ゴルフがメジャー・スポーツであることは疑いようがありません。
しかしスポーツとしての地位は高いのに、ビジネス的にもうまくいっているわけではありません。そこでこの記事では、ゴルフ業界の現状を紹介したうえで、ゴルフ・ビジネスの経営戦略について解説していきます。
ゴルフ業界の現状
今後の経営戦略を立てるときには、まずゴルフ業界の現状を知る必要があります。
ゴルフ業界が抱える課題を中心にみていきます。
ゴルフプレーヤーは年々減少傾向
公益財団法人日本生産性本部によると、2020年のゴルフコースのゴルフ人口は前年比10.3%減の520万人、ゴルフ練習場のゴルフ人口が同3.6%減の530万人でした。
2005年にはゴルフコースのゴルフ人口は1,080万人もいたので、2005年から2020年の15年間で半減したことになります。
矢野経済研究所は2021年9月に、国内のゴルフ用品市場調査の結果を公表しました。
それによると、2020年のゴルフ用品の市場規模は約2,321億円で、前年比12.5%減でした。
このような売上減少の最大の原因はゴルフ離れでしょう。
ゴルフ人口の減少傾向は先ほど紹介しましたが、この傾向はさらに深刻化しそうです。日本ゴルフコース設計者協会は
と危機感を募らせています。
ゴルフ離れが起きている原因
ゴルフ人口の減少や関連市場の縮小は、人々のゴルフ離れが原因になっていると推測されます。
ゴルフは高額、というイメージは根強く残っています。ゴルフ場会社としては、このイメージは受け入れがたいものがあるでしょう。ゴルフ場は長い間コストダウンに取り組み、コアなゴルフプレーヤーからは「格段に安くなった」と評価されているからです。
整備された芝の上でプレーして、クラブハウスで疲れを癒して、丸1日遊んで1万円かかるかどうか、というゴルフ場もあります。「これ以上安くすることはできない」というのが、ゴルフ場会社の本音だと思います。
しかし今は、登山やキャンプなど、ゴルフと同じ「自然のなかで汗をかく」というコンセプトを持ちながら、格安で遊べる趣味が広がっています。テントを張って火を起こすだけでよいキャンプや、シューズを履いて走るだけでよいマラソンと異なり、ゴルフはクラブを何本も用意して打ちっぱなしで練習しないと、ゴルフ場で普通に楽しむことはできません。こういった面も、ゴルフプレイヤーの減少が進んでいる理由かもしれません。
今後、ゴルフ場に求めることは?
ゴルフ業界の現状は厳しいものですが、明るい兆しもあります。先ほど紹介した矢野経済研究所は、2020年のゴルフ事情について次のような見解を示しています。
・ゴルフは三密にならない、屋外型のアクティビティとして認知されてきた
・コロナ禍で一時的にプレーを自粛していたゴルファーが比較的早いタイミングでゴルフを再開した
・若年齢層を中心とした新規参入ゴルファーが増加傾向にある
・休眠ゴルファーがゴルフを再開するケースもみられた
・特別定額給付金が2020年に支給され、その一部がゴルフ用品の購入に使われた
市場が衰退しつつも、このようなよい兆候があるのは、多くの人がゴルフに憧れているからです。この憧れをさらに高めていけば、ビジネスとしてのゴルフも上向くはずです。
そのための取り組みとして、以下の5項目を提案します。
1. コストダウン
2. 地球温暖化防止
3. 市場活性化策の検討(ゴルフの普及)
4. 労働力不足への対応(外国人材受け入れ)
5. 感染症対策
1つずつみていきましょう。
ゴルフ場経営のコストダウン
スポーツ愛好者がコストを気にかける以上、ゴルフ場はこれからもコストダウンに努めて、より安価なゴルフを提供する必要があります。
クラブハウスはゴルフに必要なのか、という議論があります。スポーツ界全体を見渡すと、プレーする場所以外で、豪華な建築物を必要とするスポーツはゴルフ以外にありません。ゴルフ場だけが、豪華なレストランや豪華な風呂設備や豪華なロッカールームを持っています。
クラブハウスはかつて、ゴルフ場経営にとって利益を生み出す箱でした。しかしゴルフ人口が減って利用者が減ったことで、クラブハウスの稼ぐ力は低下しています。それに加えて建物の老朽化により維持費や改修費が重くのしかかってきます。
そもそも、河川敷のゴルフコースなどにはクラブハウスはないわけで、この建物がなくてもプレイヤーはゴルフを楽しむことができます。ゴルフ場会社の経営者が大胆な改革を打ち出すときは、クラブハウスの廃止も検討課題になるでしょう。
地球温暖化防止
