア30%を誇っていた老舗メーカー「羽衣文具」が、82年の歴史に幕を降ろしました(注4)。
この背景にあるのは、ホワイトボードや電子黒板の普及に伴うチョーク需要の減少です。すぐ折れて使いにくい、手が汚れる、粉が舞うといったネガティブなイメージも、その傾向に拍車をかけているでしょう。もちろん少子高齢化による学校数の減少も大きな原因のひとつです。
羽衣文具のチョークは「書きやすくて折れにくい」として多くの教師や塾講師に愛用されていましたが、1990年に9,000万本だった製造数は廃業直前には4,500万本と半減していました。なお同社の廃業によって、チョーク製造に使っていたオリジナルの機械やノウハウは韓国の企業に買収されています。
各教室や児童・生徒へのタブレット配布など、教育の電子化はこれからも加速すると考えられます。チョークはもちろん、黒板や黒板消しまで姿を消す日はそう遠くないのかもしれません。
(注4)https://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150326/279189/
昔なつかしい「和鋏(握り鋏)」も消滅のピンチ
日本の伝統産業として知られる金物産業。そのひとつである「和鋏(握り鋏)」も、消滅の危機に瀕しています。現在は燕三条(新潟県)と小野(兵庫県)で製造が続いていますが、燕三条にただ一人残る職人は高齢で、しかも弟子を取っていないため、近い将来に技術が途絶えてしまうかもしれません。また50年前には160人近くいた小野の職人も、現在はたったの2人。そのうちの一人は高齢で、もうひとりは数年前に弟子入りした若手です(注5)。
衰退の背景には作り手の高齢化と後継者不足があります。ここ20年で得意先だった繊維産業の工場が海外に移転し、需要が激減したことも大きな原因といえるでしょう。手間のかかる和鋏はどうしても値段が張るため、海外製の安価な大量生産品に押されてしまうのも無理はありません。とはいえ、長い間続いてきた熟練の業が失われていくのは寂しいものです。
(注5)https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/dango02
インターネット時代の技術まで!次々に終了する「RSS」サービス
RSSというのは、ニュースやブログといった各種WEBサイトの更新情報を配信するフォーマット(規格)のことです。ネット上で効率的に情報収集する手段として、インターネット技術の普及と共に進化してきた「比較的新しい技術」ですが、これもすでに過去のものとなりつつあります。
2013年にはIT大手のGoogleが提供する「Google Reader」がサービス終了したのは大きな衝撃でした。2014年には「Livedoor Reader」がサービスを停止し、それを引き継いだ「Live Django Reader」も2017年に終了。2018年にはYahoo!Japanが提供するヤフオク内のサービス「ヤフオクRSS」も廃止されています。
この背景には、SNSやキュレーションアプリ(「Smart News」など)の登場と普及があります。最新の情報をプッシュ通知してくれるSNSや、利用者の好みに応じて簡単に情報をカスタマイズできるキュレーションアプリは、RSSに変わる次世代の情報収集手段としてこれからも発展していくでしょう。一時代を築いてきたRSSですが、ポケベルなどと同様、世の中から消えていく日はすぐ近くに迫っています。
レジャーの花形だった「遊園地・テーマパーク」も消えていく?
最後は少し趣向を変えて、遊園地やテーマパークを取り上げます。2018年1月1日に、北九州市のテーマパーク「スペースワールド」が閉園したニュースは記憶に新しいでしょう(注6)。原因は近年のレジャーの多様化による経営難とも言われていますが、東京ディズニーランド、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンという二大テーマパークを除いて、入場者の減少と経営の悪化は全国の遊園地・テーマパークに共通する課題です。
この背景のひとつには、インターネットの発展や家庭用ゲーム機の進化、YouTubeやNETFLIXに代表される動画サイトの普及が考えられます。またマラソンなど身一つでできるフィットネスやアウトドアレジャーなど、施設に依存しない屋外レジャーも人気です。少子高齢化により、遊園地やテーマパークのメインターゲットである「子ども」が減少していることも大きな原因でしょう。
デパートの屋上からミニ遊園地が姿を消しているのと同じように、地方から遊園地・テーマパークが次々に姿を消していくのも時代の流れかもしれません。
(注6)https://www.sankei.com/life/news/180830/lif1808300022-n1.html
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