世界のあらゆる企業は、地球温暖化防止やSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを求められています。意識が高い消費者は、地球温暖化防止に無頓着な企業を敬遠します。
したがって、ゴルフ場会社が「地球温暖化防止に貢献している」とPRすれば、消費者の支持につながり、プレーヤーの増加が期待できます。
九州大学名誉教授の縣和一氏は、「ゴルフ場は地球温暖化防止に寄与している」と指摘しています。
ゴルフ場には広大な芝地があり、樹林地や池の植生もあります。その結果、日本のすべてのゴルフ場のCO2吸収固定量は年460万トンにもなります。すべてのゴルフ場が、「ゴルフをプレーすることは、緑を守っているゴルフ場を守ることになり、地球温暖化防止に貢献する」とPRすることができるでしょう。
市場活性化策の検討(ゴルフの普及)
ゴルフ場会社はゴルフ・ビジネスの担い手であり、ゴルフ業界の牽引役です。積極的にゴルフの魅力を発信していきましょう。ゴルフ場は地方にあり、地方は経済振興に苦しんでいます。そのため、ゴルフ場と地方自治体は協力しやすい関係にあります。
日本ゴルフサミット会議は、ゴルフ市場の活性化策として、次の3つのテーマを掲げています。
ゴルフ場会社にも、こうした取り組みが必要になるはずです。
労働力不足への対応(外国人材受け入れ)
労働力不足もゴルフ場経営に暗い影を落としています。ゴルフ場のスタッフには高いスキルが求められるうえに、地方にあるので都心から通勤するとなると楽ではありません。しかも経営難に陥っているゴルフ場は、スタッフの賃金を上げることができません。
そのため、外国人材の受け入れを視野に入れるという方法もあります。
感染症対策
戸外の広い場所で少人数で楽しむゴルフは、それだけで新型コロナウイルス感染症対策になります。よってゴルフ場は、感染リスクを低く抑えて遊びたい人たちのニーズに応えることができます。
消毒薬の設置などの基本的な感染症対策を行ったうえで、いかにゴルフ場が感染対策になるかを宣伝していきましょう。
ゴルフ業界で生き残るための経営戦略
ゴルフ・ビジネスは低迷を避けられない状況にあるものの、確かな光明が存在するのも事実です。ゴルフ場会社が取りうる経営戦略として「今後のサービス」と「M&A」を紹介します。
今後のサービス
サービスの充実は、コスト安に運営しなければならない方針と逆行するように感じるかもしれませんが、そうではありません。ITを使えば、顧客へのサービスを拡充しながら、コストダウンをすることができます。
例えば、プレーの予約をネットで受け付ければ、省力化できて省人化できますが、顧客の利便性は向上します。その他、チケットの発行やゲート通過を自動化するシステムも有効です。
レッスンはゴルフ場の貴重な収入源のはずです。このレッスン事業にデジタル技術を導入すれば、1対1の指導が不要になります。
しかもデジタルは「疲れない」ので、営業時間中、常に顧客を指導できます。デジタル技術の導入には初期費用がかかりますが、運用費用がそれほどかからないので有効な投資といえるでしょう。
ゴルフ場経営においてM&Aは効果的
ゴルフ場の生き残り戦略の1つとして、M&Aの検討をおすすめします。
競合する2社が合併したり、1社が他社を買収したりすれば、事業規模を維持しながら、総務部門や経理部門を共有できる一方で、研究能力や開発能力、生産能力、販売能力を2倍にも3倍にもすることができます。
総務コストや経理コストを削減でき、販売能力を強化できるので企業の体力が増し、研究費や開発費や生産費に資金を投じることができるからです。
ゴルフ業界は顧客が減っているものの、多くの潜在顧客がいます。
ゴルフ場会社がM&Aで生産性が高いビジネスモデルをつくることができれば、ゴルフに挑戦するハードルが低くなり、潜在顧客が顧客となるでしょう。
まとめ
コアなゴルフプレーヤーたちは、ゴルフ業界の凋落を嘆いているはずです。近所のゴルフ場が閉鎖されれば、遠くのゴルフ場に行かなければならず、それが面倒になればゴルフから遠ざかってしまいます。
また、古びれたクラブハウスを寂しく感じているゴルフ愛好者もいるでしょう。
しかしクラブハウスを修繕するにも、経営を安定させるにも、経営の効率化と生産性の向上、コスト削減、儲け体質への変身が欠かせません。
こうした課題を解決する手段の1つとして、M&Aがあります。今のゴルフ業界に求められているのは、経営の進化です。経営再建に苦しんでいるゴルフ場会社の経営者には、顧客のためにM&Aを検討することをおすすめします。
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